2023年05月08日

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公的年金の財政状況は、5年ごとの検証が法定されている。人口動態や労働情勢、物価変動、運用見通しなどが主な要素であり、2024年度の次回財政検証に向けた準備が少しずつ開始されている。当然のことだが、将来予測は容易でなく難航すると思われる。
 
新型コロナ感染症の影響を受けて、2020年の国勢調査に基づく将来推計人口はやや遅れて公表されるが、少子高齢化の加速が懸念される。労働情勢については、女性や高齢者の就業率が上昇しているものの、いずれも非正規雇用の比率が高いため、賃金を加味すると、生産年齢人口の減少による影響をカバーしきれない。
 
足元では物価上昇が顕著であり、マクロ経済スライドの実施は実質的な目減りに対する批判が後を絶たない。将来の物価上昇は給付額増に直結するが、受給者への給付を抑制しなければ、保険料を負担する現役世代の制度に対する不信感を強めるばかりである。
 
運用利回りの想定も容易ではない。これまでは積立金を取り崩す必要もなく、また、21年度までアベノミクス等の恩恵もあって、安定して高い利回りを獲得することが出来た。しかし、22年度以降は、国際情勢の変動や各国の金融政策の変化もあって、運用利回りの確保が容易ではない。更なる運用面での努力も必要だろう。
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(2023年05月08日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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