2024年04月03日

文字サイズ

賦課方式の公的年金財政は、出生率など人口動態の影響を受ける。仮に積立金がない場合には、1人の高齢者を何人の現役世代が支えているかの割合によって、給付や保険料を調節せざるを得ない。もしも、現在の日本のように保険料率を一定とすれば、高齢者対現役世代の割合に応じて給付を調整することになる。世代全体としてみれば自分たちを支えてくれる子供や孫の世代を多く育てるほど、高い給付を得られることになる。
 
これを世代の中に引き直すと、子育ての負担をより引き受けた人ほど、年金財政を通じてその世代の給付に貢献していることになる。そうした負担の大小を保険料に反映させたのがドイツの介護保険である。すなわち、2001年に憲法裁判所は、子育てを通じた制度への貢献を保険料に反映させるべきだとした。その結果、子供のない人の保険料は子供のある人よりも約1割高くなっている。
 
この仕組みにはかえって世代内の対立を招くとして、ドイツ国内でも反対論があり、現在の日本の社会保障に持ち込むことも到底不可能だろう。しかし、年金などの社会保障における少子化の影響や世代間・世代内の公平を考える上で、こうした議論があることを知っておくのは悪いことではないのかも知れない。
 

 
Xでシェアする Facebookでシェアする

(2024年04月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【公平な給付と負担について考える】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

公平な給付と負担について考えるのレポート Topへ