2023年04月04日

欧州大手保険グループの2022年末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(比率の推移分析と感応度の推移)-

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4|Aviva
Avivaは会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。

Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2022年末で13.69億ポンド)、職員年金制度(2022年末で3.94億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1) SCR比率の推移
2022年末のSCR比率は、、2021年末の244%から32%ポイント低下して、212%となった。

この要因については、以下の通りとなっている。

・資本形成や市場・為替により▲10%ポイント
・配当により▲10%ポイント
・債務返済等により▲7%ポイント

2021年末からのソルベンシー資本剰余の減少は、主として、株主への 37.5億ポンドの資本リターン(これがSCR比率を41%ポイント引き下げ)、2021年の最終配当と2022年の中間配当の支払い、負債の削減と 営業外による資本形成が、営業資本形成によって部分的に相殺されたことによる。営業外の資本形成は、主に金利の上昇と信用スプレッドの拡大による市場動向の影響が含まれており、資本剰余の減少にもかかわらず、SCR比率にプラスの影響を与えている。

なお、約5億ポンドの債務の償還(現在、劣後債務と優先債務の組み合わせを含むと想定)、従業員年金制度に関連する1億ポンドの支払い、3億ポンドの自社株買いと 2022 年の6億ポンドの最終配当を考慮したプロフォーマのソルベンシーⅡ比率は、2022年末時点で196%になるとしている。
AvivaのSCR比率推移の要因(会社ベース)
Avivaの自己資本とSCR等の推移の要因
(2) 感応度の推移
2021年末から2022年末にかけての感応度の変化については、事業の売却等によるポートフォリオの変更が落ち着いたこともあり、過去の年末間の変化に比べて、比較的安定したものだったが、例えば金利に対する感応度は低下している。

なお、長寿リスクに対応した、年金死亡率の5%低下による影響は引き続き大きいものの12%ポイントに低下している。
Avivaの感応度の推移
Avivaは、感応度分析に関して、以下の補足説明を行っている。

(参考)感応度分析の限界
上記の表は、主要な仮定を瞬時に変更した場合の影響を示しており、他の仮定は変更されていない。実際には、仮定と他の要因の間には相関関係がある。これらの感応度は非線形であり、これらの結果からより大きな又はより小さな影響を内挿又は外挿してはならない。

感応度分析では、グループの資産と負債が積極的に管理されていることは考慮されていない。さらに、グループのソルベンシーIIのポジションは、実際の市場の動きが発生した時点で異なる場合がある。例えば、グループの財務リスク管理戦略は、市場変動へのエクスポージャーを管理することを目的としている。

投資市場が様々なトリガーレベルを超えて移動するにつれて、経営行動には、投資の売却、投資ポートフォリオの割当ての変更、保険契約者にクレジットされる配当の調整及びその他の保護行動の実行が含まれる可能性がある。

上記の感応度分析におけるその他の制限には、確実に予測することはできない近い将来の市場の変化の可能性に関するグループの見解を示している潜在的なリスクを示すための仮説的な市場の動きの使用及び全てのパラメーターが同じように動くという仮定が含まれる。

具体的には、

・感応度分析では、全ての期間で金利が平行移動すると仮定している。これらの結果は、平行でない金利の 動きの影響を計算するために使用されるべきではない。

・感応度分析は、全ての市場で同等の仮定の変化を前提としている。つまり、英国と英国以外の利回り曲線が同じ量だけ移動し、世界中の株式市場が同じように上昇または下落する。
さらに、Aviva が保有する資産によって観察される動きは市場指数と同一ではないため、観察された指数の動きに感応度を適用する際には注意が必要となる。
5|Aegon    
(1) SCR比率の推移
2022年末のSCR比率は、2021年末の211%から3%ポイント低下して、208%となった。

これは、主にマイナスの市場の影響、(2023 年上半期に実行される2億ユーロの買い戻しを含む)自社株買い、配当、及び a.s.r.(オランダの保険グループ) との取引に関連した想定される税ポジションの決済に関連した税チャージ、による。これらの影響は、営業資本の形成と売却を含む経営行動によって大部分が相殺された。

なお、Aegonは、SCRの変動要因について、2022年第3四半期までは四半期ごとの分析結果を開示してきていたが、2022年第4四半期の分析結果は公表されていないので、結果数値のみを示しておく。
AegonのSCR比率推移の要因
Aegonの自己資本とSCRの推移の要因
(参考)地域別のソルベンシー比率
地域別のソルベンシー比率は、以下の図表の通りとなっている。

・オランダのNL LifeのソルベンシーII比率は、2021年末の186%から2022年末に210%に増加した。この増加は、繰延税金の損失吸収能力(LAC-DT)を計算する際に適用される係数が高くなったことによる好影響など、モデルや前提条件の変更によるプラスの影響を反映している。また、金利上昇の中で流動性ポジションを保護するための債券投資の売却を含め、必要資本が減少したことも好影響をもたらした。市場の動きは不利に寄与し、住宅ローンのスプレッド拡大の影響を含んでいる。営業資本の形成は、Holdingへの送金の影響を相殺している。

・英国のScottish Equitable PlcのソルベンシーII比率は、2021年末の167%から2022年末に169%に増加した。この増加には、市場の動きによるプラスの影響が含まれており、必要資本が減少した一方で、モデルと前提の更新による悪影響があった。営業資本の形成は、支払われた送金の影響を相殺する以上のものがあった。

・米国のRBC比率は、2021年末の426%から2022年末に428%に2%ポイント上昇した。市場分散(主に株式分散のマイナス)と送金による悪影響は、強力な資本形成と一時的項目によって一部相殺された。なお、再保険取引を通じてのTLB(Transamerica Life Bermuda)株式の利用可能資本としての認識や米国変額年金ポートフォリオに対する任意準備金の設定が行われている。
Aegonの地域別ソルベンシー比率/Aegonの地域別ソルベンシー比率(目標範囲)
(2) 感応度の推移
感応度は、基本的には2021年末と大きくは変わっていない。ただし、2019年末から2021年末にかけて大きく低下していた株式市場に対する感応度は、米国変額年金ポートフォリオに対する任意準備金の設定等により、株式市場+25%の影響が、2021年末の+2ptsからさらに低下して+0ptsとなり、株式市場▲25%の影響が、2021年末の▲8ptsからさらに低下して▲4ptsとなった。

なお、AegonはVA(ボラティリティ調整)やUFRに対する感応度も示している。

米国信用デフォールトの200bps引き下げによる影響が▲18%ポイントと大きなものとなっている。また、長寿リスクに対応した、年金死亡率の5%低下による影響は▲3%ポイントに低下している。これは、長寿リスクに対するエクスポージャーが、米国の長期介護事業における保険料不足準備金のさらなる積立等の様々な商品ラインでの金利の上昇と準備金の強化により、2021年から減少していることによる。
Aegonの感応度の推移
なお、感応度の算出に関して、以下の説明がなされている。

感応度は、想定される格付けの移行を含む米国のクレジットデフォルトショックを除いて、単一のショックを反映しており、他の要素は変更されていない。

現実の市場への影響(例えば、金利の低下や株式市場の下落)が同時に発生する可能性があり、それはより深刻な複合的な影響につながる可能性があり、表に示されている個々の感応度の合計と等しくない場合がある。感応度は、繰延税金資産(DTA)の許容を前提としている。特定の不利なシナリオの下で、該当する場合、DTAの一部が認められなくなる可能性がある。これにより、公開されている感応度に比べて感応度が高くなるが、DTAは時間の経過とともに回復可能である。米国のRBC比率では、2022年第4四半期において DTA の一部が許容されなかった。

なお、Aegonは、これらの感応度をグループ全体だけでなく、地域別にも開示しており、さらにはそれらの要因等について、Annual Reportで詳しく説明している。
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中村 亮一

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