2025年04月14日

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-

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2|保険事業の地域別業績
ここでは、各社のセグメント情報に基づいて、保険事業に関する保険収益等と営業利益の地域別内訳を見ている6,7(資産管理事業等については、地域別内訳が示されていないので、以下では保険事業のみを対象にしている)。

2-1.保険収益等の状況
まずは、保険収益等(保険収益又は保険料)の地域別内訳を見てみる。先に述べたように、これまで各社とも収入の主要な基礎数値として「保険料(Gross Written Premium)」を開示してきたが、IFRS第17号の適用に伴い、これに代わって「保険収益(Insurance Revenue)」での内訳を開示してきている。ただし、Generaliについては、保険収益の地域別の内訳を開示していないため、従前の保険料を使用している。

(1) 2024年の結果
これによれば、各社毎に状況は異なっているが、各社とも自国(親会社国)以外からの保険収益等が一定の規模を有しており、自国以外での事業が大きな位置付けを有している。なお、Avivaの場合、欧州大陸での事業の売却により、欧州事業は英国&アイルランドで展開されている。Aegonはオランダの事業をa.s.r.(以下、ASRと記載)に移管しており、現在はこの会社の持分を所有しているのみであるので、次ページの図表にはオランダの事業は反映されていない。

各社の地域別の構成比の概要は、以下の通りとなっている。

AXAは、生損保の合計で、自国のフランスが26%、フランス以外の欧州が37%、米州が22%、アジア・太平洋が14%となっている。

Allianzの生保は、自国のドイツで42%、ドイツ以外の欧州で34%となっているが、米国中心の米州やアジア・太平洋も1割程度と有意な水準となっている。一方で、損保では、「その他」に国際部門や再保険の数値が含まれていることから、その割合が19%と高くなっている。

Generaliの生保は、自国のイタリアが38%、イタリア以外の欧州で50%と高くなっており、欧州以外の構成比は12%に留まっている。一方で、損保では、よりグローバルに分散してはいるが、イタリアは26%で他社に比べて相対的に高い水準となっている。

Avivaは、基本的には英国&アイルランド以外の欧州事業を売却しているため、英国&アイルランドから構成される欧州の合計が79%、カナダの損保事業である米州が21%となっている。

Aegonは、オランダの保険事業をASRに売却した結果、英国を含む欧州は6%となっており、米国及び中南米8を含む米州が92%と、かなり高い水準になっている。

Zurichの生保は、自国のスイスが11%、スイス以外の欧州が45%であるのに対して、中南米を中心とした米州が24%、アジア・太平洋も20%で、これらの2つの地域における構成比が他社に比べて高くなっている。一方で、損保は、スイスが9%、スイス以外の欧州が33%、アジア・太平洋が8%であるのに対して、米州が54%とかなり高い水準になっている。

保険収益等という指標で見た場合、アジア・太平洋の構成比は、近年上昇傾向にあり、AXAとZurichの生保では1割を超える水準で、Allianzの生保とGeneraliの生保においても1割程度になっている。
欧州大手保険グループの保険収益等の地域別内訳(2024年)
 
6 地域区分は、基本的に引受会社の所属国に基づいている。
7 2024年.において、会社によっては、地域別のセグメントの変更や算出方法等の変更を行っているケースもある。
8 このレポートでは、厳密に言えば正確ではないが、「ラテンアメリカ(Latin America)」につき、「中南米」と称している。

(2) 2023年との比較
基本的には保険収益等の進展が収益の拡大に結びついていくものとなっているため、その(報告数値ベースでの)2023年との比較を見てみると、以下の図表の通りとなっている。
欧州大手保険グループの保険収益等の地域別内訳(2023年から2024年に向けての増加額と進展率)
各社とも事業地域の再編等を行っていることもあり、前年との単純な比較が難しくなっている。また決算数値を前年と比較する場合においては、為替レートの変化による影響も小さくないことに注意が必要になる。そのため、多くの会社が、Annual Report等の業績説明においては、同等ベース(連結範囲・為替等を一定)とした場合の進展率の数値等で説明を行っている。
 
2-2.営業利益の状況
次に、保険事業の営業利益9の地域別内訳を見てみる。地域別の利益配分等にも各社の考え方が反映されているが、各国における子会社毎や各社間の収益状況の差異等も一定程度比較できるものと考えられる。なお、一般的には、国際部門や再保険関係の損益が「その他」に含まれていることから、グループによっては「その他」の構成比が、特に損保事業を中心に大きくなっており、その数値も比較的大きく変動している。

(1) 2024年の結果
営業利益ベースでも、各社の地域別の構成比の状況は、保険収益等と基本的には大きくは変わっていないが、地域別の収益状況や各地域での深耕度等を反映して、若干異なる傾向となっている。さらには、損害保険の場合には、各種の要因でより収益は変動性が高いものになっていることには留意が必要になる。

各社の地域別の構成比の概要は、以下の通りとなっている。

AXAは、生保は、自国のフランスが29%、フランス以外の欧州が38%、アジア・太平洋が32%となっている。一方、損保では、フランスが22%、フランス以外の欧州が36%、米州が32%、アジア・太平洋が7%となっている。
欧州大手保険グループの保険事業の営業利益等の地域別内訳(2024年)
Allianzの生保は、自国のドイツが26%、ドイツ以外の欧州が41%であるのに対して、米州が21%と高くなっており、またアジア・太平洋の構成比が高まってきて11%となっている。一方で、損保では、保険収益等と同様に、国際部門や再保険の数値が含まれていることから「その他」の割合が22%と高くなっており、図表上の米州やアジア・太平洋の数値は1割を下回る水準となっている。

Generaliの生保は、自国のイタリアが39%、イタリア以外の欧州が55%で、合計では94%となって、保険料の構成比よりも高くなっており、営業利益ではより欧州に依存した形になっている。一方で、損保は、よりグローバルに分散していて、イタリアは23%となっているが、それでも欧州全体で81%と高水準になっている。

Avivaは、英国&アイルランドでの営業利益が大半を占め、カナダの米州が16%となっている。

Aegonは、英国中心の欧州が13%で、アジア・太平洋も12%だが、米国及び中南米を含む米州の営業利益が72%と高くなっている。

Zurichの生保は、自国のスイスが17%、スイス以外の欧州が54%となっているが、アジア・太平洋が11%であることに加えて、中南米を中心とした米州が19%で、これらの地域の構成比も高くなっている。損保においては、米州が60%と高い数値になっている。
 
9 以下の図表等においては、生保と損保に区分していない場合、「その他」には、資産管理事業等の保険事業以外も含まれている。

(2) 2023年との比較
営業利益における2023年との比較についても、各社とも事業地域の再編等を行ってきていることから、前年との単純な比較が難しくなっている。また営業利益の決算数値についても、前年と比較する場合においては、特に中南米地域の業績において、為替レートの変化による影響も小さくないことに注意が必要になる。
欧州大手保険グループの保険事業の営業利益等の地域別内訳(2023年から2024年に向けての増加額と進展率)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月14日「基礎研レポート」)

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