2023年04月05日

社会資本としての子供と子育ての財源

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歴史を振り返ると、狩猟・採集社会では無論、農耕社会においても子供は資本財であった。いずれ働いて家計を助けると期待された。ところが工業化が進展し、労働の場と家庭が分かれると、労働力としての経済的見返りは求められなくなった。
 
しかし、社会全体では依然として、子供は経済的な見返りをもたらす資本財である。人口が増えれば需要・供給両面から経済成長をもたらす。加えて成人後の保険料負担は公的年金など、特に高齢化社会での社会保険の大きな支えとなる。所得税や住民税、消費税などの税収においても財政に貢献する。1月の所信表明演説において、岸田首相が「子育ては未来への投資だ」としたのも、この文脈からと理解したい。
 
財政法4条では、公共投資など将来世代にも便益を生み出す使途に充てる国債を建設国債として、財政赤字禁止の例外としている。将来にプラスの経済効果をもたらす点では、子育てのための支出も同じ性格を持つ。したがって出生率向上のため、本当に効果のある政策を立案し、その財源として「こども国債」を発行することも一案ではないだろうか。子供が社会資本だとすれば、誰の子であっても、社会が親と協働して子育てに取り組むべきであろう。

(2023年04月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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