2024年02月13日

PRA(英国)やAPRA(オーストラリア)が2024年の監督・政策上の優先事項等を公表

文字サイズ

3―APRAの2024年の監督と政策上の優先事項

APRAは、監督と政策上の優先事項を毎年発表し、今後の重点分野の概要を説明し、事業体の計画を支援している。これにより、APRAの透明性と説明責任へのコミットメントが裏付けられている。

APRAは、2024年1月31日に、2024 年上半期の監督と政策上の優先事項を公表3した。

APRAはその書簡4の中で、銀行、退職年金、保険、サイバーセキュリティ、オペレーショナル・レジリエンス、気候リスク、ガバナンス等、業界横断的な主要な問題に関する規制アジェンダの概要を説明した。

この書簡は、APRAが8月末までに公表を予定している2024年~2025年の年次計画における監督と政策上の優先事項への橋渡しとして、今年の最初の6か月間の中間的なアップデートを行うものとして位置付けられている。

APRAは今回初めて、監督と政策上の優先事項を統合し、特定のイニシアチブがどの団体に適用されるかについて、より詳細な情報を提供している。

この書簡によると、2023年初頭の銀行市場の混乱が、ストレスがいかに早く発生するか、また、適切に対応するために会社や当局がいかに強固な立場をとる必要があるか、を思い起こさせるものであったとし、また、金融システムは、地政学的リスク、金利上昇や高インフレ、サイバー攻撃の脅威の高まり、自然災害の頻発などにも直面している、と述べている。

APRAは2023年に浮上したリスクに対応するために監督と政策アジェンダの優先順位を見直し、一連の重要な政策改革を進め、今後、以下の点に重点を置いたプログラムを継続する予定としている。

・全ての規制対象事業体の運用及びサイバー・レジリエンス(事業体及びコミュニティによるデジタル技術への依存の高まりを反映したもの)。

・昨年の世界的な銀行業務の混乱から得た教訓を、認可預金受取機関に対する健全性の枠組みに的を絞った変更を通じて埋め込む。

・退職所得に関する退職年金管理者の慣行の向上、金融規制当局評価機構(FRAA)のレビューからの勧告の実施、透明性の向上、APRAのヒートマップとパフォーマンステストの整合。

・保険業界全体で、財務の持続可能性と、手頃な価格と利用可用性を高める必要性のバランスを取ることを継続。

なお、APRAは、外部環境の変化に適応し、必要に応じてこれらの優先事項を調整し、規制する業界が新たに出現するリスクに引き続き対応できるようにする、としている。

「業界横断的な取組み」と「保険への取組み」の詳細な内容について、APRAのリストから、今後6カ月の政策の優先事項と監督の優先事項のみを抜粋すると、以下の図表の通りとなっている。
業界横断的な取り組み
保険への取り組み

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、PRAやAPRAの2024年における監督・規制上の優先事項について、報告してきた。

前回の保険年金フォーカスで報告したEIOPA(欧州保険年金監督局)の2024年の監督上のコンバージェンス計画における課題を含めて、今回のPRAやAPRAが掲げている課題の多くは、基本的には世界各国の保険業界に共通する課題であり、そのためグローバルレベルでのIAIS(保険監督者国際機構)においても、同様のトピックに関する検討が行われてきている。

これらの課題は、日本の保険会社にとっても極めて重要な課題であることから、これらの検討を巡る動向等については、今後も引き続き注視していくこととしたい。
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

(2024年02月13日「保険・年金フォーカス」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【PRA(英国)やAPRA(オーストラリア)が2024年の監督・政策上の優先事項等を公表】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

PRA(英国)やAPRA(オーストラリア)が2024年の監督・政策上の優先事項等を公表のレポート Topへ