1995年11月01日

女性の再就職問題を考える -労働力供給サイドの変化を踏まえた再就職の受け皿作りを-

  武石 恵美子
生活研究部 主任研究員   松浦 民恵

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<要旨>

  1. わが国の女性の年齢階級別労働力率的線はM字型カーブを描くが、先進諸国の中でM字の谷が明確に残っている国は少数となっている。女性の意識等をみると、再就職型の就業パターンを望ましい働き方として支持する割合は高く、M字カーブの谷が急速に埋まっていくとは考えにくい。スウェーデンやアメリカのように逆U字型に移行していくまでには、まだしばらく時間がかかるであろう。
  2. わが国の女性の就業分野は、年齢層によってその分布が大きく異なっており、ホワイトカラー職種、中堅・大企業、正規従業員を中心とする若年層と、ブルーカラー職種、小規模企業、パートタイム就労、自営業・家族従業を中心とする中高年層といった色分けができる。つまりM字の2つの山は、その構成内容が大きく異なっている。また、職業経歴という視点からみても、女性の職業キャリアは連続しておらず、就業中断を挟んで仕事の内容が大きく変化しているのである。
  3. こうした状況を、高学歴者を中心とするキャリア志向の高い女性は、どのようにみているのだろうか。わが国の高学歴女性の就業パターンは、継続就業と結婚・出産退職の2つのパターンに二極化している傾向がみられ、就業中断後再就職する者が少ない。諸外国では、女性の学歴と労働力率には正の相関がみられるのが一般的であるが、わが国では労働力率の学歴差は認められないのである。現下の再就職労働市場は、高学歴者を中心とするキャリア志向の高い女性にとって必ずしも納得のできるものになっていないために、こうした女性の再就職の意欲を削いでいる可能性は高い。女性の高学歴化が進み、専門的・基幹的な職業経験をもつ女性が増加しており、このような女性が再就職を希望した場合に、仕事の内容面での労働力需給のミスマッチが大きくなっていくとみられる。
  4. 女性の中途採用者の活用状況をみると、積極的な活用方針をもつ企業とそうでない企業とはほぼ半々であり、採用職種や採用の際の重視事項等をみても、職歴や専門性を評価して採用が行われているとは言い難い。ただし、その中で、専門職等いわゆる「キャリア」的職種での採用実績をもつ企業では、応募者の経験や専門性を重視しつつ採用活動を実施し、中途採用女性に対する評価も高いという傾向がみられている。
  5. 一方、再就職を希望する女性の意識を、特にキャリア志向が比較的高いとみられる短大卒以上の高学歴層についてみると、家庭生活との両立を意識しつつも、経験や能力を生かして働きたいとの思いは強く、とりわけ四年制大卒の女性や、過去に専門的、技術的な職業に就いていた女性において、経験や専門性を生かして働くことのできる仕事への志向性が強い。
  6. これらの分析結果から、企業の中途採用女性の活用の実態と再就職希望の高学歴女性の就業ニーズとの間には、大きなギャップがあることが明らかになった。再就職労働市場が、とりわけ高学歴の女性の希望に適合していないという現状を改善しなければ、今後拡大が見込まれる高学歴女性の再就職予備群が、その能力を職場で生かすチャンスをみつけられないまま非労働力化してしまう可能性がある。計画的・連続的なキャリア形成を図ろうとすると継続就業するしか途がないとすれば、女性にとって働き方の選択肢は限られてしまう。就業継続か結婚・出産退職かという選択を迫られているような状況にある高学歴女性の能力を生かすためには、再就職労働市場の整備が必要となる。再就職女性の労働市場への誘引は、今後の産業・職業構造変化への速やかな対応という視点からも重要性を増していくものと考えられ、その意味でも再就職女性の能力活用を社会全体で考える意義は大きい。

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