2024年02月07日

中国経済の見通し-2024年は同+4.6%、25年は同+4.4%と段階的に減速

基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.323]

経済研究部 上席研究員 三尾 幸吉郎

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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1―中国経済の概況

中国国家統計局が1月17日に公表した2023年の経済成長率は、前年比+5.2%となり、「+5%前後」の成長率目標は達成された[図表1]。

 
[図表1]実質GDP成長率(四半期)
季節調整後の前期比から四半期毎の推移を振り返ると、1-3月期は+2.1%と、ゼロコロナ政策解除後の経済再開により加速したが、4-6月期には+0.6%と、リバウンドは早々に一服して景気の停滞感が強まった。7-9月期と10-12月期は、それぞれ+1.5%、+1.3%と、一段の悪化には歯止めがかかっている。

もっとも、回復の勢いは弱い。消費者物価(CPI)は低水準での推移を続けており、工業生産者出荷価格(PPI)は昨年10月以来15カ月連続でマイナス圏にある[図表2]。GDPデフレーター(GDPの名目伸び率-実質伸び率)も、第2四半期以降、マイナスが続いている。
[図表2]CPI・PPI

2―需要の動向

需要サイドからみると、2023年を通じて、内需(個人消費、投資)はいずれも力強さを欠き、外需は経済を下押しした[図表3]。
[図表3]小売・投資・輸出
まず、個人消費について、小売売上高の前年比伸び率の推移を見ると、夏場以降、緩やかながら持ち直している。しかし、10月以降に関しては、昨年のゼロコロナ規制の強化による落ち込みの反動があり、それを考慮すれば依然勢いは弱い。消費者信頼感指数をみると、雇用・所得の先行き、消費意欲ともに、2022年4月以降、マインドの強弱の境目である100を下回る状況が続いており、雇用・所得に対する先行き不安が消費を抑制していることがうかがえる。

投資について、固定資産投資の前年比伸び率の推移を見ると、製造業の設備投資は堅調に推移した一方、不動産開発投資は前年比で減少を続けており、不動産不況長期化の影響が顕著に表れている。景気下支えの役割を担うインフラ投資は、夏場以降勢いが弱まっている。

輸出に関しては、7月を底に持ち直しつつあるが、通年では前年比減となった。なお、輸入についても、輸出と同様、7月に底打ちしたが、通年では前年比減となっている。

3―産業の動向

産業サイドからみると、不動産業の低迷が続く1年であった。不動産販売面積は、2022年に続き2年連続で前年比減となった。政府は、夏場以降、不動産市場下支えの動きを強化しているが、持ち直しの兆しはみられず、経済腰折れのリスクとしてくすぶり続けている。

鉱工業については、年初来緩やかに回復基調にある[図表4]。在庫調整が進んでおり、設備稼働率が4-6月期以降上向きつつあるほか、企業業績も最悪期は脱している。ただし、総じて需要不足が根強いことから、PMIが10月以降、改善と悪化の境目である50を下回り続けるなど、景況感は依然停滞している。

サービス業については、昨年の反動で年初から5月にかけて高い伸びをみせた後、その影響がはく落した6月には伸びが低下したが、再び持ち直しつつある。もっとも、上述の小売売上高と同様、10月以降については昨年のゼロコロナ規制の影響を割り引くと、改善の動きは一進一退の状況だ。PMIは、11月から12月にかけて50を下回っている。
[図表4]工業・サービス業生産
こうした需要不足に起因する企業の景況感の停滞が、上述の雇用・所得、ひいては消費の改善の遅れにつながっており、経済が好転しづらい状況にある。

4―経済政策

経済政策に関しては、金融の緩和が先行的に進んだ。3月に預金準備率を、6月に政策金利(リバースレポ金利およびMLF(中期貸出ファシリティ)金利)を引き下げた後、8月に再び政策金利を引き下げ、それ以降は打ち止めとなっている。しかし、資金供給に関する指標[図表5]は、年初来弱含んでいる。実体経済に供給された資金量をみた社会融資総量は、10月以降伸びが加速しているが、地方債の発行加速による政策要因が強い。それ以外の資金については、資金需要不足等を背景に伸びが低下を続けている。
[図表5]M2・社会融資総量
財政政策に関して、インフラ投資は相対的に高い伸びを維持しているものの、夏場以降減速している。インフラ投資の財源のうち、特定プロジェクトに用いられる地方債の発行は9月時点で昨年並みの水準まで完了したが、地方政府による土地使用権売却収入が昨年来減少し続けており、資金制約がボトルネックになっている可能性がある。こうしたなか、23年10月に1兆元規模の特別国債増発が決定され、政府は財政による需要喚起に踏み出した。23年末から24年にかけて順次発行され、23年に多発した自然災害被害に関する復興支援や防災関連インフラ強化などに充てられることとなっている。

5―中国経済の見通し

今後の経済成長率については、4%台の潜在成長率前後で推移するだろう。24年が前年比+4.6%、25年が同+4.4%と予想している[図表6]。
[図表6]実質GDP成長率
24年に関しては、国債増発の効果が期待できる。地方財政悪化による下振れ懸念は残るものの、年初から少なくとも年央にかけて、インフラ投資の伸びが持ち直すと予想される。他方、不動産市場に関しては、政策対応が徐々に積極化しているが、それでもデベロッパーの資金繰りに対する消費者の不安は一朝一夕には払拭されないと考えられ、販売の低迷が続く可能性は高い。影響の度合いは23年に比べて弱まると考えられるものの、消費や投資などへの下押しが続くだろう。

25年に入ると、不動産販売が前年比増に転じる可能性があるが、デベロッパーの在庫処理圧力が依然残存していることが予想され、不動産開発投資は引き続き抑制されるとみている。また、24年に国債増発の効果で加速したインフラ投資が減速するだろう。加えて、デレバレッジの取り組みの軸足が、足元の不動産デベロッパーから地方政府債務へと移っていく可能性がある。これに伴い、地方政府融資平台向けの不良債権処理圧力が強まり、経済を下押しすることも考えられる。

6―注目点

24年から25年にかけては、不動産や地方財政といった経済の重石が残る見込みのなか、経済対策の効果によって、経済が自律的な回復力を取り戻すことができるか否かが注目点となるだろう。23年12月に開催された中央経済工作会議では、経済の安定を最優先するスタンスのもと、産業や消費の各領域で新たな成長の芽を増やし、育成していく考えが強調されている。インフラ投資による目先の需要下支えとあわせて、企業や家計のマインドをどの程度改善させることができるか、具体的な政策の中身を踏まえて注視していく必要がある。

リスクとしては、不動産市場や地方財政の悪化、中小金融機関の経営悪化等の国内金融リスクのほか、地政学リスクも挙げられる。

国内の金融リスクに関しては、中央経済工作会議で「システミックリスクの回避というボトムラインを断固として守る」とされ、金融リスク発生に対する危機感と、その回避に向けた意志が強調された。とくに目下最大の懸案である不動産市場について、安定化に向けて従来よりも踏み込んだ対応がとられるか否かが注目される。

地政学リスクに関しては、2024年、世界各国・地域で重要な選挙が行われる予定となっている。米国におけるトランプ氏再選による対中規制の急激な強化など、外的リスクが立ち現れる可能性がある。また、先進国のデリスキングは、選挙結果にかかわらず強まるとみられるが、新たにどのような規制が設けられるのか等、先行きは不透明であり、今後の動向には引き続き注視が必要だろう。
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経済研究部

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

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三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

(2024年02月07日「基礎研マンスリー」)

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