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2022年09月16日
欧州大手保険グループの2022年上期末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(比率の推移分析と感応度の推移)-
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(参考)地域別のソルベンシー比率
地域別のソルベンシー比率は、以下の図表の通りとなっている。
・オランダのソルベンシーII比率は、SCRが債券投資の削減とモデルの洗練化により減少し、高金利やスプレッドの拡大等の市場の変動やUFRの引き下げ等の要因により、2021年末に比べて14%ポイント増加して、200%となった。
・英国のソルベンシーII比率は、強い営業利益と市場の変動の結果によるSCRの低下により、2021年末に比べて、11%ポイント上昇して178%となった。
・米国のRBC比率は、インデックスユニバーサルライフの準備金のモデリングの更新等の経営行動によるプラス要因があったものの、キャプティブ再保険会社からの負債の再取得等の相殺要因があり、さらに株式市場の低迷の結果としての市場の変動からのマイナスの影響により、426%から416%へと10%ポイント低下した。なお、米国保険会社のRBC比率のソルベンシーII比率への換算については、毎年見直し、DNB(オランダ中央銀行)の了解を得ているが、2022年上期末のRBC比率416%はソルベンシーII比率219%に相当していると報告されている。
地域別のソルベンシー比率は、以下の図表の通りとなっている。
・オランダのソルベンシーII比率は、SCRが債券投資の削減とモデルの洗練化により減少し、高金利やスプレッドの拡大等の市場の変動やUFRの引き下げ等の要因により、2021年末に比べて14%ポイント増加して、200%となった。
・英国のソルベンシーII比率は、強い営業利益と市場の変動の結果によるSCRの低下により、2021年末に比べて、11%ポイント上昇して178%となった。
・米国のRBC比率は、インデックスユニバーサルライフの準備金のモデリングの更新等の経営行動によるプラス要因があったものの、キャプティブ再保険会社からの負債の再取得等の相殺要因があり、さらに株式市場の低迷の結果としての市場の変動からのマイナスの影響により、426%から416%へと10%ポイント低下した。なお、米国保険会社のRBC比率のソルベンシーII比率への換算については、毎年見直し、DNB(オランダ中央銀行)の了解を得ているが、2022年上期末のRBC比率416%はソルベンシーII比率219%に相当していると報告されている。
Aegonは、これらの感応度をグループ全体だけでなく、地域別にも開示しており、さらにはそれらの要因等について、Annual Report等で詳しく説明している。
6|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、ソルベンシーIIと同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。
ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMAと合意した内部モデルで算出している。
(1)SST比率の推移
2022年上期末のSST比率は、以下の要因により、2021年末の212%から、50%ポイントと大きく上昇して、262%となった。目標の160%超を大きく上回っている。
・成長のための増分資本を差し引いた営業資本形成により、+16%ポイント
・金利や市場変動等の市場の影響で+46%ポイント(うち、金利の上昇で+48%ポイント、信用スプレッドで▲9%ポイント、為替で+2%ポイント等)
・配当支払等の資本行動で▲16%ポイント
なお、以下のコメントがなされている。
・この比率は7月に解消されたマクロヘッジの一時的な利益を反映しているが、これにより予想されるマイナスの影響は約10%ポイント。
・18億スイスフランの自社株買戻しは考慮されていない。これにより、プロフォーマベースで SST比率が最大11%ポイント低下する。
・同様に、2022年後半と2023年にそれぞれ完了する予定のイタリアとドイツのバックブックの売却については考慮されていない。
・2022年上半期におけるSST適格債務の発行と返済には、10億米ドルの永久資本債の償還と、3億スイスフランの劣後債の発行が含まれる。
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、ソルベンシーIIと同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。
ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMAと合意した内部モデルで算出している。
(1)SST比率の推移
2022年上期末のSST比率は、以下の要因により、2021年末の212%から、50%ポイントと大きく上昇して、262%となった。目標の160%超を大きく上回っている。
・成長のための増分資本を差し引いた営業資本形成により、+16%ポイント
・金利や市場変動等の市場の影響で+46%ポイント(うち、金利の上昇で+48%ポイント、信用スプレッドで▲9%ポイント、為替で+2%ポイント等)
・配当支払等の資本行動で▲16%ポイント
なお、以下のコメントがなされている。
・この比率は7月に解消されたマクロヘッジの一時的な利益を反映しているが、これにより予想されるマイナスの影響は約10%ポイント。
・18億スイスフランの自社株買戻しは考慮されていない。これにより、プロフォーマベースで SST比率が最大11%ポイント低下する。
・同様に、2022年後半と2023年にそれぞれ完了する予定のイタリアとドイツのバックブックの売却については考慮されていない。
・2022年上半期におけるSST適格債務の発行と返済には、10億米ドルの永久資本債の償還と、3億スイスフランの劣後債の発行が含まれる。
3―まとめ
以上、各社のプレス・リリース資料等に基づいて、欧州大手保険グループの2022年上期末におけるSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告してきた。
2016年1月1日に新たなソルベンシー制度であるソルベンシーIIがスタートして、6年半が経過した。この間、各社は自社の考え方をベースとしつつも、新たなソルベンシー制度に適切に対応すべく、各社各様の方策で各種の対応を行ってきている。
次回のレポートでは、資本管理に関係する取引等のトピックについて報告する。
2016年1月1日に新たなソルベンシー制度であるソルベンシーIIがスタートして、6年半が経過した。この間、各社は自社の考え方をベースとしつつも、新たなソルベンシー制度に適切に対応すべく、各社各様の方策で各種の対応を行ってきている。
次回のレポートでは、資本管理に関係する取引等のトピックについて報告する。
(2022年09月16日「保険・年金フォーカス」)
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