2000年07月01日

移民が支える米国の経済成長

  山田 剛史

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90年代の米国への移民は史上最多
米国経済は91年3月を底として今年6月で111ヵ月に達する戦後最長の景気拡大が続いている。特に今回は、失業率の低下で労働需給がひっ迫しているにもかかわらず、雇用コストの伸び率は99年に入りむしろ低下するなどインフレ圧力が抑制されており、これが株価上昇などの資産効果にもつながり景気を押し上げている。
長期の景気拡大にもかかわらずインフレ率が安定している要因として指摘されるのが、IT(情報技術)革命によるニューエコノミー論である。ニューエコノミーのもとで、IT関連ストックの増加が在庫管理の効率化や取引コストの低減をもたらし、生産性上昇に寄与していると指摘されている。米国の労働生産性の年平均伸び率は、74~94年は+1.5%だったが、90年代後半から伸びを高め、99年10~12月期には前期比年率+6.9%に達した。日米の中央銀行による文献によれば、この期間の生産性上昇のうち2/3から8割が、情報化の進展により説明できると指摘されている(斎藤(2000)、Oliner&Sichel(2000))。
確かに情報化の進展は生産性を高め、インフレ圧力を抑制すると共に、グリーンスパンFRB議長が発言しているように、生産性上昇が長期的な収益期待を高めて新たな需要を誘発し、経済成長に寄与していると考えられる。しかし今回の生産性上昇やインフレ圧力の低下に関して、IT革命と共に見逃せないもう一つの要因が、90年代における米国への移民の増加である。
米国の移民動向をみると、98年度は660,477人で前年度比▲17.3%となったが、これは手続保留(pending)の増加によるものである。移民申請は2000年3月時点で前年度比+24%となっており、保留者数は1,003,931人に達している。保留者を加えた90年代の移民者数は、推計で1,003万9,459人となり、イタリアやドイツを中心に移民が増加した20世紀初頭(1901~10年)の879万5,386人を超え、米国史上初めて1,000万人を上回る見込みである。
移民者の国別の内訳をみると、インドを中心とするIT関連の高度技術者と、メキシコなど中南米からの移民(ヒスパニック)に分けられるが、実数は後者の方が圧倒的に多い。これは高度技術者に発給されるビザ(H1-B)が年間115,000人に制限されている(ただし、2001年度から3年間発給枠を撤廃する法案が、下院小委員会を通過した)ほか、米国では正規の手続を採らない不法入国者が年間約275,000人に達しており、彼らの多くがヒスパニックのためである。移民帰化局の推計では、96年10月現在で約500万人の不法滞在者がいるが、そのうち半分以上の270万人がメキシコから、上位10カ国中8カ国が中南米からの移民である。
こうしたIT関連の高度技術者や、中南米からの労働者の流入は、ニューエコノミーのみならず、米国の経済成長に多様な効果をもたらしていると考えられる。そこで移民の経済効果について分析する。

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