コラム
2009年06月16日

経済安定化の兆しで模索される出口政策

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.底打ちの動きを見せる世界経済

米国発のサブプライム問題は世界的な金融危機へと拡大した。日米欧経済はそろってマイナス成長に転落し、高成長を続けてきた新興国経済も大きく減速して、世界経済は同時的な不況に陥っている。
   しかし、共和党から民主党に政権交代した米国で7870億ドルにのぼる景気拡大策が決定されたのをはじめとして、各国が財政・金融面から景気刺激策を採用し、どうやら急速に経済が悪化するという状況は脱したようだ。日本経済も、春頃からは輸出が若干増加の動きを見せ、大きく落ち込んでいた鉱工業生産は2月を底に増加を続けている。海外の要因に加えて、国内要因としても、定額給付金の支給が始まったことや、経済危機対策によるエコポイントやエコカー減税の効果で、家電製品や自動車の売れ行きが押し上げられることが考えられるので、しばらく景気の持ち直しの動きが続くことが期待できるだろう。

2.出口を模索するG8

こうした動きがそのまま本格的な景気拡大に繋がる、という楽観論はほとんど見られないが、それでも急速な景気の悪化が続くという状況を脱したことで、ようやくどうやって非常時対応となっている経済政策を正常な状態へと戻して行くかという出口政策を考えることができるようになった。
   世界経済は、極端な需要不足・供給能力過剰状態にあって、スパイラル的なデフレに陥る危険がある。もしも永久に需要不足が続くのであれば、巨額の財政赤字を使った減税や政府支出の増加、極端な金融緩和による設備投資の刺激といった強い需要追加策を長く続け過ぎてもそれほど大きな問題は起きないだろう。逆説的ではあるが、なかなかデフレから脱却できないのなら、まだ今後の対応は簡単かも知れない。むしろ、どこかで需要不足が需要過剰に転換すると考えられるから対応が難しいのだ。景気刺激の力を緩めるのが早すぎれば経済は失速してもっと深い谷底に墜落してしまうし、逆に遅すぎるとインフレの亢進やバブルの拡大を招くことになる。
   13日に閉幕したG8財務大臣会合では、現在の危機対応モードの政策からどうやってスムーズに脱出するかという出口政策を巡って、ドイツなどが財政健全化の重要性を主張した一方、米英が金融経済の安定化優先を訴えたようだ。

3.足並みの乱れか経済・社会の違いか

欧州の金融危機は米国以上に深刻で、経済の立ち直りも欧州が一番遅いのではないかと懸念している我々には、景気刺激よりも財政の健全化を重視するかのような欧州の対応は多少奇異に見える。欧州がこのような考え方に立つのは、日本や米国に比べれば失業者への社会保障がはるかに手厚く、1980年代には失業率が二桁に達したこともあったので、景気の落ち込みに対して日米に比べてはるかに耐性があるからだという説もある。各国の対応の違いが足並みの乱れではなく、こうした各国の経済・社会の違いを反映したものであれば良いのだが、果たしてどちらなのだろうか。世界経済安定化に中国など新興国の成長持続が期待されることが多いが、欧州の経済や金融市場の動向からも目が離せないという状況がしばらく続くだろう。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

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