コラム
2009年02月17日

保護主義防止に日本がなすべきこと~G7を終えて

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.拡大する保護主義的動き

2月13、14日にローマで開催されたG7では、保護主義的な政策の回避へ引き続き努力することで合意したが、その実効性は定かではない。そもそも昨年11月にワシントンで開催された金融サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)で「今後12ヶ月の間に、投資・貿易に対する新たな障壁を設けず、新たな輸出制限を課さず、WTOと整合的でない輸出刺激策もとらない」という宣言を出したはずなのに、各国では保護主義的な動きが拡大している。
   ロシアは自動車の関税を引き上げた。米国では、先日議会で可決された景気対策法案に修正されてはいるもののバイアメリカン(米国製品優先購入)条項が盛り込まれており、各国は実際には保護主義的に運用されるのではないかと懸念している。同じくG7のメンバーであるフランスは、自動車産業に対する支援の条件として自国での生産の継続や雇用の維持を求めており、他のEU各国から保護主義的であると非難されている。
   正当な政策と不当な政策の境は微妙だから、保護主義の防止は簡単ではない。例えば、米政府によるビッグ3の支援はやむを得ないという見方が一般的だろう。しかし、これも日本をはじめとした他国の自動車産業にとっては米国市場での競争が不利になる政策である。見ようによっては自国産業の保護だとも言える、保護主義と紙一重の政策である。また、政府が保護主義を回避すべきだと考えていても、企業や労働者の直接的な圧力を受ける議会を説得できないという、民主主義の難しさも保護主義が広がりやすい原因である。

2.北風と太陽

1929年に始まった大恐慌の大きな教訓は、各国が自国の産業や企業の生産や雇用を維持しようとして、関税の引き上げなどの国内産業の保護政策を採ると、結局は他国による対抗策を呼び起こすので、状況が却って悪化するだけだということだ。どこかの国が自国産業の保護政策に走れば、世界中が保護政策に雪崩を打って動いてしまい、世界貿易の急速な縮小を招き誰も得をしないということである。保護主義的な政策の蔓延は何としても回避しなければならない問題だ。
   2月12日付けの新聞各紙は、経済産業省が世界各地に拠点を持つジェトロ・日本貿易振興機構などと連携して、保護主義的な動きを監視する体制を強化することになったと報じている。保護主義防止のためには、このように保護主義的な動きを早期に発見して、潰すといういわば「北風」政策がある。しかし、各国が保護主義に走らないようにする方策はこれだけでは不十分だ。他国が保護主義に向かわなくても経済が成り立つように、日本が自らの負担をいとわない、いわば「太陽」政策も必要である。保護主義防止に北風よりも太陽の方がうまくいくということがあるのではないか。

3.情けは人の為ならず

最近学校の国語の問題には「情けは人の為ならず」というのはどういう意味かというのが頻繁に登場するらしい。意味を間違って理解している人が増えているようで、2001年6月の朝日新聞には、文化庁の調査で「人に情けをかけて助けてやることは、結局はその人のためにならない」という誤用が48・7%で、本来の意味である「人への情けは結局は自分のためになる」の47・2%を上回ったという記事が載っている。保護貿易主義の蔓延防止のために、我々はもう一度「情けは人の為ならず」ということわざの意味を再確認する必要があるだろう。
   日本が保護主義反対を声高に叫んでも冷ややかな目で見られるだけなのは、日本の利益のために主張しているという構図が見え見えだからだ。日本が大恐慌の教訓だと思っても、相手側から見れば、輸出を確保して日本経済へのダメージを減らそうという、他人の懐を当てにした行為にしか見えないに違いない。保護主義防止のためには、日本が他国からの輸入を増やすという政策を実施することが重要なのではないか。それでは日本経済は輸入の増加によって外需のマイナスが拡大してしまい意味がないではないか、という意見が当然あるだろう。しかしそれこそ、情けは人の為ならず、ということではないのか。こういう時こそ、「輸入拡大策」、「内需を刺激し、それが輸入増に繋がる政策」を考え、世界に打ち出すべきではないだろうか。日本が輸入を増やせば保護主義に走らなくても済む国があり、結局は日本経済もそれで助かることになるだろう。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

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マクロ経済・経済政策

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