「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向-良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇 基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.315] | ニッセイ基礎研究所
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「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向-良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇
基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.315]
金融研究部 主任研究員 吉田 資
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1―はじめに
*1 「持家」かつ「3階建て以上の共同住宅」に居住する世帯
*2 2023年3月の平均価格は、「三田ガーデンヒルズ」(平均価格約4億円台)と「ワールドタワーレジデンス」(平均価格約2.5億円)が押し上げ、過去最高の1億4360万円となった。
2―新築マンション市場を取り巻く需給環境
不動産経済研究所によれば、首都圏の新築分譲マンションの新規供給戸数は、2005年の8.4万戸から2022年の2.9万戸へ約1/3の水準に大幅減少した。同様に、2022年の東京23区の新規供給戸数は1万797戸(2005年対比▲65%減少)となり、2005年以降で最も低い水準にとどまった。各マンションデベロッパーは市場環境をみながら慎重な供給姿勢を維持している。
建設物価調査会「建築費指数」によれば、東京の集合住宅(RC造)(2022年)の建築費は、「133.8」(前年比+8%)となり2005年対比で+35%上昇した。
国土交通省「建設労働需給調査」によれば、建設業の労働需給を示す「建設技能労働者過不足率」は、2011年以降、一貫してプラス(人手不足)で推移している。
「建設業」の就業者は他の産業と比較して若年層の割合が少なく高齢化が進行している。構造的な人手不足を背景に建築コストの上昇が続いており、新築マンションの供給戸数を押し下げる要因の1つとなっている。
土地総合研究所「不動産業業況等調査」によれば、「住宅・宅地分譲業」の「用地取得件数」の動向指数は、2013年以降マイナス(取得件数減少)で推移している。デベロッパーの開発用地の取得は低調な状況にある。
マンション開発適地がもともと限定的である東京23区ではマンション用地価格が高止まりするなか、今後も供給戸数が増えにくい状況が続くと考えられる。
リクルート住まいカンパニー「首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、首都圏における新築マンション購入者の世帯構成は、「夫婦のみの世帯」が最も多く、次いで「子供あり(第1子小学校入学前)世帯」となっている。
総務省「国勢調査」によれば、2020年の東京23区の「夫婦のみの世帯」は80.4万世帯で2005年対比+19%増加した。また、「夫婦と子供から成る世帯(6歳未満の子供あり)」も2020年に32.3万世帯となり2005年対比+27%増加した。これらの「夫婦世帯」と「夫婦と子供の世帯」の増加が、東京23区における新築マンションの需要を支えていると考えられる。
長期固定金利住宅ローンである「フラット35」の金利は、2005年から2008年にかけて2%前半から3%台へ上昇した後、低下に転じ、2016年には1%を下回る水準まで低下した。その後も概ね1%台前半で推移していたが、2022年に入りやや上昇している。
住宅金融支援機構「住宅ローン利用予定者調査」によれば、「今(今後1年程度)は、住宅取得の買い時だと思うか」という質問に対して、「買い時だと思う」との回答が「買い時とは思わない」との回答を、2021年10月調査まで上回る状況が続いていた。また、「買い時だと思う理由」として、「住宅ローン金利が低水準だから」との回答が最多を占める。このように、長期にわたる低金利がマンション購入資金の負担を軽減し、マンション購入を後押してきたことが確認できる。
3―「新築マンション価格指数」の作成
エリア別にみると、都心が「213.9」、南西部が「186.6」、東部が「179.0」、北部が「174.3」となり、都心のみ、東京23区(192.4)を上回る結果となった。また、「タワーマンション価格指数」は「220.6」となり、東京23 区を上回った。
人手不足に伴う建築コストの上昇やマンション用地価格の高止まりを背景に、マンションデベロッパーが慎重な供給姿勢を維持するなか、新築マンションの新規供給は長期的に減少傾向にある。一方、マンション居住の希望が高まり、主なマンション購入層である「夫婦のみの世帯」と「未就学児がいる夫婦世帯」の増加が続くなか、低金利環境がマンション購入を後押している。この結果、東京23区の新築マンション市場は良好な需給環境が継続しており、リーマンショック後の価格下落局面(2009年~2012年)を除いて、長期にわたり価格上昇が続いている。
ただし、足元の人口流入の鈍化や住宅ローン金利上昇が今後も継続すると、価格上昇を支えた良好な需給環境が悪化に転じる可能性がある。引き続き、価格動向や需給環境を中心に、新築マンション市場を注視する必要がありそうだ。
(2023年06月07日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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