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2025年07月03日
IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(14)-19の国・地域からの60社全てのIAIGsのグループ名が公開された-
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1―はじめに
各国・地域の保険監督当局等によるIAIGs(国際的に活動する保険グループ)の指定を巡る状況については、これまでの保険年金フォーカスで適時報告してきた。
例えば、2023年には、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(7)-52のIAIGsを指定-」(2023.2.24)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(8)-3社が新たに追加されて、IAIGsは55社に-」(2023.11.7)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(9)-IAIGsは19の国・地域からの56社に-」(2024.1.15)を報告した。また、2024年に入ってからは、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(10)-IAIGsは19の国・地域からの57社に-」(2024.2.16)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(11)-住友生命が新たにIAIGに指定されてIAIGsは19の国・地域からの58社に-」(2024.7.31)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(12)-新たに2社が指定、1社が指定解除されてIAIGsは18の国・地域からの59社に-」(2024.11.19)を報告した。さらに、2025年に入ってからは、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(13)-新たに1社が指定されてIAIGsは19の国・地域からの60社に-」(2025.6.5)を報告した。
今回、IAIS(保険監督者国際機構)は、IAIGsの指定に関する情報を更新しているので、その内容を報告する。
例えば、2023年には、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(7)-52のIAIGsを指定-」(2023.2.24)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(8)-3社が新たに追加されて、IAIGsは55社に-」(2023.11.7)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(9)-IAIGsは19の国・地域からの56社に-」(2024.1.15)を報告した。また、2024年に入ってからは、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(10)-IAIGsは19の国・地域からの57社に-」(2024.2.16)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(11)-住友生命が新たにIAIGに指定されてIAIGsは19の国・地域からの58社に-」(2024.7.31)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(12)-新たに2社が指定、1社が指定解除されてIAIGsは18の国・地域からの59社に-」(2024.11.19)を報告した。さらに、2025年に入ってからは、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(13)-新たに1社が指定されてIAIGsは19の国・地域からの60社に-」(2025.6.5)を報告した。
今回、IAIS(保険監督者国際機構)は、IAIGsの指定に関する情報を更新しているので、その内容を報告する。
2―IAIGsとは
まずは、これまでのレポートの繰り返しになるが、IAIGsについて説明しておく。
IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups(国際的に活動する保険グループ)」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAISが定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups(国際的に活動する保険グループ)」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAISが定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
1|IAIGs の選定基準
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
(1) 国際的活動
・3つ以上の管轄区域において、保険料が計上されていること、及び
・本店所在管轄区域外のGWP(Gross Written Premium:総収入保険料)のグループ全体のGWPに対する割合が10%以上
(2) 規模(3 年移動平均)
・総資産が500 億米ドル以上、又は
・全体のGWPが100 億米ドル以上
2|今回のIAIGs の指定に関する情報の公表
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。
IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。
IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
3|IAIGsに対する監督・規制
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。
このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。
また、2024年12月には、ComFrameの改定が行われ、ICP(保険資本基準)に関する規定等が追加されている。
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。
このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。
また、2024年12月には、ComFrameの改定が行われ、ICP(保険資本基準)に関する規定等が追加されている。
3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報
IAISは、IAIGsの指定に関して、2025年6月24日時点での情報の更新1>を行っているので、ここではその内容を報告する。
2|China Re Groupについて
今回、新たにIAIGに指定されたChina Re Group(中国再保険(集団)有限公司)は、中国最大国内唯一の再保険グループである。1949年に設立された中華人民共和国初の保険会社である中国人民保険会社を前身としている。中華人民共和国財政部と中央匯金投資有限公司によって1996年8月22日に共同設立され、2007年10月に株式会社となっている。China Re Group のWebサイトからの情報によれば、再保険料収入では世界第8位の再保険グループとなっている。
China Re Groupは、再保険に加えて、元受保険、資産運用、仲介事業も展開している。主として、損害再保険はChina Re P&C、Chaucer及び シンガポール支店を通じて、生命・医療再保険はChina Re Life、China Re HK及びシンガポール支店を通じて、元受損害保険はChina Continent Insuranceと Chaucerを通じて行っている。
China Re Group は、2025年6月20日に、中国初のIAIGに指定されたことを公表2している。この公表資料の中で、「近年、中国再保険は着実に国際展開を進め、国際業務の比率が継続的に増加し、再保険のリスク分散機能が継続的に強化され、グローバルリスクガバナンスに積極的に参加し、国際保険・再保険市場に統合されている。」と述べている。
China Re Groupの2024年のAnnual Reportによれば、収入保険料(Gross Written Premiums)3Insurance Revenue)は101,363百万元(1中国人民元を20円とすると(以下、同様)、2兆273億円)、純利益は11,080百万元(2,216億円)、総資産は508,347百万元(10兆1,669億円)となっている。なお、収入保険料の事業種類別の内訳は、損害再保険46,042百万元(うち海外から26,560百万元)、生命・医療再保険9,846百万元(うち海外から3,366百万元)、元受損害保険46,914百万元、となっている。因みに、China Re Groupは、2023年1月1日から、IFRS第17号(保険契約)を適用している。
2 https://www.chinare.com.cn/zhzjt/441147/gsxw/2025062308302510506/index.html
3 損益計算書上等では、同じ金額が「Insurance Revenue」として計上されている。
今回、新たにIAIGに指定されたChina Re Group(中国再保険(集団)有限公司)は、中国最大国内唯一の再保険グループである。1949年に設立された中華人民共和国初の保険会社である中国人民保険会社を前身としている。中華人民共和国財政部と中央匯金投資有限公司によって1996年8月22日に共同設立され、2007年10月に株式会社となっている。China Re Group のWebサイトからの情報によれば、再保険料収入では世界第8位の再保険グループとなっている。
China Re Groupは、再保険に加えて、元受保険、資産運用、仲介事業も展開している。主として、損害再保険はChina Re P&C、Chaucer及び シンガポール支店を通じて、生命・医療再保険はChina Re Life、China Re HK及びシンガポール支店を通じて、元受損害保険はChina Continent Insuranceと Chaucerを通じて行っている。
China Re Group は、2025年6月20日に、中国初のIAIGに指定されたことを公表2している。この公表資料の中で、「近年、中国再保険は着実に国際展開を進め、国際業務の比率が継続的に増加し、再保険のリスク分散機能が継続的に強化され、グローバルリスクガバナンスに積極的に参加し、国際保険・再保険市場に統合されている。」と述べている。
China Re Groupの2024年のAnnual Reportによれば、収入保険料(Gross Written Premiums)3Insurance Revenue)は101,363百万元(1中国人民元を20円とすると(以下、同様)、2兆273億円)、純利益は11,080百万元(2,216億円)、総資産は508,347百万元(10兆1,669億円)となっている。なお、収入保険料の事業種類別の内訳は、損害再保険46,042百万元(うち海外から26,560百万元)、生命・医療再保険9,846百万元(うち海外から3,366百万元)、元受損害保険46,914百万元、となっている。因みに、China Re Groupは、2023年1月1日から、IFRS第17号(保険契約)を適用している。
2 https://www.chinare.com.cn/zhzjt/441147/gsxw/2025062308302510506/index.html
3 損益計算書上等では、同じ金額が「Insurance Revenue」として計上されている。
4―まとめ
以上、今回のレポートでは、IAISによるIAIGsの指定に関する最新情報について報告してきた。
これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定グループの数は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況、さらには保険監督当局のスタンス等を反映して、それぞれの国・地域自体の保険市場の規模や一般的に認識されている大規模な保険グループの数等とは必ずしもリンクする形にはなっていない。
なお、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。
買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略や以前のレポートで報告したPrudentialやAegonに見られるようなグループの再編等に伴うグループ本社の管轄区域の変更等に伴って、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。
各管轄区域においては、今後も適宜、IAIGsの指定の見直し等が行われていくことが想定されることになる。
IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定グループの数は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況、さらには保険監督当局のスタンス等を反映して、それぞれの国・地域自体の保険市場の規模や一般的に認識されている大規模な保険グループの数等とは必ずしもリンクする形にはなっていない。
なお、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。
買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略や以前のレポートで報告したPrudentialやAegonに見られるようなグループの再編等に伴うグループ本社の管轄区域の変更等に伴って、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。
各管轄区域においては、今後も適宜、IAIGsの指定の見直し等が行われていくことが想定されることになる。
IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
(2025年07月03日「保険・年金フォーカス」)
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中村 亮一のレポート
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