コラム
2010年04月22日

日本に必要な成長戦略は何か

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.求められる生産性の向上

バブル崩壊後、20年近くにもわたる長期に低迷が続いている日本経済の建て直しは急務である。子ども手当ての支給や高校授業料の実質無料化などによって短期的な景気刺激は望めるものの中長期的な経済成長戦略が欠如しているということは、現政権の経済政策の問題点として、しばしば指摘されるところだ。
   経済成長を支える三つの要素は、労働投入、資本蓄積、技術進歩だが、少子高齢化によって人口減少が続く日本では、経済成長するためには技術進歩がこれまで以上に重要となる。しかし現実には、労働者一人当たりの生産額などの指標でみても、日本の生産性向上の速度が大きく低下しているのは明らかで、躍進著しい新興国は言うまでも無く、他の先進工業国と比べても停滞は顕著である。日本経済の成長戦略としては、生産性の向上をいかに図るかという点に力点が置かれることが多い。日銀の白川総裁も、「趨勢的な成長期待を高めること、言い換えると、生産性の向上に地道に取り組むことが不可欠である」(内外情勢調査会における講演2010年1月、出所:日銀ホームページ)と述べている。

2.持続的な需要不足という問題

経済学の教科書では、短期的には需要側、中長期的には供給側が経済成長に支配的な影響力を持つとされており、潜在成長率のような中長期的な経済成長力を高めるには、供給力の伸びを高めることが意識される。しかし、バブル崩壊後20年近くにもわたって、日本経済は一貫してかなりの需要不足の状態にあった。生産性向上の速度が低下したため供給力が伸びず日本経済の成長制約になったという説明は現実とズレがあり、どうもピンとこない。むしろ、需要が不足していたので生産能力を十分に活用することができず、生産効率の改善が進まなかったように見えるだけではないか。
   生産性向上で需要不足問題が解決するという考え方も確かにある。企業の国際競争力を高めて輸出を拡大するというもので、日本は人口減少で国内市場が縮小するので、経済成長するための需要を海外市場に求めざるを得ず、韓国や中国などの企業との競争に勝つには生産性を上げてコストダウンをしなくてはならないという考え方だ。

3.満たされない国内需要

現在の景気回復は輸出の伸びがもたらしていることは明らかで、外需の増加は日本のGDPを拡大させる。しかし、国内に本当に需要はないのだろうか?確かに、これまで日本企業が作ってきたものは、人口減少が続く日本では需要が大きく伸びるとは期待し難い。この一方で、保育所や介護施設には長い順番待ちの行列ができているように、国内には満たされない大きな需要も存在している。
   白川総裁は同じ講演の中で、「潜在的な需要を発掘し、そのための供給体制を整えることも、生産性の上昇につながる」とも述べており、「生産性向上」という趣旨は、需要に生産をマッチさせるということに力点があったのではないかとも考えられる。GDPが拡大すれば人々の生活が豊かになるということの意味は、単に所得が増えるということではなく、人々が本当に欲しいと思っているものが手に入るようになるということだ。行列をしてまで欲しいと思っている、子育て支援や介護サービスを供給できるような体制を整備するということが、実は日本に求められている成長戦略なのではないだろうか。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

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