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IAISが2021GIMAR(グローバル保険市場レポート)を公表
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ソブリン債と社債は歴史的に高い水準に達し、信用スプレッドの拡大、デフォルト、格付けの変更につながる可能性がある。大部分の保険会社は過度の信用リスクを取っていないが、例えば、信用リスクの増大につながる可能性のあるオルタナティブ投資に向けて、保険会社の資産配分に変化が見られる。
ソブリン債と社債は歴史的な高水準に達し、信用スプレッドの拡大、デフォルト(債務不履行) 、格付け(見通し)の変更につながる可能性がある。保険会社は、実質的な固定金利投資家として、資産・負債ポートフォリオの両方でこのリスクを管理する必要がある。大半の保険会社は、平均的な信用の質が高く、過度の信用リスクを負っていない。しかし、利回りの追求においては、保険会社の資産配分に変化が見られ、信用リスクの増大につながっている。
監督上の措置に関しては、投資ポートフォリオ及び再保険ポジションのモニタリングの強化、オンサイトレビュー及び/又は監督上の対話の強化、並びにリスク管理の構造及びプロセスのレビューが主な監督分野である。一部の監督当局は、COVID-19危機の際、信用リスクの不確実性に関連して配当支払いを制限又は停止した。
規制面では、まず、監督当局は、(スプレッドや信用リスクのような)リスクベースの自己資本規制が、保険会社が資産ポートフォリオの過度なリスクを引き受けることを抑制していることに留意する。第2に、一部の監督当局は、保険会社に要求する内部統制手続きへの投資に関する要件を強化している。第3に、監督当局は、保険会社のソルベンシー報告書における信用リスクに関する情報開示の要件も同様に、保険会社が過度の信用リスクを引き受けることを抑制すると指摘している。
サイバーリスクは、リモートワーク、デジタル化、新技術の利用の増加等の加速傾向に後押しされて増加している。その結果、サイバー成熟度テストはますます保険監督に組み込まれている。また、サイバーリスクは、明示的なサイバー保険の引き受けを通じて保険会社の負債に影響を与える可能性があるが、保険契約におけるノンアファーマティブ・サイバーリスク・エクスポジャーによっても影響を受ける可能性がある。サイバー免責条項、契約上の制限、保守的なサイバー保険の引き受け等によって、エクスポジャーは制限されている。
監督当局は、COVID-19のパンデミックの間に、(数、影響力、洗練度の点で)サイバー攻撃の頻度と深刻度が高まっていることに留意している。
また、マルウェアやフィッシングキャンペーンが一般的になってきていることも指摘されている。リモートワークへの移行とデジタル化の増加は、新しい技術の台頭と相まって、保険セクターに対するものを含めたサイバーリスクを増大させている。
これを受けて、監督当局は、サイバーレジリエンス委員会を設置する等、自らのガバナンスを強化し、サイバー問題に関する専門知識を蓄積している。監督当局は、保険会社がサイバー能力を維持する必要性を強調する。監督当局は、保険会社とのオンサイト及びオフサイトでのエンゲージメントを活用して、健全性基準を実施し、保険会社がサイバーリスク管理を継続的に改善することを奨励する。
規制に関しては、一部の監督当局は、サイバー防衛方針をリスク管理とガバナンスの両方に組み込むための要件を定めている。さらなる要件は、サイバーインシデントに関する監督上の報告と、サイバーセキュリティの測定とテストに関するものである。最後に、一部の監督当局は、監督する金融機関がサイバー保険に加入することを奨励しており、これは財務面と運用面のレジリエンスの観点からサイバーリスクの軽減に役立つ可能性があると指摘している。
IAISは、2003年から2019年にかけて、毎年、世界再保険市場調査(GRMS)を実施しており、これは世界の9つの管轄区域に拠点を置く約50の再保険会社を対象にしていた。GRMSは2019年に包括的枠組みの採択とともに廃止されたが、IAISは、GME(SWM再保険コンポーネント)の一部としてSWM(セクターワイドモニタリング)の下で再保険データ収集を含めることを決定した。SWMに再保険データ収集を含めることにより、1) アジア、アフリカ、オセアニア、ラテンアメリカ地域でのデータ範囲を改善、2) GRMSに当初参加していた9つの管轄区域も、報告保険会社の数を拡大し、再保険又は再々保険サービスを提供する保険会社及び再保険会社の数を増やした、ことから、再保険データ収集のグローバルな範囲と完全性が向上した。これにより、分析の対象となる再保険総収入保険料の額が80%以上増加した。
世界の再保険市場の動向に関する評価については、以下のように記載されている。
GIMARには、世界の再保険市場の動向に関する評価も含まれている。IAISの年次再保険市場調査を通じて行われたデータ収集をSWM(セクターワイドモニタリング)に組み込むことで、IAISはその分析の世界的な範囲と代表性を強化し、13の管轄区域をデータ収集の範囲に加えた。再保険データ収集の結果は、次のことを示している。
・2020年、SWMがカバーする世界の正味再保険市場の規模は約3120億ドルで、全世界の正味保険料の約7%を占めた。損害再保険料は、全世界の総再保険料の50%以上を占めている。
・地域的な観点から見ると、SWMに基づく5大再保険市場は、バミューダ、米国、ドイツ、スイス、中国である。SWMデータに基づく総再保険料に関しては、2020年末時点でバミューダは世界最大の再保険市場であった。正味再保険料の観点から見ると、米国が最大の再保険市場であった。
・再保険資産は、主に株式と社債で構成されている。再保険会社が保有する負債投資のシェアは、経時的に比較的安定しているが、持分証券の相対シェアはわずかに減少している。
・再保険のソルベンシー比率は、2014年以降減少傾向にある。しかし、平均ソルベンシー比率は依然として100%を大きく上回っている。
・留保利益は、引き続き利用可能な資本の主要な源泉である。利用可能資本の変動は、主に払込資本の減少に起因するが、留保利益とハイブリッド資本の相対的な水準は安定している。2008年以降、ギアリングレシオは低下しており、資本リソースは再々保険回収額よりも急速に成長している。グロスギヤリングレシオとネットギヤリングレシオの幅は低下しており、再々保険担保の利用が増加していることが分かる。
・損保の収益性は若干改善:2019年から2020年にかけて、世界の損害再保険市場の平均コンバインドレシオは若干低下した。コンバインドレシオは100%を下回っており、収益性の高い引き受けであることを示している。生命・損害再保険ともに、総資産に占める収入の割合は約15%であり、地域差もある。
5―まとめ
グローバルベースで監督当局の関心が高い事項については、各国でほぼ共通していると思われるが、一方で、各国・地域の保険市場や金融市場の特性等を反映する形で、関心のレベルが異なっている部分もある。さらには、生命保険会社と損害保険会社での影響の関わり方も異なってくる。
ただし、今回のマクロプルーデンスのテーマの中での低金利環境を巡る動向については、グローバルベースで保険業界が抱えている課題であり、関係者の特に関心の高い事項であると思われる。また、これに対する利害関係者の問題意識や保険会社や保険監督当局の対応については、日本の保険業界の関係者にとっても大変示唆に富み参考になるものであると思われる。今後ともこれらの動向については引き続き注視していくこととしたい。
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(2021年12月27日「保険・年金フォーカス」)
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