2025年04月21日

「都道府県人口減の未来図」-2024年都道府県20代人口流出率ランキング

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

文字サイズ

2――女性の雇用問題は「人口問題」である

図表2からは、政令指定都市を持つような大都市圏であっても、20代男女の就職期流出の波に飲み込まれている、という実態が浮かび上がっている。

2019年から社会減を続けている3大都市圏中京圏の中核エリアとなる愛知県や、九州全域や山口県から若者を集めて「若者のメッカ」という一般イメージが固定化している福岡県でさえも、20代男女の人口動態でみるならば、社会減エリアとなっている。
 
20代人口男女合計の社会減よりもより深刻な、20代女性社会減から逃れられているのは、わずか5都府県である。女性活躍推進法行動計画提出企業の2割以上を占め、女性活躍推進において国の認定の「えるぼし」を取得する企業全体の5割3を占める東京都が傑出して20代女性に選ばれており(4.7%増)、大阪府(1.8%)、神奈川県(1.7%)、埼玉県(0.9%)、千葉県(0.8%)が続く。
 
「雨だれ石を穿つ」どころではない出生機会損失を地元からの主に就職期の20代前半女性流出によって生み出しているにも関わらず、地方創生(≒地方少子化対策)ではいまだに、「観光4」「男性ばかりを主に集める工場建設」「少子化で子どもの奪い合いレッドオーシャン状態にある学校建設」「未婚化で激減する母子の奪い合いレッドオーシャン状態をうむ子育て支援合戦」「日本の若者でさえ逃げ出す状況を棚上げした移民誘致」と、まるで戦後まもない時代に思いついたかのような非エビデンス人口戦略ばかりが押し出されている。
 
令和は情動議論の時代からEBPM(エビデンスに基づく政策策定)の時代へと変わらねばならない。

エリアの人口戦略の在り方を選択するのは、あくまでもその自治体と自治体で活動する経営者ではあるが、地元の未来を願うのであれば、「消滅可能性『地元』の未来を切り開くための覚悟」を持って、雇用問題に向き合ってほしい。
 
3 厚生労働省ホームページ「女性活躍推進法に係る一般事業主行動計画策定届出状況」24年9月末状況;
4 観光はエンターテーメントである。エンターテーメントはそれに費やす経済力があって初めてお金が落ちる業種である。堅固な労働市場が地元にあって初めて、その下流に発生・持続可能な事業であることを忘れないようにしたい。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月21日「基礎研レポート」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024年度)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は年度最新順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【「都道府県人口減の未来図」-2024年都道府県20代人口流出率ランキング】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

「都道府県人口減の未来図」-2024年都道府県20代人口流出率ランキングのレポート Topへ