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2025年08月28日

増え行く単身世帯と消費市場への影響(3)-食生活と住生活の特徴

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 本稿では、総務省「家計調査」を用いて、単身世帯の食生活と住生活について分析した。食生活では、単身世帯は二人以上世帯と比較して「外食」「調理食品」志向が極めて高く、特に若年単身男性では食費の約7割を占める一方、基本食材への支出割合は低いことが特徴的であった。一方高齢層では外食が減少し、自炊中心であるなど、年代による明確な違いが確認された。
     
  • 2019年との比較では、物価上昇(「食料」で約2割増)の影響で外食が大幅に減少し、代わって調理食品や基本食材への支出が増加した。外食から中食・内食へのシフト、すなわち効率性と経済性を重視した食生活への適応は、二人以上世帯と比べて単身世帯で顕著であった。
     
  • 住生活では、二人以上世帯の持ち家率8割超に対し、単身世帯では若年層で1割前後、壮年層でも約半数にとどまり、賃貸志向が高い。背景には住宅購入タイミングの違い、住宅ローン負担の重さ、流動性重視などがある。高齢期になると持ち家率は8割前後まで上昇し、住居費も家賃から修繕維持費中心に変化する。
     
  • 分析からは、単身世帯の消費行動が性別や年代によって大きく異なる多層的な構造を持つ様子が確認された。前稿で指摘した「二面性」は具体的な消費行動においても垣間見られ、経済力を背景に新たな市場を形成する若年女性層がある一方で、物価高や所得減少に直面しやすい脆弱な層も存在する。今後4割を超える単身世帯社会では、層別の特徴を踏まえた政策立案や商品・サービス開発がより重要となる。


■目次

1――はじめに
 ~単身世帯消費は「住居」「教養娯楽」が多い、暮らしの実態から読み解く多様なニーズ
2――単身世帯の消費
  1|食生活~外食・調理食品志向が高いが、物価高で中食・内食志向が進む
  2|単身世帯の住生活~若年は賃貸9割超、年代とともに持ち家率が上昇
3――おわりに~多様な単身世帯の消費、社会変化の先行指標としても重要

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月28日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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