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- ECB政策理事会-2%目標を概ね達成、金利水準は「良い位置」
2025年06月06日
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(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 無リスク金利は前回の会合以降、概ね変化がなかった
- 世界的な貿易政策の良好なニュースやリスクセンチメントの改善を受けて、株価は上昇、社債スプレッドは縮小した
- 我々の過去の利下げは引き続き企業の借入コストを低下させている
- 企業向けの新規の貸出金利は平均で3月の3.9%から4月には3.8%に低下した
- 市場ベースでの企業の負債発行コストは3.7%で変化がなかった
- 企業向けの銀行貸出は引き続き緩やかに上昇しており、3月の2.4%から4月には2.6%に上昇する一方、社債発行は停滞した
- 新規の住宅ローン化示唆し金利は4月平均3.3%と横ばいで、住宅ローン貸出伸び率は1.9%に上昇した
- 我々の金融政策戦略に沿って、理事会は金融政策と金融安定の相互関係を包括的に評価した
- ユーロ圏の銀行は引き続き強靭性を保っているが、一部は高い不確実性と世界的な貿易政策の変動幅が大きいために広範な金融安定に対するリスクは上昇している
- マクロプルーデンス政策は引き続き、積みあがる金融のぜい弱性に対応するための最善の手段であり、強靭性を強化し、マクロプルーデンスの余地を確保するものである
(結論)
- (声明文冒頭に記載の決定に再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 本日、利下げの一時停止もしくは0.50%ポイントの大幅利下げを提案した人はいるか。また、本日の2%への利下げ後に、7月会合で一時停止し、9月の新しい見通しを待つことは合理的と考えるか
- 本日の利下げを経て、現在の金利水準は、我々が今後に到来する不確実な状況を乗り切るための良い位置(good position)だと信じている
- 今回の決定はほぼ全会一致だった
- 1人、理事会のメンバーで決定を支持しない者がいたが、それ以外は支持し、ほぼ全会一致だったと言える
- あなた自身の将来について。WEF(世界経済フォーラム)の創設者のクラウス・シュワブ氏は、あなたがECBの任期満了前に退任し、世界経済フォーラムを率いることを議論したと述べた。ECBがあなたの残留の意思を表明していることは知っているが、こうした話し合いを否定している訳ではない。こうした話し合いはあったのか。早期のECB退任を考えたことがあるか
- 私は常に自分の使命を果たし、任期を全うする決意を固めている
- 今日の声明を読むと、不確実性にも関わらず経済にかなりの自信を持っているように感じられる。同時にインフレ率の制御にも自信があると見られる。これから、利下げがほぼ終わったという結論を導くのは正しいか。財政支出による景気刺激について、これが経済とおそらくインフレ率にも実際に影響を及ぼすまでに時間がかかると見られることについて考えを聞かせて欲しい。不確実性がある状況かにもかかわらず、短期的にもこれが経済を支えていると自信を持っているのはなぜか
- 成長率の数値はほとんど修正しておらず、26年に▲0.1%ポイントのみである
- ひとつ目の理由はゲタ(carryover)の影響がある
- また、関税の影響はそれが顕在化した場合は、米国向け輸出、ユーロ圏や欧州各国から域外輸出の17%を占めるにとどまるが、この影響は主に26年に生じると見られ、その後防衛装備や建設、あるいはインフラへの期待される投資により大幅に相殺されると考えている
- 我々の評価ではこれは、一部が26年、主には27年に生じると見ている
- 自信があるというには無理がある
- 我々は良い位置にいるが、不確実性に直面している
- 様々な相手との交渉の結果がどうなるかは分からず、どの水準の報復措置が決定されるかも分からず、これらはベースライン見通しには含まれていない
- そのため、我々は準備を整え、会合毎に入手できるデータを評価する必要がある
- 現在の金利水準は良い位置にあると述べた。これはもう利下げが終わったと理解すれば良いのか。換言すれば、さらに利下げをするには何が必要なのか
- 私たちは不確実性に対処できる良い位置にいる
- 声明で聞いて頂いたように、我々は会合毎にデータに基づいて決定し、2%の中期目標の達成のために安全な位置にいるのかを評価する
- 金融政策姿勢は現在、中立的な位置に達したのか。あるいはまだ若干制限的な状況なのか
- 中立金利という素晴らしい概念については今回の会合では議論していない
- 中立金利はショックがないことを前提としているが、コロナ禍、ウクライナ戦争、エネルギー危機といった一連のショックに対応した金融政策のサイクルが概ね終了したところで、我々はうまく対応したと考えている
- 不確実性はあふれている
- そのため、見通しだけではなく、成長率やインフレへの波及経路をまとめたシナリオも提示している
- ただし、すべてではなく、理事会では供給網の混乱についてかなり集中して議論したが、我々のシナリオには含まれていない
- いくつかの国は高い債務を抱え、投資家を引き付けることに苦労している。ECBにとって金融政策の波及は金融安定の観点に立つと、どの時点から懸念材料となるのか
- (質問に対する明確な回答なし)
- ECBの水曜日に公表された収れん報告書によれば、ブルガリアは来年1月からユーロ圏に参加する準備が整っている。ブルガリアのユーロ圏加盟はどのような影響を与えるか、また新たに加盟国が広がれば、通貨圏として強固になるのか
- まず、ブルガリアおよびブルガリア国民の方々に祝意を表し、歓迎したいと思う
- 定期的な調査によれば、ユーロ圏では、ユーロに対する肯定的評価が83%に達し、自国通貨として高く評価している
- ブルガリアの人々にもユーロの価値とその保護の効果を評価してもらえるよう、力を合わせてできる限りのことをしていきたい
- 一部のアナリストは既にさらなる利下げに消極的になっている理事会メンバーへの譲歩として7月一時停止の可能性についての見方を示している。この点から本日の議論について教えて欲しい。
- (質問に対する明確な回答なし)
- インフレに対する勝利宣言には以前から消極的だった。今は勝利宣言(victory lap)の時か、違うのであればなぜか
- 勝利宣言は素晴らしいが、常に次の戦いがある
- 複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルは終わりに近づいているが、いまは異なる相手、仲間、政策との異なる時代に突入している
- 我々は25年2%、27年2%、主にエネルギー価格とユーロ高の現在の仮定に基づく26年1.6%の予想をしている
- 目標達成への道のりをしっかり進める
- この金利サイクルの方向性について。今日の発言では、年末までの方向性は下向き(downward)というよりは横ばい(sideways)の可能性が高いことを示唆している。これは正しい解釈か
- 方向性という概念を使ったのは、2%の中期目標から離れていた時のことである
- 26年のヘッドラインインフレ率は見通し作成時点の石油・ガス、ユーロ相場の影響を受けている
- 基調的なインフレ率やコアインフレ率はほとんど我々の目標から動いていない
- したがって進むべき方向性について話す意味がない
- 横ばいについて話す意味もない
- 世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ氏の発言について。あなたが、ECBの早期退任について検討したことが明らかになったことは、レームダックとみなされ職務遂行に支障をきたすとの見方がある。この懸念に対してどう反応するか
- 繰り返すが、私は自信の責務にしたがい任期を全うすることを決めている
- APPとPEPPについて、ECBが元本の再投資をしなくなったことについて。理事会が利下げの一時停止を決定した場合、量的引き締めも停止しなければならないのか。この再投資がかなり小さな影響だとしてもQT期間中の金利据え置きはECBが流動性を吸収しているため、ある意味で制限的な姿勢といえる
- 繰り返しになるが、我々は今後数か月の不確実性を乗り越える態勢を整えている
- QTと金利政策の不一致のリスクは、ここで断言するわけではないが一時停止の方が、利下げ時よりも重大性は低いだろう
- 私はこのリスクを見ている訳ではないが、将来の決定については述べない
- ユーロの役割について。イタリア銀行総裁のファビオ・パネッタ氏は5月30日の講演の結論で、最近のドル安は国際金融制度の将来構造、準備通貨と貿易決済通貨の双方としてのドルの基軸通貨の役割について重要な問題を提起していると警告した。米国について広く非常に重要な経験を有するあなたの意見を教えて欲しい。ドルに何が起きているのか。我々、ユーロの役割、ユーロ建ての安全資産への含意は何か
- ユーロの役割について、パネッタ総裁の講演を高く評価している
- 私も彼と同じ考えを持っている
- 私の結論は、国際通貨としてのユーロの役割を強化し、国際的な準備通貨として選ばれる可能性を高める機会が開かれようとしている、というものである
- しかし、私の結論は我々に与えられるものではない
- これは、特に加盟国、欧州委員会、欧州理事会が欧州の経済的・地政学的役割を強化し、資本市場同盟の役割を簡素化、合理化、発展させるような非常に本質的な決定を行う必要がある
- また、欧州を法の支配が尊重され、契約が契約となる場所にするための努力を継続し、投資家や経済主体が、欧州が信頼できる事業の場であると確信させる必要がある
- 意図的だと思いますが、間違いでなければ、あなたが「責任者(in charge)」のネックレスを身に着けていることに気付いた。ベースラインシナリオは来年までに1.6%のインフレ率が予想されているが、これがユーロやエネルギーによるもので、貿易戦争の結果と関係がないのであれば、さらなる利下げが正当化されるのではないか
- 総合インフレ率、コアインフレ率ともに27年には2%と1.9%に戻ると見ており、本日の0.25%ポイント利下げはこのインフレ経路を考慮に入れて決定している
- スペインの閣僚が審査しているBBVAとサバデルの合併について。合併にはECBおよび競争当局の許可が必要だが、合併に対する政治的反対が銀行同盟の進展を脅かすことを懸念しているか
- (デギンドス副総裁)1年近く前に報告書を作成し、公表している
- 現在は、スペインの独占禁止当局が意見と取引条件を分析している
- 我々はスペイン政府から公式な意見が出るまで待つべきである
- インフレについて。コロナ禍後の数年間は様々な理由で構造的に高いインフレ率となり、高い状況が長期化する(higher for longer)状況だった。コアおよびヘッドラインの見通しや構造的なユーロ高の期待は、依然としてインフレ率や金利の高い状況が長期化するという状況を示しているのか
- 我々は現在、良い位置にあり、また態勢を整えており、2%の中期目標に戻すために適切な金融政策には何が必要なのかを会合毎にデータに基づいて評価していく
- ユーロが上昇する際には、輸出企業や輸出依存型経済にどのような影響が生じるかが懸念される。ユーロ圏はユーロ高に対して十分強いと考えているか
- 労働市場は非常に強固で、景気後退懸念は現実のものとなっていない
- 成長率見通しの修正は限定的で、0.9%、1.1%、1.3%と見ている
- 現在、インフレ率は減速しており、2%目標の達成にほぼ沿っている
- 金融政策は経済に極めてスムーズに波及している
- ただし、さらに必要なことはある
- 改善、変革、簡素化、合理化、欧州への資本流入を推奨・歓迎する真剣な機運が感じられる
- ここ数週間のリバースヤンキー債の大幅増は我々の制度への信頼を明確に示している
- 少なくとも市場の力と投資家が、欧州に価値を見出し、信頼を寄せていることを示している
(2025年06月06日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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