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2023年05月09日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2022年決算数値等に基づく現状分析-
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4―まとめ
1|市場の選別化の動き
各社の自国以外の地域への事業展開の方針等は必ずしも一様ではない。各社毎に、重点を置く事業種類等も考慮した上で、地域選定等に特徴を有した形になっている。その中には、積極的に海外進出するだけでなく、一旦進出した地域からの事業撤退等を行い、高成長市場や自社の強みが生かせる市場等に資源を集中していくケースも含まれている。
2022年に入ってからの動きは、これまでの動きと比べて、比較的落ち着いたものとなっていた。2022年にはそれまでに合意を得ていた取引が正式に完了したケースがいくつか見られたが、新しい買収や売却については、それまでに比べると少なくなったとの印象を受けるものだった。これは、COVID19の影響も一定程度あるとは想定されるものの、欧州の大手保険会社が、これまでに先行的に必要な対応を進めてきた結果、既に一次的にはほぼ一定の戦略的対応が図られたことを意味しているものと想定される。
ただし、市場環境が急激に変化していく中で、市場の選別化の動きについては、今後も引き続き絶えることなく、状況に応じて行われていくことになるものと推測される。
各社の自国以外の地域への事業展開の方針等は必ずしも一様ではない。各社毎に、重点を置く事業種類等も考慮した上で、地域選定等に特徴を有した形になっている。その中には、積極的に海外進出するだけでなく、一旦進出した地域からの事業撤退等を行い、高成長市場や自社の強みが生かせる市場等に資源を集中していくケースも含まれている。
2022年に入ってからの動きは、これまでの動きと比べて、比較的落ち着いたものとなっていた。2022年にはそれまでに合意を得ていた取引が正式に完了したケースがいくつか見られたが、新しい買収や売却については、それまでに比べると少なくなったとの印象を受けるものだった。これは、COVID19の影響も一定程度あるとは想定されるものの、欧州の大手保険会社が、これまでに先行的に必要な対応を進めてきた結果、既に一次的にはほぼ一定の戦略的対応が図られたことを意味しているものと想定される。
ただし、市場環境が急激に変化していく中で、市場の選別化の動きについては、今後も引き続き絶えることなく、状況に応じて行われていくことになるものと推測される。
2|地域毎の展開スタンスや展開状況の違い
これまでの自国以外の保険先進国や新興国への進出を通じて、基本的には各社とも、自国以外での収益機会の拡大を目指してきており、実際にこれらの地域の多くで、着実に一定規模の収益を確保してきている。
(1) 欧州
まずは、EUの保険先進国においては、相互に参入しあって、お互いに有意な市場シェアの獲得にしのぎを削ってきている。ただし、これまでの経緯や各国の市場と特性等も反映して、各社ごとの特徴もみられ、各保険先進国での相互の進出状況も異なるものとなっている。さらには各社とも、近年は中東欧の新興国やトルコ等に積極的に注力してきていたが、これらについても、各社が特に注力する国については各社各様となっており、全ての会社が全ての国で一様に取り組んでいるわけではなく、既に市場撤退等の動きも見られている。
なお、ロシアにおいては、AXA、Allianz、Generali、Zurich等が保険事業の展開を行っていたが、その事業規模等は限定されていた。欧州大手保険グループは、2022年中に、新しい(再)保険契約の引受けを停止するとともに、ロシア事業の売却等を進めることで、ロシアからの事業撤退等を実施してきている。なお、併せて投資事業に関しても、各社ともロシアへの新規投資の停止や既存投資からの撤退等を公表し、実施してきている。
(2) 米国
米国においては、2019年にAXAがEquitableを売却して、米国の生命・貯蓄市場から撤退しているが、2021年にはPridentialが子会社のJackson Natioalを完全に分離している。その意味では、今回取り上げた欧州大手保険グループ7社の中では、米国の生命保険市場においては、Allianz、Aegon及びZurichの3社のみが一定のプレゼンスを有する子会社を引き続きグループの中に保持していることになった。
改めて、米国は、巨大な魅力的な市場ではあるが、競争の激しい市場であり、自社の強みを生かした分野で成長を目指していくことの重要性を再認識させられる状況になっている。
(3) アジア・太平洋
アジア・太平洋においては、欧州大手保険グループは、基本的には積極的に事業展開を進めることで、収益機会を拡大させてきている。
ただし、一口にアジア・太平洋とはいっても、各市場への取組みについては各社各様である。日本、韓国、台湾、オーストラリア等の生命保険が既に高水準で浸透している国・地域においては、撤退ないしはそもそも進出をしていないケースも多く、これらの国での欧州大手保険グループのプレゼンスは必ずしも高いものとはなっていない。これらの国では、既にローカルの保険会社のプレゼンスが一定程度確固たるものになっていることや、韓国等では昨今の低金利下での過去の逆ざや契約の存在等が、これらの地域での事業展開やその継続を判断していく上で影響を与えている形になっているものと推測される。
これに対して、東南アジア諸国に対しては、今後の高成長が見込める高いポテンシャルを有する市場として、各社とも高い優先順位を与えて積極的に取り組んできている。これらの国々では、欧州保険グループ各社やManulifeやSun Life等の北米の大手生命保険グループが進出して、一定の市場シェアを確保して、その地位を高めてきていた。ただし、近年は、厳しい競争環境下で所期の収益の確保が難しくなってきている等の理由から、こうした成長市場においても、市場によっては撤退を決断しているケースもいくつか見られており、事業の集中と選択がこのような成長市場においても必須になってきている状況が見てとれる。
一方で、中国やインドは、巨大なポテンシャルを有して、高い成長が見込める市場ではあるが、これまでの外資規制等の影響で、ローカルの国営等の保険会社が引き続き高い市場シェアを有している。これらの国では、外資規制の下で、外資系会社も、現地の企業との提携を進める中で、着実にその地位を築き上げてきてはいるものの、そのシェアは、東南アジア諸国における状況と比較すれば、いまだ低い水準にとどまっている。ただし、これらの国では、逐次外資規制等の緩和も行われてきていることから、各社ともこれらを絶好の機会と捉えて、市場シェアの拡大を目指していくことになるものと思われる。
なお、ミャンマーにおけるクーデターによる民主化から軍主導の政治への転換やスリランカにおける経済危機等、先のロシアも含めて、新興国等における事業展開においては、まさに政治・経済の状況変化によるカントリーリスクやこれらを背景にした監督当局による各種の規制方針の変化等に伴うリスク等も念頭に置いておく必要がある。
(4) 中南米
ブラジル、メキシコ等の中南米諸国についても、今後成長が期待できる市場として、欧州保険グループ各社は注目してきている。ただし、これらの地域では、引き続きローカルの保険会社のプレゼンスが高い上に、外資系の会社としては、むしろ米国やカナダの会社が相対的に高いプレゼンスを有しており、欧州の保険グループのプレゼンスはZurich等を除けば高いとはいえず、現時点でのグループ全体の財務面への影響もいまだ限定的な状況にある。
(5) アフリカ
アフリカについては、人口が増加しており、将来的には大きな成長が期待できる市場ではあるが、欧州大手保険グループの中では、AllianzやPrudentialが積極的な取組み姿勢を示してきていることに加えて、AXAが一定のプレゼンスを有している。南アフリカのようにローカルの保険会社が高い競争力を有して、発展している市場もあるが、いまだ未開拓の市場が数多くある中で、各社はアフリカ諸国の経済・社会の成長の動向を注視する中で、事業展開の機会を探っている状況にあるものと思われる。
これまでの自国以外の保険先進国や新興国への進出を通じて、基本的には各社とも、自国以外での収益機会の拡大を目指してきており、実際にこれらの地域の多くで、着実に一定規模の収益を確保してきている。
(1) 欧州
まずは、EUの保険先進国においては、相互に参入しあって、お互いに有意な市場シェアの獲得にしのぎを削ってきている。ただし、これまでの経緯や各国の市場と特性等も反映して、各社ごとの特徴もみられ、各保険先進国での相互の進出状況も異なるものとなっている。さらには各社とも、近年は中東欧の新興国やトルコ等に積極的に注力してきていたが、これらについても、各社が特に注力する国については各社各様となっており、全ての会社が全ての国で一様に取り組んでいるわけではなく、既に市場撤退等の動きも見られている。
なお、ロシアにおいては、AXA、Allianz、Generali、Zurich等が保険事業の展開を行っていたが、その事業規模等は限定されていた。欧州大手保険グループは、2022年中に、新しい(再)保険契約の引受けを停止するとともに、ロシア事業の売却等を進めることで、ロシアからの事業撤退等を実施してきている。なお、併せて投資事業に関しても、各社ともロシアへの新規投資の停止や既存投資からの撤退等を公表し、実施してきている。
(2) 米国
米国においては、2019年にAXAがEquitableを売却して、米国の生命・貯蓄市場から撤退しているが、2021年にはPridentialが子会社のJackson Natioalを完全に分離している。その意味では、今回取り上げた欧州大手保険グループ7社の中では、米国の生命保険市場においては、Allianz、Aegon及びZurichの3社のみが一定のプレゼンスを有する子会社を引き続きグループの中に保持していることになった。
改めて、米国は、巨大な魅力的な市場ではあるが、競争の激しい市場であり、自社の強みを生かした分野で成長を目指していくことの重要性を再認識させられる状況になっている。
(3) アジア・太平洋
アジア・太平洋においては、欧州大手保険グループは、基本的には積極的に事業展開を進めることで、収益機会を拡大させてきている。
ただし、一口にアジア・太平洋とはいっても、各市場への取組みについては各社各様である。日本、韓国、台湾、オーストラリア等の生命保険が既に高水準で浸透している国・地域においては、撤退ないしはそもそも進出をしていないケースも多く、これらの国での欧州大手保険グループのプレゼンスは必ずしも高いものとはなっていない。これらの国では、既にローカルの保険会社のプレゼンスが一定程度確固たるものになっていることや、韓国等では昨今の低金利下での過去の逆ざや契約の存在等が、これらの地域での事業展開やその継続を判断していく上で影響を与えている形になっているものと推測される。
これに対して、東南アジア諸国に対しては、今後の高成長が見込める高いポテンシャルを有する市場として、各社とも高い優先順位を与えて積極的に取り組んできている。これらの国々では、欧州保険グループ各社やManulifeやSun Life等の北米の大手生命保険グループが進出して、一定の市場シェアを確保して、その地位を高めてきていた。ただし、近年は、厳しい競争環境下で所期の収益の確保が難しくなってきている等の理由から、こうした成長市場においても、市場によっては撤退を決断しているケースもいくつか見られており、事業の集中と選択がこのような成長市場においても必須になってきている状況が見てとれる。
一方で、中国やインドは、巨大なポテンシャルを有して、高い成長が見込める市場ではあるが、これまでの外資規制等の影響で、ローカルの国営等の保険会社が引き続き高い市場シェアを有している。これらの国では、外資規制の下で、外資系会社も、現地の企業との提携を進める中で、着実にその地位を築き上げてきてはいるものの、そのシェアは、東南アジア諸国における状況と比較すれば、いまだ低い水準にとどまっている。ただし、これらの国では、逐次外資規制等の緩和も行われてきていることから、各社ともこれらを絶好の機会と捉えて、市場シェアの拡大を目指していくことになるものと思われる。
なお、ミャンマーにおけるクーデターによる民主化から軍主導の政治への転換やスリランカにおける経済危機等、先のロシアも含めて、新興国等における事業展開においては、まさに政治・経済の状況変化によるカントリーリスクやこれらを背景にした監督当局による各種の規制方針の変化等に伴うリスク等も念頭に置いておく必要がある。
(4) 中南米
ブラジル、メキシコ等の中南米諸国についても、今後成長が期待できる市場として、欧州保険グループ各社は注目してきている。ただし、これらの地域では、引き続きローカルの保険会社のプレゼンスが高い上に、外資系の会社としては、むしろ米国やカナダの会社が相対的に高いプレゼンスを有しており、欧州の保険グループのプレゼンスはZurich等を除けば高いとはいえず、現時点でのグループ全体の財務面への影響もいまだ限定的な状況にある。
(5) アフリカ
アフリカについては、人口が増加しており、将来的には大きな成長が期待できる市場ではあるが、欧州大手保険グループの中では、AllianzやPrudentialが積極的な取組み姿勢を示してきていることに加えて、AXAが一定のプレゼンスを有している。南アフリカのようにローカルの保険会社が高い競争力を有して、発展している市場もあるが、いまだ未開拓の市場が数多くある中で、各社はアフリカ諸国の経済・社会の成長の動向を注視する中で、事業展開の機会を探っている状況にあるものと思われる。
3|グローバル展開に伴うリスクの分散化や業績の安定性への寄与
前年からの地域別の進展率等については、各社毎の異なる地域展開の方針及び地域毎の市場環境の違い等を反映して、必ずしも一様ではない。ただし、これらを合算したグループ全体の数値は、分散効果も一定程度見られる中で、比較的安定した形になっている。
2020年においては、損害保険事業を中心に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が無視できないものとなっていたが、その影響の度合い等については、事業部門や地域等によって異なるものとなっていた。COVID-19の直接的な財務面への影響は、一部の特殊な状況下にあった国・地域等を除けば、2021年以降は一般的には比較的落ち着いたものとなっているが、保険金等の請求に関連しての課題等も残されており、引き続き一定程度の影響は残る形になっている。
昨今は、金融市場がグローバルベースで相互にリンクして、1つの地域での影響が他の地域に与える影響も大きくなってきており、それとの関連で保険会社の収益状況も地域毎に完全には独立しているとはいえない要素が高まってきている傾向もみられる。ただし、グローバル展開は基本的には各国独自の要素に基づく影響の程度を緩和し、安定化に寄与する意味合いを引き続き一定程度有していくものと思われる。
前年からの地域別の進展率等については、各社毎の異なる地域展開の方針及び地域毎の市場環境の違い等を反映して、必ずしも一様ではない。ただし、これらを合算したグループ全体の数値は、分散効果も一定程度見られる中で、比較的安定した形になっている。
2020年においては、損害保険事業を中心に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が無視できないものとなっていたが、その影響の度合い等については、事業部門や地域等によって異なるものとなっていた。COVID-19の直接的な財務面への影響は、一部の特殊な状況下にあった国・地域等を除けば、2021年以降は一般的には比較的落ち着いたものとなっているが、保険金等の請求に関連しての課題等も残されており、引き続き一定程度の影響は残る形になっている。
昨今は、金融市場がグローバルベースで相互にリンクして、1つの地域での影響が他の地域に与える影響も大きくなってきており、それとの関連で保険会社の収益状況も地域毎に完全には独立しているとはいえない要素が高まってきている傾向もみられる。ただし、グローバル展開は基本的には各国独自の要素に基づく影響の程度を緩和し、安定化に寄与する意味合いを引き続き一定程度有していくものと思われる。
日本の大手各社が公表している経営計画等によれば、今後海外事業からの収益を拡大していく方向性が示されてきている。この際、グループでのガバナンスやリスク管理、有効な資本政策のあり方等いろいろな意味で、欧州の大手保険グループの先行的な事例に学ぶべきことは多いものと考えられる。
ただし、欧州大手保険グループの海外事業戦略においては、一方的に事業地域の拡大を図るだけではなく、各国の保険市場の特性等を分析する中で、収益状況や成長可能性等を見極めながら、コア事業となりうるものに集中し、コアでない市場からは速やかに撤退する等の方針が明確に示されており、実際にその方針が実行されてきている。
単純な規模やプレゼンスの拡大を目指して、グローバル展開を進めるのではなく、自社の強みを十分に認識した上で適時適切な判断を行っていくことが求められてきている。既存保険会社の買収を通じて海外事業を展開していく場合においては、買収に伴うプレミアムに見合うリターンをいかに獲得していくのかについて、会社の方針・戦略をより一層明確化していくことが重要になってきているものと思われる。
また、海外事業展開を進めていく上では、買収先や出資先の会社の経営陣等の現地事業に精通した人材の確保に加えて、会社自体に、それぞれの国や地域の社会・文化的な状況等に応じて柔軟に対応できるコミュニケーション能力等を有するグローバルな人材をいかに育成していくのかということが重要な課題になってきている。
いずれにしても、海外のグループ会社を実効的に管理していくための堅固なグループガバナンス体制の構築等が喫緊の課題になってきている。
加えて、グローバルに事業展開を進めていく上では、国際的な保険資本規制や国際的な保険会計基準の適用への対応も問われてくることになる。日本と米国はともかくとして、欧州やアジア・太平洋地域においては、基本的にはこうしたグローバルな規制の動きに対応したローカルの規制の見直し等も行われてきている。
日本の生命保険会社は、こうした世界における監督規制の動向及びそれらを通じての日本の監督規制への影響も踏まえつつ、海外事業の積極的な展開に向けた戦略や体制を構築していくことが求められてきている。
以上、ここまで、2022年における欧州大手保険グループの海外事業展開の状況を報告するとともに、これらを踏まえての日本の生命保険会社にとっての示唆について考えてきた。
欧州大手保険グループは、ある意味、最も先駆的にこれらの課題に取り組んできていることから、今後もこうした会社の戦略や方針は、今後のグローバル展開を考えていく日本の生命保険会社にとって、いろいろな点で大変参考になるものがあると思われる。今後とも、その動向については引き続き注視していくこととしたい。
ただし、欧州大手保険グループの海外事業戦略においては、一方的に事業地域の拡大を図るだけではなく、各国の保険市場の特性等を分析する中で、収益状況や成長可能性等を見極めながら、コア事業となりうるものに集中し、コアでない市場からは速やかに撤退する等の方針が明確に示されており、実際にその方針が実行されてきている。
単純な規模やプレゼンスの拡大を目指して、グローバル展開を進めるのではなく、自社の強みを十分に認識した上で適時適切な判断を行っていくことが求められてきている。既存保険会社の買収を通じて海外事業を展開していく場合においては、買収に伴うプレミアムに見合うリターンをいかに獲得していくのかについて、会社の方針・戦略をより一層明確化していくことが重要になってきているものと思われる。
また、海外事業展開を進めていく上では、買収先や出資先の会社の経営陣等の現地事業に精通した人材の確保に加えて、会社自体に、それぞれの国や地域の社会・文化的な状況等に応じて柔軟に対応できるコミュニケーション能力等を有するグローバルな人材をいかに育成していくのかということが重要な課題になってきている。
いずれにしても、海外のグループ会社を実効的に管理していくための堅固なグループガバナンス体制の構築等が喫緊の課題になってきている。
加えて、グローバルに事業展開を進めていく上では、国際的な保険資本規制や国際的な保険会計基準の適用への対応も問われてくることになる。日本と米国はともかくとして、欧州やアジア・太平洋地域においては、基本的にはこうしたグローバルな規制の動きに対応したローカルの規制の見直し等も行われてきている。
日本の生命保険会社は、こうした世界における監督規制の動向及びそれらを通じての日本の監督規制への影響も踏まえつつ、海外事業の積極的な展開に向けた戦略や体制を構築していくことが求められてきている。
以上、ここまで、2022年における欧州大手保険グループの海外事業展開の状況を報告するとともに、これらを踏まえての日本の生命保険会社にとっての示唆について考えてきた。
欧州大手保険グループは、ある意味、最も先駆的にこれらの課題に取り組んできていることから、今後もこうした会社の戦略や方針は、今後のグローバル展開を考えていく日本の生命保険会社にとって、いろいろな点で大変参考になるものがあると思われる。今後とも、その動向については引き続き注視していくこととしたい。
(2023年05月09日「基礎研レポート」)
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