2023年04月11日

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2021年結果-

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2|給付額
総給付額(老齢化積立金(生命保険の責任準備金に相当)への繰入額や保険料返還を含む)の推移は、以下の図表の通りとなっている。以前は、老齢化積立金への繰入額の増加率が相対的に高かったが、ここ数年間は、高齢化の影響等もあり、老齢化積立金への繰入額の伸びは低くなってきている。なお、将来の保険料軽減等に使用されるための準備金であるRfB(Rückstellung für Beitragsrückerstattung)への繰入額は64億ユーロとなっている。
民間医療保険-給付額の内訳-
保険種類別では、医療費用保険(完全医療保険等)が全体の9割近くを占めているが、近年は介護保険の給付額の増加率が高くなっている。
民間医療保険-給付額の内訳(保険商品別) -
介護保険以外の医療保険の給付タイプ別のシェアでは、通院給付が5割弱で最も高く、入院給付が3割弱で続き、歯科治療給付は16.0%を占めている。
民間医療保険(長期介護保険以外)-給付額の内訳(給付タイプ別) -
直近で判明している2020年ベースの医療保険の給付額(老齢積立金繰入を含む)49,803百万ユーロは、生命保険・損害保険を含めた保険会社全体の給付額の約2割に相当しており、損害保険に近いシェアを占める形になっている。
民間保険会社における医療保険の位置付け(医療保険会社の給付額シェア)
(参考)医療保険普及率の国際比較
ドイツの民間医療保険の普及率を一人当たりの保険料及び対GDP保険料比率で見てみると、以下の図表の通りとなっている。

なお、これをEU(欧州連合)の加盟国間で、欧州保険業界団体のInsurance Europeの最新公表数値である2020年ベースで比較してみると、(1)保険密度を示す1人当たりの保険料は515ユーロで、オランダの3,111ユーロ、スイスの1,249ユーロ、ルクセンブルグの790ユーロに次いでおり、(2)普及率を示す対GDP保険料比率は約1.28%で、オランダの6.80%、スイスの1.64%、スロベニアの1.42%、フランスの1.30%に次いでいる。

医療保険の普及率等は、公的医療保険制度との役割分担が大きく影響しており、民間医療保険に大きく依存しているオランダやスイスが高いものとなっているが、ドイツもこれらに次ぐ国となっている。
民間医療保険-普及率の推移-

4―まとめ

4―まとめ

以上、ドイツにおける民間医療保険の普及状況について、基本的には2021年数値に基づいて報告してきた。

ドイツの民間医療保険は、公的医療保険制度の代替をその主たる機能としつつ、高まる医療保障ニーズに対応する観点から、補完及び補足的な機能を充実させることで、着実に保険料を増加させ、その位置付けを高めてきている。

次回のレポートでは、民間医療保険会社の市場シェア、経営効率及び財務面の状況について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年04月11日「保険・年金フォーカス」)

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