2021年07月27日

欧州大手保険Gの内部モデルの適用状況について-2020年のSFCRからのリスクカテゴリ毎の標準式との差異説明の報告-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

欧州 欧米保険事情 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

1―はじめに

欧州の保険会社各社が4月から5月にかけて公表した単体及びグループベースのSFCR(Solvency and Financial Condition Report:ソルベンシー財務状況報告書)については、これまで5回の保険年金フォーカスで報告してきた。具体的には、1回目のレポートでその全体的な状況について報告し、2回目のレポートでは、欧州大手保険会社グループ各社の長期保証措置や移行措置の適用の影響、3回目のレポートでは、SCRやMCRの計算方法の説明、4回目のレポートでは、内部モデルの使用状況及び分散効果の状況、5回目のレポートでは、使用された内部モデルに関する説明等について報告した。

今回のレポートでは、これまでのレポートを総括する形として、各社の内部モデルの適用状況に関して、標準式と各社で実際に使用された内部モデルとのリスクカテゴリ毎の差異の説明等について報告する。
 

2―標準式と使用された内部モデルとの差異の説明

2―標準式と使用された内部モデルとの差異の説明

標準式と使用された内部モデルとの差異の説明については、欧州大手保険グループ5社(AXA、Allianz、Generali、Aviva、Aegon)は、各社各様の方式で行っている。

リスクカテゴリ毎にポイントをまとめて説明している方式が一般的だが、Allianz は、さらに標準式と使用された内部モデルの対比表を作成している。

この章では、各社の記載例について紹介する。
Allianz
Allianzは、5社のうち、「E.4.標準式と使用された内部モデルの差異」に5ページと最もページ数を費やしている。その記述のうち「内部モデルの範囲と使用法及び基礎となる方法論」については、前回のレポートで報告しているので、今回のレポートでは「内部モデルと標準式とのリスクモジュール毎の主な違い」について、報告する。

標準式と内部モデルの基本的な違いについては、「標準式ではファクターベースのショック・シナリオを使用し、内部モデルでは想定された分布に基づく各リスクドライバー(及びそれに対応する経済的損益の影響)と他のリスクドライバーへの依存をシミュレートしてリスク資本を導出する。」と説明している。

リスクモジュール毎の主な違いについては、以下のように対比表を作成して説明している。

なお、2019年のSFCRでは、2018年に比べていくつかの追加記載が行われていたが、2020年のSFCRの記載は、2019年に比べて大きくは変更されていない。

E.4.4内部モデルと標準式とのリスクモジュール毎の主な差異
標準式と内部モデルの基本的な違いは、標準式ではファクターベースのショック・シナリオを使用し、内部モデルでは想定された分布と他のリスクドライバーとの相互依存に基づいて、各リスクドライバー(及びそれに対応する経済的損益の影響)をシミュレートしてリスク資本を導出する。

次の表は、リスクモジュール毎の標準式と内部モデルの違いの概要を示している。



損害引受リスクについては、標準式と比較して、内部モデルによってカバーされるリスクの差異は非常に限られている。上に示したように、モデリングアプローチには違いがある。生命/健康引受リスクに関しては、カバーされるリスクが逸脱しており、内部モデルは、従業員の年金債務の長寿リスクとドイツの経費リスクの新契約ショックの両方をカバーしているが、これらのリスクは両方とも標準式では考慮されていない。内部モデルの下での全ての他のリスクカテゴリは、また暗黙的に標準式によってカバーされる。

もう一つの違いは、信用リスクモジュールに関するものである。標準式とは対照的に、内部信用リスクモジュールは、信用保険エクスポージャーに加えて、債券及びローン・ポートフォリオ全体をカバーしている。これにより、全ての信用リスクを生むエクスポージャーにわたる分散化及び集中効果をモデル化することができる。

内部モデルの入力とパラメータの較正について、「E.4.2内部モデルの基礎となる方法論」と「E.4.3集約と資本追加」のセクションで述べたように、我々は様々なデータソースを使用している。モデルの較正ができるだけ経済的現実を反映するようにするため、可能な限り、利用可能な市場のデータ又は自社のデータを使用しているので、使用されるデータは適切とみなされる。

利用可能な場合には、将来起こりうるリスク事象を特徴付けるために、過去のデータから導き出されたモデル及びシナリオのパラメータを使用する。将来の市場の状況が過去と大きく異なる場合、例えば前例のない危機の場合、VaRアプローチはあまりにも保守的であるか、又はあまりにも自由度が高く、予測が難しい可能性がある。したがって、過去のデータへの依存を軽減するために、ストレステストによってVaR分析を補完している。

妥当な場合、入力データは、例えば、ローカルGAAP又はIFRS会計のような、他の目的のために使用されるデータと同一である。このデータの妥当性は、定期的に社内及び外部監査人によって検証される。

市場データは、グループリスクとの間で合意された基準に基づいて品質保証を実施した後、Investment Data Services(IDS)によって提供される。IDSでは、ブルームバーグ、Thomson / Reuters、IHS Markit、WM / Reutersなどの複数のソースから市場データを収集している。必要な市場データ処理及び機能強化は、IDS又はグループリスク、及びグループリスクによって保証された品質で、4つの目の原則を適用して実行される。このプロセスから得られる市場データは、内部モデルで使用するのに十分かつ適切であると見なされる。

市場リスクモデルは、投資データや市場データなどの入力を使用する。内部信用リスクモデルでは、市場データ(金利、外国為替レートなど)に加えて、投資とエクスポージャーのデータ(名目値、市場価値、満期など)、債務者と相手方のデータ(格付け、セクター、国の情報など)、パラメーターデータ(例えば、デフォルト確率、デフォルト時損失率及び相関データ)が使用される。内部モデルで使用されるデータの適切性を保証するために、Allianzは内部ガイドライン、文書化されたプロセス及びデータチェックを伴う管理環境を確立した。基礎となるデータを評価し、それらが国内市場及び信用リスクモデルの較正に適切であることを確認するための定期的なモデル検証プロセスがある。

一般に、内部モデルは、標準式では十分に考慮されていない多国籍企業グループ内の地理的な分散を反映しており、より高い分散効果をもたらす。この構造的な違いは、リスクモジュール内の分散化にも影響する。特に、内部モデルは、標準式の調整では無視されている市場リスクのサブモジュールの中で、国やセクターごとの分散化を考慮している。また、2008年から2012年の危機シナリオを含む、推計に用いられた長い時系列を考慮すると、市場リスクモジュール及びサブモジュール内の分散効果の方が適切であると考えられる。この違いの影響の顕著な例としては、内部モデルでのみ認められている信用スプレッドリスクの動的ボラティリティ調整オフセットと組み合わせて、内部モデルでの信用スプレッドリスク資本の減少が挙げられる。このため、標準式に基づくSCR要件全体への定量的な影響は、一般に内部モデルよりも大きい。

Allianzは、内部モデル・アプローチは、多国籍グループとしてのリスクプロファイルを表現するのに非常に適していると確信している。

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

アクセスランキング

レポート紹介

【欧州大手保険Gの内部モデルの適用状況について-2020年のSFCRからのリスクカテゴリ毎の標準式との差異説明の報告-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州大手保険Gの内部モデルの適用状況について-2020年のSFCRからのリスクカテゴリ毎の標準式との差異説明の報告-のレポート Topへ