コラム
2008年03月03日

フランチャイズ・システム運営の難しさ

  小本 恵照

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1.「ほっかほっか亭」の分裂騒動

全国に約3500店の持ち帰り弁当店を経営する「ほっかほっか亭」が分裂することが決定的となっている。「ほっかほっか亭」は、ほっかほっか亭総本部(以下、総本部)の下に7つの地域本部(エリアフランチャイジー)を置き、その各地域本部が直営店またはフランチャイズ加盟店を出店するというチェーン形態を採っている。

今回の騒動の内容は、7つの地域本部の中の一つであるプレナスが総本部との契約を解除し、契約終了翌日の2008年5月15日から新ブランドに移行するというものである。プレナスは東日本と九州を中心に2200店を経営するチェーン内で最大の地域本部であり、その離脱は総本部にとってロイヤルティ収入の減少につながり打撃は大きい。また、プレナスにとっても、「ほっかほっか亭」というブランドに替え新ブランド(Hotto Motto(ほっともっと))のもとで事業を継続することとなり、事業が従来どおり順調に成長するか不安がないわけではない。また、プレナスの傘下にあるフランチャイジーが「ほっかほっか亭」ブランドを利用するために、プレナスとのフランチャイズ契約を継続せず、総本部とのフランチャイズ契約に乗り換えるリスクもある。

ほっかほっか亭チェーンにとって打撃となる今回の騒動はなぜ起こったのだろうか。理由は2つあるようだ。一つは、プレナスが事業内容に創意工夫を加えることを希望したのに対し、総本部がチェーンの運営の基本を逸脱するものとして制限を加えたことである。たとえば、2007年10月2日に、プレナス傘下のほっかほっか亭の店舗で作り置いた弁当をオフィスビル内でワゴンに載せて販売する行為の差し止め請求を、総本部がプレナスに対して行っている。また、それ以前にも店内にホットケースを設置し、あらかじめ作っておいた弁当をそのケース内で温め、昼食時に提供するサービスを行い、総本部が抗議する一幕もあったようだ(「フランジャ」2008年3月号)。二つ目は、総本部を巡る経営支配権の問題である。関西地域のエリアフランチャイジーであるハークスレイが総本部の株式の過半数(56%)を握っている結果、総本部の運営がハークスレイ寄りとなり、プレナスとの亀裂を深めた可能性も指摘されている(日本経済新聞2008年2月15日)。なお、ハークスレイが過半数の株式を所有するに至ったのは、「ほっかほっか亭」の創業者である田渕道行氏が2006年6月に保有株式を譲渡したことによる。また、プレナスも総本部の株式の44%(1999年にダイエーより取得)を所有している結果、有力な2つのエリアフランチャイジーがフランチャイザーである総本部の大株主であるという株式所有構造となっている。

2.騒動から得られる教訓

ほっかほっか亭を巡る騒動から得られる教訓は2つある。第1点はエリアフランチャイジーと本部の関係のあり方である。地域の有力企業をエリアフランチャイジーとすることは、企業の持つ財務力やマネジメント能力を活用できる点では魅力がある。しかし、今回のほっかほっか亭の騒動をみると、エリアフランチャイジーによるチェーン運営にも大きなリスクがあることがわかる。それは、エリアフランチャイジーの成長に伴う、本部とエリアフランチャイジーの相対的な力関係の変化である。エリアフランチャイジーが成長することは本部にとって望ましいことであるが、成長によってエリアフランチャイジーはその発言力を増すと同時に、独立できる経営能力を身に付ける可能性がある。フランチャイズ・チェーンを円滑に運営するためには、力をつけたエリアフランチャイジーをコントロールできる能力が本部には求められる。そのためには、日頃からのコミュニケーションが重要なことは言うまでもないが、魅力的なノウハウや新製品・新サービス開発を本部が継続的にエリアフランチャイジーに提供できることが大変重要である。「ほっかほっか亭」の場合、プレナスがチェーンから離脱してもやっていけるほど製品開発力や物流能力を持ち、総本部への依存が低下したことが致命的な問題だったと思われる。また、ほっかほっか亭の場合、有力フランチャイジーがフランチャイザーである総本部の大株主であるという、奇妙な統治構造だったことも運営上のトラブルを招く結果になったと考えられる。

第2点は、フランチャイジーの創意工夫をどの程度まで容認するかという問題である。本部が創意工夫の努力を行うことは言うまでもないが、現場で店舗を営業しているフランチャイジーから創意工夫が生まれることも稀ではない。そして、その創意工夫を他のフランチャイジーに広げることは、チェーン全体がその恩恵を受けることになる。また、創意工夫を却下することは、フランチャイジーのモチベーションを下げ、本部に対するロイヤルティを低下させることにもつながる。しかし、創意工夫が特定地域のみに限定されるのであれば、その容認はチェーンの統一性を失わせるという危険性を、一方でははらんでいる。したがって、フランチャイジーによる創意工夫の取り扱いは、創意工夫の内容はもちろんのこと、フランチャイジーとの力関係や地域の特殊性なども総合的に考慮した、高度な判断が求められるものであるということを認識することが肝要と思われる。

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