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2024年04月25日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2023年決算数値等に基づく現状分析-
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(3) 地域別展開に関する方針及びトピック
Aegonは、2023年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2023年4月4日に、英国の個人保障ブックをRoyal Londonに売却することを発表した。この取引は、選択した市場で主要なビジネスを創出するための一環として、英国の中核となるリテール及びワークプレイスプラットフォーム活動に集中するというAegonの戦略に基づいている。
2023年6月1日に、ポーランドとルーマニアでの事業のウィーン保険グループAG Wiener Versicherung Gruppe(VIG)への売却が1億25百万ユーロで完了したことを発表した。これは、ハンガリーとトルコの事業の売却完了に続き、Aegonの中・東欧における保険、年金、資産管理事業のVIGへの完全売却を完了するための最終段階となった。
2023年7月4日に、オランダの年金、生命保険、損害保険、銀行業務、住宅ローン組成業務のASRとの統合が完了し、ASRとの資産管理提携が開始することを発表した。取引の一環として、Aegonは22億ユーロの現金収入とASRの株式29.99%を受け取った。この統合により、オランダで第2位の保険会社が誕生することになった。
2023年7月21日に、インドの合弁会社であるAegon Life Insurance Companyの株式56%をインドの金融サービス会社であるBandhan Financial Holdings Limitedに売却し、インドの合弁事業から撤退すると発表した。この取引は、2024年2月26日に売却が完了した、と発表された。
Aegonは、2023年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2023年4月4日に、英国の個人保障ブックをRoyal Londonに売却することを発表した。この取引は、選択した市場で主要なビジネスを創出するための一環として、英国の中核となるリテール及びワークプレイスプラットフォーム活動に集中するというAegonの戦略に基づいている。
2023年6月1日に、ポーランドとルーマニアでの事業のウィーン保険グループAG Wiener Versicherung Gruppe(VIG)への売却が1億25百万ユーロで完了したことを発表した。これは、ハンガリーとトルコの事業の売却完了に続き、Aegonの中・東欧における保険、年金、資産管理事業のVIGへの完全売却を完了するための最終段階となった。
2023年7月4日に、オランダの年金、生命保険、損害保険、銀行業務、住宅ローン組成業務のASRとの統合が完了し、ASRとの資産管理提携が開始することを発表した。取引の一環として、Aegonは22億ユーロの現金収入とASRの株式29.99%を受け取った。この統合により、オランダで第2位の保険会社が誕生することになった。
2023年7月21日に、インドの合弁会社であるAegon Life Insurance Companyの株式56%をインドの金融サービス会社であるBandhan Financial Holdings Limitedに売却し、インドの合弁事業から撤退すると発表した。この取引は、2024年2月26日に売却が完了した、と発表された。
6|Zurich
Zurichは、世界の200以上の国と地域で、生命保険や損害保険等のサービスを提供している。
Zurich は、事業ポートフォリオの見直しを適宜行っており、非中核事業の撤退を通じて資本を解放する一方で、成長が見込める市場において、買収等に再投資してきている。
(1) 地域別の業績-2023年の結果-
営業利益について、欧州では、自国のスイス以外に、英国、ドイツ、スペイン等から高い水準を上げている。ただし、こうしたEMEA(欧州・中東・アフリカ)からの構成比は、保険全体では35%(生保は62%、損保は21%)であり、残りの65%(生保で38%、損保で79%)を北米16、中南米、アジア・太平洋等が占めている。
他社との比較では、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等の中南米の位置付けが高くなっているのが特徴的で、営業利益(生保)で20%を占めている。Banco Santanderとの提携によるZurich Santanderにおける販売等が貢献している。また、オーストラリア、香港、インドネシア、日本、マレーシア等のアジア・太平洋のシェアも比較的高い水準になっている。
なお、Zurichは、CSM残高について地域別には公表していないが、生命保険について、2023年末は11,526百万ドル、2022年末10,496百万ドルとなっている。
Zurichは、世界の200以上の国と地域で、生命保険や損害保険等のサービスを提供している。
Zurich は、事業ポートフォリオの見直しを適宜行っており、非中核事業の撤退を通じて資本を解放する一方で、成長が見込める市場において、買収等に再投資してきている。
(1) 地域別の業績-2023年の結果-
営業利益について、欧州では、自国のスイス以外に、英国、ドイツ、スペイン等から高い水準を上げている。ただし、こうしたEMEA(欧州・中東・アフリカ)からの構成比は、保険全体では35%(生保は62%、損保は21%)であり、残りの65%(生保で38%、損保で79%)を北米16、中南米、アジア・太平洋等が占めている。
他社との比較では、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等の中南米の位置付けが高くなっているのが特徴的で、営業利益(生保)で20%を占めている。Banco Santanderとの提携によるZurich Santanderにおける販売等が貢献している。また、オーストラリア、香港、インドネシア、日本、マレーシア等のアジア・太平洋のシェアも比較的高い水準になっている。
なお、Zurichは、CSM残高について地域別には公表していないが、生命保険について、2023年末は11,526百万ドル、2022年末10,496百万ドルとなっている。
16 Zurichの米国子会社グループは、他の欧州の保険会社の米国子会社グループのような大きな規模を有していない。
(2) 地域別の業績-2022年との比較-
Zurichの決算数値は米ドル建で報告されているため、2022年との比較を見る上では、2023年の米ドルの主要通貨に対する状況等を考慮しておく必要がある。Zurichは通貨変動が各種指標に与える影響を開示している。
営業利益(生保)については、以下の通り。
・全体では、39%増加して、20億60百万ドルとなった。これには、ドイツの伝統的生命保険事業やチリの年金事業からの寄与は含まれていない(これらは売却のための保有に計上されている)。
・EMEAは、前年の移行関連の調整や一時的要因がなかったことやCSM残高の増加によるCSMの償却の増加により、28%増加して、12億68百万ドルとなった。
・北米では、不利な契約からの影響が、前年のマイナスからプラスになったことを主因として、1億38百万ドル増加して、1億8百万ドルとなった。
・アジア・太平洋では、主として前提の更新と再価格行動に関する良好な経験により、88%増加して、275百万ドルとなった。
・中南米では、主として収益の成長により、8%増加した。
・AUM(資産管理残高)は、ポジティブなネットフロー、好調な市場と為替の動きにより、12%増加して、2,595億ドルとなった。
営業利益(損保)については、保険収益の増加(6%の保険料率の増加にサポートされての保険料の成長による)と投資結果の増加により、前年にあった不動産取引がなくなったことにより一部相殺されたものの、7%増加して、38億93百万ドルとなった。
なお、新契約価値は、全体で5%増加した。
CSM残高は10%増加して、11,526百万ドルとなったが、これは有利な経済変動と為替の動きや基礎的なCSMの増加の組み合わせによる。
(3) 地域別展開に関する方針及びトピック
Zurichは、2022年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2023年11月2日に、インドのKotak Mahindra General Insuranceの51%の株式を取得して、インドの損害保険市場に参入する、と発表した。
2024年1月30日には、Viridium GroupがドイツのZurich Life Legacyの買収を計画通りに完了しないことを知らされたとし、このポートフォリオの解決策を見つけることに尽力しており、オプションを検討する予定である、と発表した17。なお、これはZurichの目標や資本管理計画には影響しない、としている。
17 Zurichは、約200億ユーロのレガシーブックをViridium Groupに売却する計画だったが、PE(プライベートエクイティ)会社のCinvenによる所有権に関するドイツ保険監督当局BaFinの懸念により、取引が認められていない。
Zurichは、2022年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2023年11月2日に、インドのKotak Mahindra General Insuranceの51%の株式を取得して、インドの損害保険市場に参入する、と発表した。
2024年1月30日には、Viridium GroupがドイツのZurich Life Legacyの買収を計画通りに完了しないことを知らされたとし、このポートフォリオの解決策を見つけることに尽力しており、オプションを検討する予定である、と発表した17。なお、これはZurichの目標や資本管理計画には影響しない、としている。
17 Zurichは、約200億ユーロのレガシーブックをViridium Groupに売却する計画だったが、PE(プライベートエクイティ)会社のCinvenによる所有権に関するドイツ保険監督当局BaFinの懸念により、取引が認められていない。
7|Prudential
以前のPrudential plcは、2019年10月に、アジアと米国における保険事業を展開するPrudential plc18と欧州における保険事業と投資管理事業を展開するM&G plc19に分割された。さらに、Prudential plcは、2021年1月に、2021年第2四半期に米国事業であるJackson Financial Inc.20をグループから分離することを決定した、と公表し、2021年9月20日に分離を完了したと発表した(なお、Jackson National Groupは、2023年末の認容資産で、米国の生命保険・医療保険グループで第9位(2022年末も第9位)14となっている)。
現在のPrudential plcは、高成長のアジアとアフリカの24の市場で、生命保険と医療保険及び資産管理事業を提供する会社となっている。アフリカでは8カ国(カメルーン、コートジボワール、ガーナ、ケニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビア、ナイジェリア)で事業展開している。なお、M&G plcは英国と欧州を中心とした市場で事業展開している。
(1) 地域別の業績-2023年の結果-
アジア・アフリカの事業の中では、香港の位置付けが最も高く、シンガポールがこれに次いでいる。その他に、中国、インドネシア、マレーシアの位置付けが高くなっている。
なお、Prudentialも、CSM残高については地域別には公表していないが、2023年末は22,352百万ドル(再保険控除後 21,012百万ドル)、2022年末は21,304百万ドル(再保険控除後 19,989百万ドル)となっている。また、M&G plcのCSMの変動は、2023年末が355百万ポンド、2022年末が129百万ポンドとなっている。なお、Jackson FinancialはIFRS(国際財務報告基準)ではなく、米国会計基準を採用している。
以前のPrudential plcは、2019年10月に、アジアと米国における保険事業を展開するPrudential plc18と欧州における保険事業と投資管理事業を展開するM&G plc19に分割された。さらに、Prudential plcは、2021年1月に、2021年第2四半期に米国事業であるJackson Financial Inc.20をグループから分離することを決定した、と公表し、2021年9月20日に分離を完了したと発表した(なお、Jackson National Groupは、2023年末の認容資産で、米国の生命保険・医療保険グループで第9位(2022年末も第9位)14となっている)。
現在のPrudential plcは、高成長のアジアとアフリカの24の市場で、生命保険と医療保険及び資産管理事業を提供する会社となっている。アフリカでは8カ国(カメルーン、コートジボワール、ガーナ、ケニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビア、ナイジェリア)で事業展開している。なお、M&G plcは英国と欧州を中心とした市場で事業展開している。
(1) 地域別の業績-2023年の結果-
アジア・アフリカの事業の中では、香港の位置付けが最も高く、シンガポールがこれに次いでいる。その他に、中国、インドネシア、マレーシアの位置付けが高くなっている。
なお、Prudentialも、CSM残高については地域別には公表していないが、2023年末は22,352百万ドル(再保険控除後 21,012百万ドル)、2022年末は21,304百万ドル(再保険控除後 19,989百万ドル)となっている。また、M&G plcのCSMの変動は、2023年末が355百万ポンド、2022年末が129百万ポンドとなっている。なお、Jackson FinancialはIFRS(国際財務報告基準)ではなく、米国会計基準を採用している。
18 分離後のPrudential plcは、英国に本社を置き、ロンドン証券取引所でpremium listingされ、香港でprimary listingされ、ニューヨークとシンガポールに上場している会社となる。また、英国又は欧州の顧客を持たないため、ソルベンシーII制度の対象外となる。
19 M&G Prudentialのグループ監督者は、英国の保険監督当局であるPRA(健全性規制機構)となっている。
20 Jackson Financial Inc。(JFI)は、米国の持株会社で、Jackson Holdings LLC(JHLLC)の直接の親会社となる。
JHLLCの間接的な完全所有子会社に、Jackson National Life Insurance Company及びPPM America.Incが含まれる。
(2) 地域別の業績-2022年との比較-
(調整済み)営業利益は、資産管理事業のEastspringにおける10%の増加の影響を大きく受けて、8%増加して28億93百万ドルとなった。保険事業の営業利益は、2022年の経済変動が(開始資産価値に基づく)長期契約の純投資結果の水準を低下させたが、高い保険サービス結果によって、相殺されたことによって、2022年とほぼ同じだった。
地域別にみると、2022年との比較では、中国とインドネシアで増加したものの、香港とマレーシアで1割程度の減少となった。
PrudentialのCSM残高は、5%増加して、21,012百万ドルとなった。新契約の貢献が2,348百万ドル、保有契約収益が1,563百万ドルに対して、CSMリリースが2,208百万ドル、さらに経済等変動が▲619百万ドル、為替の影響が▲61百万ドル、となっている。
(3) 地域別展開に関する方針及びトピック
Prudential plcは、2023年以降に、Jackson Financial Inc.の分離に加えて、以下の地域別展開の見直し等を行ってきている。
2023年1月26日に、マカオ特別行政区からマカオに香港事業の支店を設立する承認を受けたと発表した。これにより、Prudentialはアジアとアフリカの 24 の市場で存在感を示すことになる。
2023年12月20日に、間接完全子会社であるPrudential Corporation Holdings Limited(以下「PCHL」)と CITIC Financial Holdings Co. Ltd.(以下「CITIC」)の50/50の合弁会社であるCITIC-Prudential Life Insurance Company Limited(以下「CPL」)が設立されたことを発表した。
2024年1月11日に、Prudential Life Assurance (Thailand) Public Company Ltd(以下「PLT」)がCIMB Thai Bank Public Company Limited(以下「CIMB Thai」)と10年間のバンカシュアランス・パートナーシップを締結し、PLTがCIMB Thaiのタイにおける独占的生命保険パートナーとなることを発表した。
Prudential plcは、2023年以降に、Jackson Financial Inc.の分離に加えて、以下の地域別展開の見直し等を行ってきている。
2023年1月26日に、マカオ特別行政区からマカオに香港事業の支店を設立する承認を受けたと発表した。これにより、Prudentialはアジアとアフリカの 24 の市場で存在感を示すことになる。
2023年12月20日に、間接完全子会社であるPrudential Corporation Holdings Limited(以下「PCHL」)と CITIC Financial Holdings Co. Ltd.(以下「CITIC」)の50/50の合弁会社であるCITIC-Prudential Life Insurance Company Limited(以下「CPL」)が設立されたことを発表した。
2024年1月11日に、Prudential Life Assurance (Thailand) Public Company Ltd(以下「PLT」)がCIMB Thai Bank Public Company Limited(以下「CIMB Thai」)と10年間のバンカシュアランス・パートナーシップを締結し、PLTがCIMB Thaiのタイにおける独占的生命保険パートナーとなることを発表した。
(2024年04月25日「基礎研レポート」)
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