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プレコンセプションケア 健康経営度調査2025に追加-大規模法人部門における認知度は5割超、内容を知っている企業のうち取組み法人は3割程度、対象の限定は是正要-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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1――はじめに
その後、2024年7月の第12回健康投資ワーキンググループでは、健康経営度調査のアンケートにプレコンセプションケアに関する項目が追加されることが示された2。本稿では、健康経営度調査に追加された設問項目についての詳細や、アンケート結果について簡単にご紹介する。
1 乾愛 基礎研レポート「プレコンセプションケアとは?(3)」(2022年10月31日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72831?site=nli
2 経済産業省 第12回健康投資ワーキンググループ(2024年7月23日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/012.html
2――健康経営度調査の概要
健康経営度調査とは3、経済産業省が企業の健康経営の取組状況や経年変化について分析することを目的に毎年実施されているものであり、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」の選定・認定をするための資料として活用されているものである。
健康経営度調査の評価項目には、健康経営が企業の経営理念や方針にどう位置付けられているかなどの「経営理念や方針」、健康経営を推進するための「組織体制」、健康診断やメンタルヘルス対策などの「制度・施策」、企業で実施した施策の効果測定や改善の取組などの「評価・改善」、健康経営に関する社内外への情報発信状況を示す「情報開示」などがある。
企業は、これらの調査票に回答し、審査に必要な書類を提出することでエントリーすることができる。調査期間は、毎年8月末から10月末までであり、翌年3月ごろに健康経営銘柄や健康経営優良法人の認定結果が公表される仕組みである。
企業は、これらの調査結果に基づき専門家による詳細なフィードバックを得られることで、自社の客観的な状況把握や適切な改善に向けた取り組みが見込める。また、調査への回答や認定を通じて、企業の社会的な評価が高まり、ブランドイメージの向上が期待できる上に、健康経営に積極的な企業という認知が高まることで優秀な人材獲得につながる可能性が期待できる。
2024年7月23日に開催された健康投資ワーキンググループでは4、健康経営を今後の日本の経済や社会を支える基盤とすべく、(1)健康経営の可視化と質の向上、(2)新たなマーケットの創出、(3)健康経営の社会への浸透・定着という3本柱に基づき、調査票の内容や制度設計について見直しを行っているが、プレコンセプションケアについては、「若年層からの健康意識の啓発」を目的に、調査票のアンケート項目に設問を追加している。
アンケート調査票では、「プレコンセプションケアは、こども未来戦略において、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に着け、健康管理を行うよう促すことと定義されている。」ことを説明した上で、「Q1:プレコンセプションケアについて知っていますか。」という設問に対し、「1:内容を知っている」「2:内容は知らないが、聞いたことはある」「3:聞いたことがない」の3択で回答するものと、「Q2:プレコンセプションケアについて、健康経営の一環として取り組みを実施していますか。」という設問に対し、「1:実施している」「2:実施していない」で回答する様式になっている。また、何らかの取組を実施していると回答した場合には、具体的な取り組み内容や、取り組みの意図、従業員の反応等について記載できる形式となっており、これらの内容が健康経営度調査2025に新たに追加された。
4 経済産業省 第12回健康投資ワーキンググループ 参考資料2「令和6年度健康経営度調査票(素案)」(2024年7月23日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/012_s02_00.pdf
3――健康経営度調査2025の結果
経済産業省「第1回健康経営推進検討会」資料によると5、健康経営度調査(大規模法人部門)2025の回答数は、3,869件と前年比10%の増加であり、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定数は3,400件と前年比約14%の増加であることが報告された。
3,869件の大規模法人部門を対象としたアンケートの結果、「プレコンセプションケアについて知っていますか。」に対して、「内容を知っている」と回答した企業は全体の27.6%にのぼり、「内容は知らないが聞いたことはある」の24.6%と合わせて、認知度は52.2%に達することが明らかとなった。
また、「内容を知っている」と回答した1,069件の企業のうち、「プレコンセプションケアについて、健康経営の一環として取組みを実施していますか。」に対して、「実施している」と回答した企業は、30.3%という結果が明らかとなった。
5 経済産業省 第1回健康経営推進検討会(2024年12月19日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/001.html
健康経営の一環として、プレコンセプションケアについて何らかの取組みを実施していると回答した企業の回答事例をあげると、「年齢性別問わず全職員を対象にプレコンセプションケアの研修や動画配信」、「新規採用職員研修でプレコンセプションケアについて講義」、「風しん梅毒などの感染症講話」など、セミナーや勉強会を開催している事例が目立つ。また、プレコンノートの配布や子宮頸がんワクチンの推奨など、既存の情報シートやチラシ等を活用して情報提供している事例も多かった。
一方で、経済産業省の第1回健康経営推進検討会では、取組みの対象を女性だけに限定している法人の事例が多数を占める点について指摘がなされており、筆者が基礎研レポート「プレコンセプションケア男性こそ必要なワケ」6でも言及した通り、男女双方に対し健康に影響を与えるホルモン変動や疾患リスクなどについて知識教示する必要がある。ただし、筆者が先行事例企業にヒアリングした際には、女性のホルモン変動や更年期障害に対する理解を深めるために男性からは発言しにくいと言った意見も散見されたため、オンラインによる開催や匿名による意見交換・集約など工夫は必要である。
また、新人研修でセミナーを展開している事例も目立つが、更年期障害や疾患発症リスクを考慮すると管理職期にあたる従業員を対象とした研修なども重要な対象となるため、若年者を対象とするプレコンセプションケアの概念を契機に、徐々に取り組む対象(範囲)を拡大していく必要もあるだろう。
尚、健康経営度調査2025のクロス分析の結果をみると7、プレコンセプションケアに関して内容を知っている企業は、健康経営度調査の評価が上位20%以内に該当するものが54.7%を占めており、健康経営銘柄の選定企業であるものが73.6%、健康経営優良法人のホワイト500に選定されているものが60.5%を占める結果が示されており、プレコンセプションケアにまで配慮ができる企業は健康経営に関する全体の取組み評価も高い傾向が見受けられる。プレコンセプションケアに関する取り組みは、単なる女性の健康課題の改善に留まらず、企業の長期的なブランド価値を維持する上でも重要な役割を果たすと言えよう。
6 乾愛 基礎研レポート「プレコンセプションケア男性こそ必要なワケ」(2025年3月25日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=81428?site=nli
7 経済産業省 健康経営度調査結果集計データ(平成26年~令和6年度)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
(2025年05月27日「基礎研レター」)
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03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
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