2022年01月17日

インドの保険監督当局IRDAIがD‐SIIsとして改めて3社を特定

保険研究部 研究理事   中村 亮一

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1―はじめに

インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)は、2021年12月30日に、2021-2022年におけるD-SIIs(国内のシステム上重要な保険会社)として、昨年度に引き続き3社を特定すると発表1した。

今回のレポートでは、この内容について報告する。

2―D-SIIsとは

2―D-SIIsとは

D-SIIs(Domestic Systemically Important Insurers:国内のシステム上重要な保険会社)というのは、その規模、市場での重要性及び国内外の相互関連性を有し、その苦境又は破綻が国内金融システムに重大な混乱を引き起こす保険会社を指している。したがって、D-SIIsの継続的な事業運営は、国民経済に対する保険サービスの継続的な利用可能性にとって極めて重要となる。

グローバルベースでは、FSB(金融安定理事会)が指定するG-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルなシステム上重要な保険会社)の概念がある2が、その国内版に相当することになる。必ずしも全ての国がD-SIIsを指定しているわけではない。

一方で、米国はSIFI(Systemically Important Financial Institutions)として、国内の金融機関を指定しており、これまで保険会社も指定されてきたが、現在ノンバンクSIFIは存在していない。

また、日本においては、銀行について、D-SIBs(Domestic Systemically Important Banks:国内のシステム上重要な銀行)が指定されてきている。
 
2 2019年に「保険セクターにおけるシステミック・リスクの評価及び削減のための包括的枠組み」が構築され、2020年以降、IAISのメンバーである各監督当局が順次実施してきているが、これに伴い、現在G-SIIsの年次選定は停止されており、2022年11月にこの新たな枠組みの見直し及びG-SIIsの枠組みの存否の判断が予定されている。

3―-今回のIRDAIの対応

3―今回のIRDAIの対応

1|D-SIIsについて
IRDAIは、D-SIIsについて、以下の考え方を示している。

D-SIIsは「大きすぎる、あるいは重要すぎてつぶせない(too big or too important to fail:TBTF)」 保険会社として認識されている。このような認識と政府の支援に対する期待は、リスクテイクを増幅させ、市場規律を低下させ、競争上の歪みを生み出し、将来的な苦境の可能性を増大させる。これらの考察から、D-SIIsは、システミック・リスクとモラルハザードの問題に対処するために、追加的な規制措置を受ける必要がある。

IRDAIは、2019年1月に、D-SIIs に関する委員会の結成を発表する一方で、保険セクターは過去15年間で指数関数的に成長しており、保険会社のいくつかは大きな市場シェアを持ち、他の金融機関と相互に関連していると述べていた。
2|D-SIIs特定のための方法論等
IRDAIは、D-SIIsに相当する保険会社を特定し、そのような保険会社に対して強化されたモニタリングメカニズムを提供するために、D-SIIsを特定し、監督するための方法論を開発した。D-SIIsの特定のための方法論によるパラメータは、特に以下を含んでいる。

a. 引受保険料や運用資産の価値を含む総収入でみた事業規模
b. 複数の管轄区域にわたるグローバルな活動
c. 商品やオペレーションの代替性の欠如
d. カウンターパーティ・エクスポージャーとマクロ経済的エクスポージャーの相互関連性

これらのパラメータには、事業の様々な側面をカバーするウェイトが割り当てられている。

IRDAIは、年次ベースでD-SIIsを特定し、これらの保険会社の名称を公開情報として開示する、としている。
3|2021年~2022年のD-SIIsの特定
IRDAIは、上記の方法論に基づいて分析を行った結果、昨年度に引き続いて、以下の3つの保険会社をD-SIIsと特定している。

a. Life Insurance Corporation of India(LIC:インド生命保険公社)
b. General Insurance Corporation of India(GIC:インド損害保険公社)
c. The New India Assurance Co. Ltd.
4|D-SIIsに対する規制等
これらの保険会社は、その業務の性質とD-SIIsのシステム上の重要性を考慮して、以下のことを実施するよう求められている。

(i) コーポレート・ガバナンスのレベルアップ
(ii) 関連する全てのリスクを特定し、健全なリスク管理文化を推進する。

さらに、D-SIIsは強化された規制監督の対象となる。

4―D-SIIsに特定された保険会社

4―D-SIIsに特定された保険会社

今回、D-SIIsに特定された保険会社の概要は、IRDAIや各社のAnnual Reportによると、2020年度ベースで、以下の通りとなっている。

1|LIC
LICは国内最大の生命保険会社であり、国内市場シェアは、保険料で64.1%、投資資産で75.8%を有している。なお、保険料は約6.0兆円、投資資産は約51兆円(総資産は約56兆円)である。

2|GIC
GIC(あるいはGIC Re)は、政府所有の再保険会社である。インド国内の再保険市場において、保険料の市場シェアは76.5%を有している。インド国内の損害・健康・再保険市場のシェアは、投資資産で15.9%を有している。また、インド国外契約からの保険料が約3分の1を占めている。なお、保険料は約7,050億円、総資産は約2兆200億円である。

3|New India Assurance
New India Assuranceは、かつてGICの一部であったが、現在はインド最大の国有損害保険会社(GICは除く)である。インド国内の損害・健康・再保険市場のシェアは、保険料で14.4%(損害・健康保険市場のシェアは15.6%)、投資資産で11.5%を有している。また、インド国外契約からの保険料が約1割を占めている。なお、保険料は約4,700億円、総資産は約1兆3,500億円である。

5―まとめ

5―まとめ

以上、今回のレポートでは、インドの保険監督当局IRDAIによる、2021-2022年におけるD-SIIsの特定の公表について述べてきた。

D-SIIsの特定に関する状況は、それらのD-SIIsに対する監督・規制を巡る状況と共に、インドの保険市場に興味を有する関係者にとって関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
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保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

(2022年01月17日「保険・年金フォーカス」)

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