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2025年09月05日

金(Gold)の強気相場は続くか~3600ドル到達後のNY金見通し

経済研究部 主席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 4月以降、上値の重い展開が続いていたNY金先物価格は、8月下旬から再び上昇の勢いを取り戻した。早いペースでの上昇が続いた結果、今月3日には初の1トロイオンス3600ドル台を付け、過去最高値を更新している。
     
  2. そして、NY金が8月下旬から再び上昇の勢いを取り戻した主な要因としては、(1)米雇用統計の大幅な下振れやパウエル議長講演等を受けた「FRBによる9月利下げ観測の高まり」と、(2)トランプ政権が理事の解任発表などFRBに対して影響力を行使するための具体的な行動に踏み出したことを受けた「FRBの独立性に対する懸念の高まり」が挙げられる。また、副因として、主要国の財政懸念が意識されやすくなっていることもNY金の上昇をサポートしたとみられる。
     
  3. 今後半年程度のNY金の見通しを考えると、今後も多くの上昇要因が見込まれ、さらに上昇に向かう可能性が高いと見ている。上昇を促す要因としては、(1)関税の影響や予測困難なトランプ政権の動きに起因する「先行きの不確実性の高さ」、(2)FRBによる「段階的な利下げ」の継続、(3)トランプ政権の影響力が強まることによる「FRBの独立性のさらなる揺らぎ」、(4)トランプ政権によるドル準備の凍結リスク・価値毀損リスクを警戒した各国中央銀行による金購入継続が挙げられる。一方、NY金の下落に繋がる要因については特段想定されないものの、年初来の価格上昇率が既に4割近くに達しているだけに、市場における高値への警戒感が一定程度、価格の抑制に働くと見込まれる。NY金の今後半年間のレンジは1トロイオンス3400ドル~3900ドル弱、半年後の価格は3700ドル強と予想している。

 
金の内外先物価格
■目次

1.トピック:金(Gold)の強気相場は続くか
  (8月半ばまでは上値の重い展開に)
  (NY金の上昇が再開した理由)
  (先行きはさらに上昇へ)
2.日銀金融政策(8月)
  (日銀)現状維持(開催なし)
  (今後の予想)
3.金融市場(8月)の振り返りと予測表
  (10年国債利回り)
  (ドル円レート)
  (ユーロドルレート)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月05日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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