コラム
2007年10月01日

学校に行こう!

  柄田 明美

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筆者は先日、北海道美瑛町にある「美瑛の学び舎」という、生涯学習施設に行ってきた。この「美瑛の学び舎」は、閉校となった旧俵真布(たわらまっぷ)小学校を転用した施設で、旭川空港から車で約35分、旭岳を正面に眺めることのできる美しい田園地帯にある。旧俵真布小学校は、明治の開拓時代からの長い歴史を地域とともに歩み、地域の人口減少により平成15年3月に閉校となった。地域の小学生は、スクールバスで地域外の小学校に通っている。

今、全国で廃校となる学校は年々増加している。少し古いデータだが、公立学校(小学校、中学校、高等学校)の廃校数は、平成4年度から13年度までで2,125校。うち、北海道は最も廃校数が多く248校。全体の1割以上を占めている(文部科学省)。北海道の場合、廃校となる原因のほとんどは過疎化。へき地・少人数学級と呼ばれる学校が多いのである。
   過疎の地域で学校がどのような役割を果たしているのかを実感したのが、北海道の研究者の方から聞いた「学校がなくなるということは、その集落がなくなるということだ」という言葉だった。学校があるということは、その地域、集落で育つ子どもがいるということであり、子どもの未来とともに、地域の可能性が残される。また、教職員としていわゆる生産年齢世代も住むだろう。それらがなくなることは大きな影響となる。「廃校」ではなく、「閉校」という言葉を用いてほしいという要望が地域住民からあるという話をよく聞くが、確かに「廃」という言葉の持つ重みを考えると、それはもっともなことだ。

あらためて学校の持つ機能を考えてみると、子どもの教育の場であるということ以外に、学校は、子どもから大人まで多様な世代の人々(生徒・学生、親、教職員など)が集まる場であり、交流やイベントの場であり、万が一の災害の一時避難場であり、そして、未来や可能性を培う場である。学校が統廃合される場合は、やはり、それら機能を担う新たな場として活用されることが前提としてあるべきではないだろうか。それは、過疎地域でも、都心部でも同じである。実は、北海道の次に廃校が多い都道府県は東京都なのである。

さて、訪問してみたい廃校を活用した施設は多数あるが、今すぐにでも行ってみたい地方の事例が2つある。ひとつは、兵庫県篠山市にある「篠山チルドレンズミュージアム」。旧中学校を転用した、創造性と子どもたちの生きる力を育むための参加型のミュージアムである。もうひとつは、鳥取県鳥取市鹿野町にある「鹿の劇場/鹿のスタジオ」。旧小学校体育館と旧幼稚園を、鳥取市を中心に活動する演劇カンパニー「鳥の劇場」が活動拠点として活用している。いずれも、田園あるいは山間地帯にある学校を、新たな交流と創造の拠点としている事例である。

今、旧学校施設では、さまざまな取組が行われている。そんな学校を探して、週末や連休に、ちょっと気軽に学校に行こう。子どもと一緒に大人も行く。大人同士で行く。もちろん、ひとりでもいい。あるときはボランティアに、あるときはセミナーに行き、そして、ぼんやりと校庭で風に吹かれる。
   「美瑛の学び舎」でも、近々経済セミナーが開催され、大勢の参加者が小さな小学校の校舎に集まる。秋風の中、校庭でのんびりするおじさんたちの姿が目に浮かぶようである。

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