コラム
2008年01月31日

環境・観光・投資の融合による不動産立国は夢か?

  松村 徹

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7月の洞爺湖サミットを控え、地球温暖化対策が国を挙げて政策課題となる中、国の定める省エネ規制が床面積2000m2未満の中小ビルやマンションにも拡大されることになった。また、東京都が昨年末に発表した「10年後の東京」実行計画でも、CO2排出削減の義務化が盛り込まれたが、都税調で環境税も検討されるなど、関連政策は枚挙にいとまがない。

このような国などの地球温暖化対策を先取りする形で、最新の省エネ技術を取り入れたビル・マンション建設や、環境配慮型ともいうべき大規模な開発プロジェクトも着実に増えてきている。環境配慮が、公共性や外部経済効果の高い不動産事業において不可欠であり、また企業のCSR(社会的責任)活動として一定の認知を受けた分野でもあるためだろう。たとえば、屋上緑化は珍しくなくなったが、最近では、敷地に広大な芝生公園を設けたビル、風の道となる緑道を設けたビル、3000m2の森を創出するビルなどの開発計画が注目される。いずれも豊かなオープンスペースと、自然とハイテクの調和した美しい景観が特徴である。

もちろん、地球温暖化対策を先進的企業の自主的な取組みだけに任せておく時間的余裕はもはやなく、国や地方自治体主導による規制強化・政策誘導が行われるのもやむをえない。しかし、目先のコスト増加・競争力低下などを理由に、取組みに消極的な企業や家計を巻き込んで国民的な取組みとするためには、このような取組みがもたらす将来の果実、すなわち豊かで明るい国民経済や都市生活ビジョンが明示されるべきである。

資源が少なく、人口減少局面を迎えた日本の進むべき方向として、環境(技術)立国、(国際)観光立国、投資立国が叫ばれて久しい。人口減少による需要縮小を目前にし、環境配慮はもとより、都市間競争や資金調達面で国際経済・金融の動向とも無縁ではなくなった不動産・都市開発は、環境・観光・投資を融合できる可能性の最も高い分野のひとつであろう。

すでに、環境と投資をつなぐため、環境配慮を不動産鑑定評価に反映させようという先駆的な試みがなされている。評価体系の見直しは、環境配慮型の不動産に内外の投資資金を誘導するために不可欠である。一方、環境と観光をつなぐためには、大都市のヒートアイランド対策、特に本格的な都市緑化・自然環境再生がキーワードになると思われる。つまり、数値で表されるスペック重視や技術偏重でストイックに建物・都市の省エネ化・ハイテク化を図るだけでは、海外から多くの観光客を惹きつける魅力的な都市の条件として不十分だからである。

高度な環境制御・自然再生技術と不動産金融技術を開発・活用することで、東京などの巨大都市を、森のように豊かな緑の中にビルやマンション群が林立する、世界でも有数の美しい景観を持つ、快適な「グリーンシティ」に再生することは果たして不可能だろうか。クリアが困難と思われる高いハードルであっても、大きな目標を一丸となって乗り越える力をわれわれ日本人が失ってさえいなければ、建築や都市開発における高度な環境制御技術を輸出しつつ、当該分野に関心を持つ企業やビジネス客、投資資金に加えて多くの観光客を国内に引き寄せる、環境・観光・投資が融合した「不動産立国」は決して夢物語ではないだろう。

(注)「不動産経済ファンドレビュー」2008年1月25日号に寄稿した内容を加筆修正したものです。

松村 徹

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