コラム
2022年08月08日

三親等内の親族とは-(1)配偶者の兄弟姉妹の配偶者、(2)配偶者のおじ・おばの配偶者、(3)子の配偶者の父母、等は民法上の親族ではない-

中村 亮一

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はじめに

個人的なことだが、6年前に父を亡くし、1年半前には母を亡くしたことから、数年前から長男の私が家を代表する形で、親戚関係の各種行事の参加等の対応を行う形になっている。両親の世代は兄弟姉妹の人数も多く、また第2次世界大戦後を生き抜いてこられた方々であることから、皆さん長寿を享受しており、おじ・おばやその配偶者の方々は80歳代後半から90歳代前半になっている。ただし、さすがに年齢が年齢だけに、近年は亡くなられる方も複数名おられる状況にある。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大しているときには、参列者に高齢者が多い中で、東京からの法事(通夜や告別式、四十九日法要、初盆、一周忌法要等)の出席は憚られるということで控えざるを得なかったが、特に母が亡くなってからは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が落ち着きをみせてきていることもあって、出席を控える必要性も低下したと判断して、またこれまでの付き合いや両親が亡くなった時にいろいろとお世話になった関係から、地元の浜松で開催される法事には(当然のことではあるが)必ず出席している。このため、この1年半はほぼ月1回のペースで帰省する形になっている。これにより、改めて、親戚付き合いの大切さとその存在の有難さを感じる機会となっている。

さて、法事出席のため会社を休む場合には、「忌引き休暇」を取得することになるのだが、この「忌引き休暇」の規定に、対象となる親族として、「三親等内の親族」という表現がみられたりする(「忌引き休暇」の制度は、法定でもないので、会社によって異なり、そもそも制度が無かったり、例えば「2親等以内の親族」しか認めていないケース等もある)。

それでは、「三親等内の親族」というのは、具体的にはどの範囲の人々を指しているのだろうか。今回はこうした内容について調べてみた。

「三親等内の親族」が現れるケース

「三親等内の親族」という表現については、契約上の書類等で時々見かけることがあるのではないかと思われる。例えば、保険契約の約款では、指定代理請求人(被保険者本人に「特別な事情」がある場合、契約者があらかじめ指定した代理人で、被保険者に代わって、保険金等を請求できる人)として認められる範囲には、「被保険者と同居し、または、被保険者と生計を一にしている被保険者の三親等内の親族」が含められる、と規定している。

さらには、より一般的な法律において、例えば、民法第877条第2項では、特別の事情があるときには「三親等内の親族」も扶養義務を負わせることができる旨規定している。また、民法第734条(近親者間の婚姻の禁止)は、「直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。」と定めている。一方で、民法第7条等では、成年後見人の申立人になれるのは、「四親等内の親族」等と規定されている。

民法の「親族」の定義

民法第725条(親族の範囲)によれば、「親族」は、次に掲げるものとされている。

一  六親等内の血族
二  配偶者
三  三親等内の姻族

ここで、「血族」、「姻族」、「親等」の定義等については、以下の通りとなっている。

「血族」と「姻族」

血族」というのは、自分と血縁関係のあるもの1ということになるが、これには「直系」と「傍系」、あるいは「尊属」と「卑属」という概念がある。「直系」は、世代の上下にまっすぐつながる系統であり、「傍系」は兄弟姉妹によって枝分かれした系統、「尊属」は自分よりも上の世代、「卑属」は自分よりも下の世代、ということになる。

具体的には、例えば以下の通りとなる。

直系尊属:父母、祖父母、曾祖父母、高祖父母等
傍系尊属:伯叔父母、従伯叔父母、伯叔祖父母等
直系卑属:子、孫、曾孫(ひまご)、玄孫(やしゃご)等
傍系卑属:甥・姪、従甥姪等

一方で、「姻族」というのは、婚姻関係によって発生する親族であり、「配偶者の血族」又は「血族の配偶者」を指している。これにより、例えば、配偶者の血族の配偶者や血族の配偶者の親族等は、姻族に含まれない。
 
1 これには、いわゆる生物学上の血のつながりを有する「自然血族」と養子縁組による「法定血族」がある。また、半血兄弟姉妹(異父兄弟姉妹、異母兄弟姉妹)も血族となる。

「親等」の数え方

親等は「自分や配偶者」を0(親等)として、親世代や子ども世代を介するごとに数字が1つずつ大きくなる。即ち、近い親族であるほど数字が小さく、遠い親族になるほど数字が大きくなる。

民法第726条(親等の計算)によれば、

1.親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2.傍系親族の親等を定めるには、その1人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の1人に下るまでの世代数による。

となっている。

具体的には、例えば以下の通りとなる。

1親等:父母、子
2親等:祖父母、孫、兄弟姉妹
三親等:曾祖父母、曾孫、伯叔父母、甥姪
4親等:高祖父母、玄孫、従兄弟姉妹(いとこ)、曽祖父母の兄弟姉妹(大おじ・大おば)
5親等:従甥姪(いとこの子)、父母の従兄弟姉妹(いとこちがい、大おじ・大おばの子)
6親等:祖父母の兄弟姉妹の孫(はとこ、またいとこ、ふたいとこ)

一方で、先の民法の規定が示しているように、親等の計算において、同一の子孫に下って、そこから遡るという考え方はない。従って、例えば「子の配偶者の父母」は、形式的には二親等と思われるかもしれないが、民法上は「親等なし」ということになる。「子の配偶者の父母」は、先に述べたように姻族でもなく、自分にとっての親族ではない。

さて、民法上の「親族」とは

以上により、民法上の「親族」のうちの「三親等内の親族」(即ち、民法第725条のうちの、「一  六親等内の血族」のうちの「三親等内の血族」及び「二  配偶者」、「三  三親等内の姻族」)は、以下の図表の通りとなる。

即ち、「三親等以内の親族」とは、自分(本人)又は配偶者から見て、先に述べた三親等内の方々に、自分の血族の場合にはその方々の配偶者、も含まれることになる。

一方で、この図表が示すように、「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」や「配偶者のおじ・おばの配偶者」は、自分から見てみると「姻族の姻族」(婚姻関係が2回関わっている)になることから、民法上の「親族」には該当しないということになる。確かに、一般的には、配偶者の兄弟姉妹の配偶者や配偶者のおじ・おばの配偶者との関りは、自分の兄弟姉妹の配偶者やおじ・おばの配偶者と比べると薄いものになっているものと思われる。特にお世話になっていた人以外については、必ずしもお付き合いがないというのが通常だと思われる。

さらには、繰り返しになるが、「子の配偶者の父母」、さらには「子の配偶者の兄弟姉妹」、「孫の配偶者の父母」は、機械的な親等の計算方式から、それぞれ二親等、三親等、三親等に該当すると思われるかもしれないが、これらの方々は、民法上は、姻族でもなく、従って親族ではなく、「親等もなし」ということになる。「子の配偶者の父母」との関係は、子にとって極めて重要なものであることから、親である自分も結構な付き合いをすることも多いと思われるが、この点は十分に認識しておく必要がある。当然のことながら。子と自分は別人格であり、その親族の範囲も異なっている。
三親等の親族
さて、上記の図表はあくまでも代表的なケースを示しているが、親族関係を考える上では、例えば以下のようなケースがあることにも留意しておく必要がある。

(1) 本人が養子の場合、養父母やその実子である兄弟姉妹との関係は上記と同様に親族になるが、養子縁組後の親族と養子の実の親族は親族にならない。また、養子縁組後の養子の子は養子縁組後の養子の親族と親族になるが、養子縁組前の養子の子は養子縁組後の養子の親族と親族にならない。

(2) 養子に出た子と実父母との関係は、普通養子縁組の場合には親族だが、特別養子縁組の場合は親族でなくなる。

(3) 配偶者と離婚した場合には、配偶者の血族との姻族関係も終了する。配偶者が死別した場合には、姻族関係が自然に終了するわけではなく、終了させるには本人の意思として、姻族関係終了届を提出する必要がある。なお、離婚した両親と子の関係は(親権の有無に関わらず)変わらず1親等の親族のままである。

(4) 半血兄弟姉妹(異父兄弟姉妹、異母兄弟姉妹)も親族で、親等も全血兄弟姉妹(両親を同じくする兄弟姉妹)と同じになる(ただし、相続税における法定相続分は全血兄弟姉妹の1/2となる)。

伯叔父母、従伯叔父母

折角なので、上記の図表等で現れてきた「伯叔父母」、「従伯叔父母」の用語について説明しておく。

伯叔父母」は「はくしゅくふぼ」あるいは通称的な読み方として「おじ・おば」と呼んでいる。即ち、「おじ」と「おば」のことである。この言葉は、「伯父」、「叔父」、「伯母」、「叔母」の4種類の「おじ」と「おば」を表す言葉になっている。「伯父」と言うのは、自分の両親にとって年上のおじであり、「叔父」は自分の両親にとって年下のおじ、同様に「伯母」と言うのは、自分の両親にとって年上のおばであり、「叔母」は自分の両親にとって年下のおばとなる。また、傍系尊属の配偶者の場合は、血族であるその配偶者が年上か年下かで判断する(即ち、血族の「伯父」の配偶者は(その年齢に関わらず)「伯母」となる)。

なお、配偶者の「伯叔父母」、即ち「義父母の兄弟姉妹」については、同様に、義父母を基準とした年齢関係で呼び名が決まることになる。

さらに、「従伯叔父母」は、「じゅうはくしゅくふぼ」あるいは通称的な読み方として「いとこおじ・いとこおば」と呼ばれる方々で、両親の従兄弟姉妹のことを指している。

形式的な書類等では、使い分けが必要になることもあるが、日常的な呼び名は、通常「おじ・おば」で全く問題がないと思われる。

最後に

以上、今回は「三親等内の親族」について述べてきた。既にそんなことは常識だろうと感じておられる方々もいらっしゃるかもしれないが、少なくとも私の周囲を見る限りでは、必ずしもそういう状況ではないと思われたので、今回この話題を取り上げることにした。

繰り返しになるが、今回の報告内容はあくまでも民法上の「親族」に関する規定によるものだということには注意が必要である。世の中一般では、「親戚」あるいは「親類」といった用語が使われるが、これは法律用語ではなく範囲は明確なものではない。「遠い親戚」というような表現もあるが、「親戚」や「親類」に定められた範囲はないことになる。

親族ではないが、「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」や「配偶者のおじ・おばの配偶者」の中には、人によっては結構深い付き合いをしている方もおられるだろう。いろいろと世話好きで、親戚関係の諸事項に関してリーダーシップ(?)を発揮して積極的にいろいろと対応してくれる方もいらっしゃると思う。さらには「子の配偶者の父母」との極めて良好な関係を築いておられる方もいらっしゃるだろう。特に少子化が進行している中で、自分の兄弟姉妹の人数も少なく、子どもの人数も限られているという中で、「子の配偶者の父母」というのは親しい付き合いを長く続けていきたいと考える方々であるかもしれない。その意味では、親族であるかそうでないのか、というのは日常生活の上ではあまり意味を有していないし、そんなことを気にしている人もいないだろう。

ただし、多くの人々は、何か法律が関係する事象が発生した場合に、あらためてそうだったんだと意識することになると思われるので、どこか頭の片隅にでもこうした事実を認識しておいていただければ思って、今回の報告をさせていただいた次第である。
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(2022年08月08日「研究員の眼」)

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