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2022年09月16日
欧州大手保険グループの2022年上期末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(比率の推移分析と感応度の推移)-
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1―はじめに
欧州大手保険グループの2022年上半期決算発表に伴い、ソルベンシーII制度に基づく各種数値等が開示されている。
前回のレポートでは、欧州大手保険グループのSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告したが、今回のレポートでは、各社のSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告する。
前回のレポートでは、欧州大手保険グループのSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告したが、今回のレポートでは、各社のSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告する。
2―各社のSCR比率や感応度の推移
各社とも、2016年1月からのソルベンシーII制度の実施に向けて、SCR比率の充実や感応度の抑制に向けた対応を行ってきていたが、2016年以降も、着実に営業利益を積み上げることに加えて、劣後債の発行等で資本の充実を図ってきている。
なお、以下のSCR比率の推移の要因分解は、各社の公表資料に基づいているが、例えば「経営行動(management action)」に何を含めるのか等が、必ずしも統一されているわけではない。さらには、感応度の対象内容やシナリオも各社各様である1。加えて、要因分解に関する情報提供が行われている時期や感応度の対象時期も必ずしも統一されておらず、各社の考え方に基づいている。
1 現在行われているソルベンシーIIのレビューの中で、「感応度に関する情報の標準化」が提案されている。これについては、保険年金フォーカス「EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関する意見をECに提出(4)-助言内容(報告と開示)-」(2021.2.3)を参照のこと。
なお、以下のSCR比率の推移の要因分解は、各社の公表資料に基づいているが、例えば「経営行動(management action)」に何を含めるのか等が、必ずしも統一されているわけではない。さらには、感応度の対象内容やシナリオも各社各様である1。加えて、要因分解に関する情報提供が行われている時期や感応度の対象時期も必ずしも統一されておらず、各社の考え方に基づいている。
1 現在行われているソルベンシーIIのレビューの中で、「感応度に関する情報の標準化」が提案されている。これについては、保険年金フォーカス「EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関する意見をECに提出(4)-助言内容(報告と開示)-」(2021.2.3)を参照のこと。
2|Allianz
(1)SCR比率の推移
2022年上期末のSCR比率は、2021年末の209%から9%ポイント低下して、200%となった(なお、技術的準備金に関する移行措置を適用した場合、227%になる)。
この要因については、以下の通りとなっている。
・営業利益による資本形成とビジネス進展による影響が+14%ポイント(税及び配当控除後で+4%ポイント)
・規制・モデルの変更による影響は▲1%ポイントで、これはUFRが3.60%から3.45%に引き下げられたことによる。
・市場による影響は▲11%ポイントで、高金利によるプラス効果で一部相殺されたものの、主としてより高金利による変動性の高まり、インフレーション、株式市場の低迷、ロシアとウクライナの投資の市場価値の低下、トルコの格付けの引き下げというマイナス効果の影響が大きいことによる。
・経営行動及び資本管理の影響は▲4%ポイントで、このうち、劣後債の発行(12.5億ユーロ)によるプラス効果はあったものの、配当(▲17億ユーロ)と自社株買い(▲10億ユーロ)の影響による。
・Allianz GI U.S. Structured Alphaに対する19億ユーロの引当金2による影響(移転制限のためグループ自己資本における税効果は相殺せず)が▲7%ポイント
将来の見通しについて、第3四半期で規制変更により、約▲3%ポイントが見込まれるものの、2022年には税と配当差引後で10%ptsの資本形成が想定されている。
(1)SCR比率の推移
2022年上期末のSCR比率は、2021年末の209%から9%ポイント低下して、200%となった(なお、技術的準備金に関する移行措置を適用した場合、227%になる)。
この要因については、以下の通りとなっている。
・営業利益による資本形成とビジネス進展による影響が+14%ポイント(税及び配当控除後で+4%ポイント)
・規制・モデルの変更による影響は▲1%ポイントで、これはUFRが3.60%から3.45%に引き下げられたことによる。
・市場による影響は▲11%ポイントで、高金利によるプラス効果で一部相殺されたものの、主としてより高金利による変動性の高まり、インフレーション、株式市場の低迷、ロシアとウクライナの投資の市場価値の低下、トルコの格付けの引き下げというマイナス効果の影響が大きいことによる。
・経営行動及び資本管理の影響は▲4%ポイントで、このうち、劣後債の発行(12.5億ユーロ)によるプラス効果はあったものの、配当(▲17億ユーロ)と自社株買い(▲10億ユーロ)の影響による。
・Allianz GI U.S. Structured Alphaに対する19億ユーロの引当金2による影響(移転制限のためグループ自己資本における税効果は相殺せず)が▲7%ポイント
将来の見通しについて、第3四半期で規制変更により、約▲3%ポイントが見込まれるものの、2022年には税と配当差引後で10%ptsの資本形成が想定されている。
2 COVID-19関連の市場の低迷期にAllianz GI U.S. Structured Alpha の投資家が被った損失に関して、米国裁判所に提出された複数の訴状に関連して、Allianzは2021 年第4四半期に 37億ユーロの引当金を認識し、2022 年第1四半期に19億ユーロの追加引当金を計上している。2022年6月30日現在、引当金の大部分は、ファンドの投資家との和解及び米国当局への支払いのために既に支払われている。
3|Generali
(1)SCR比率の推移
2022年上期末のSCR比率は、、2021年末の227%から6%ポイント上昇して、233%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・営業利益の計上による資本形成(生命保険新契約の収益性のさらなる向上と損害保険セグメントの強固な結果)で+9%ポイント
・好調な市場変動(株式市場の低下、スプレッドの拡大、ボラティリティの増大やインフレーションというマイナス要因を上回るレベルの金利の上昇によるプラス効果)で+8%ポイント
・規制変更等(UFRの▲15bpの引き下げ等)により▲1%ポイント
・M&Aで▲4%ポイント
・配当等の資本移動で▲6%ポイント
(1)SCR比率の推移
2022年上期末のSCR比率は、、2021年末の227%から6%ポイント上昇して、233%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・営業利益の計上による資本形成(生命保険新契約の収益性のさらなる向上と損害保険セグメントの強固な結果)で+9%ポイント
・好調な市場変動(株式市場の低下、スプレッドの拡大、ボラティリティの増大やインフレーションというマイナス要因を上回るレベルの金利の上昇によるプラス効果)で+8%ポイント
・規制変更等(UFRの▲15bpの引き下げ等)により▲1%ポイント
・M&Aで▲4%ポイント
・配当等の資本移動で▲6%ポイント
4|Aviva
Avivaは会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド2022年6月末で17億ポンド(2021年末で22億ポンド)、職員年金制度2022年6月末で10億ポンド(2021年末で12億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1)SCR比率の推移
2022年上期末のSCR比率は、、2021年末の244%から10%ポイント低下して、234%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・資本形成や市場・為替により+7%ポイント
・配当により▲6%ポイント
・債務返済等により▲2%ポイント
・その他による影響で▲9%ポイント(うち、37.5億ユーロの自己株買いの影響が▲41%ポイント)
SCRは、主として金利の上昇に伴う様々なリスク算出における割引率への影響により、2021年末の91億ポンドから14億ポンド減少して、2022年上期末には77億ポンドになった。
Avivaは会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド2022年6月末で17億ポンド(2021年末で22億ポンド)、職員年金制度2022年6月末で10億ポンド(2021年末で12億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1)SCR比率の推移
2022年上期末のSCR比率は、、2021年末の244%から10%ポイント低下して、234%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・資本形成や市場・為替により+7%ポイント
・配当により▲6%ポイント
・債務返済等により▲2%ポイント
・その他による影響で▲9%ポイント(うち、37.5億ユーロの自己株買いの影響が▲41%ポイント)
SCRは、主として金利の上昇に伴う様々なリスク算出における割引率への影響により、2021年末の91億ポンドから14億ポンド減少して、2022年上期末には77億ポンドになった。
(2)感応度の推移
感応度については、2021年末から2022年上期末にかけては、大きな変化はなかった。
なお、社債スプレッド+100bpsの感応度の水準は、2019年末から2020年末にかけて、ヘッジ、資産配分の変更及び社債スプレッド感応度手法の改善により、マイナスからプラスへと大きく変化したが、2021年末においては、売却事業体が社債スプレッド拡大に悪影響を受けていたのに対して、グループ全体では社債スプレッド縮小に悪影響を受けていたことを反映して、さらにプラスの水準が大きく増加している。また、多く市場での追加のヘッジとリスク軽減により、株式に対する感応度が低下している。
なお、長寿リスクに対応した、年金死亡率の5%低下による影響が16%ポイントと大きなものとなっている。
感応度については、2021年末から2022年上期末にかけては、大きな変化はなかった。
なお、社債スプレッド+100bpsの感応度の水準は、2019年末から2020年末にかけて、ヘッジ、資産配分の変更及び社債スプレッド感応度手法の改善により、マイナスからプラスへと大きく変化したが、2021年末においては、売却事業体が社債スプレッド拡大に悪影響を受けていたのに対して、グループ全体では社債スプレッド縮小に悪影響を受けていたことを反映して、さらにプラスの水準が大きく増加している。また、多く市場での追加のヘッジとリスク軽減により、株式に対する感応度が低下している。
なお、長寿リスクに対応した、年金死亡率の5%低下による影響が16%ポイントと大きなものとなっている。
(2022年09月16日「保険・年金フォーカス」)
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