2021年07月21日

欧州保険会社が2020年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(5)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その4)-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

保険・年金フォーカス 保険会社経営 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

1―はじめに

欧州の保険会社各社が4月から5月にかけて公表した単体及びグループベースのSFCR(Solvency and Financial Condition Report:ソルベンシー財務状況報告書)については、これまでのレポートで、長期保証措置と移行措置の適用による影響及びSCRとMCRの計算方法の説明内部モデルの使用状況及び(内部モデル適用による影響が大きい)分散効果の状況について報告した。

今回のレポートでは、使用された内部モデルに関する説明等について報告する(内部モデルに関する説明のうち、「標準式と内部モデルの差異」のリスクカテゴリ毎の具体的な説明については、次回のレポートで報告する)。
 

2―使用された内部モデルに関する説明

2―使用された内部モデルに関する説明

|使用された内部モデルについての説明項目
SFCRにおいては、「E.資本管理(Capital Management)」の中の「E.4 Differences between the standard formula and any internal model used(標準式と使用された内部モデルの差異)」等において、内部モデルについての説明が求められる。

具体的には、各社によっても若干異なる部分もあるが、概ね以下の内容が説明されている。

「E.4.1.内部モデルの使用・目的」
「E.4.2.内部モデルの範囲」
「E.4.3.内部モデルの計算」
「E.4.4.標準式と内部モデルの差異」
「E.4.5.内部モデルで使用されたデータ」

これらの項目についての説明に費やされているページ数については、欧州大手保険グループ5社について、以下の図表の通りとなっている。

なお、会社によっては、「E.2. SCR(ソルベンシー資本要件)とMCR(最低資本要件)」の中で、内部モデルの範囲等について説明しているケースもあるので、「E.4標準式と使用された内部モデルの差異」の分量だけでは、内部モデルに関する記述量を必ずしも適切に比較できないことには注意が必要となる。さらには、各ページの記述方式や記述量も異なっており、図表等を使用しているケースもあるので、ページ数はあくまでも参考数値という位置付けになる。

いずれにしても、記述量や記述箇所等に若干の差異はあるものの、各社ほぼ同じような内容をカバーしている。また、2019年と比較すると、各社とも、項目によっては新たな追加の記述を行って、充実を図ってきているが、基本的には大きな変更は行われていない。
内部モデルに関する記述量
上記の項目のうち、「E.4.2.内部モデルの範囲」と「E.4.3.内部モデルの計算」については、前回のレポートの「2―内部モデルの使用状況及び分散効果の状況」及び前々回のレポートの「3―SCRMCRの計算方法の説明」の中で一部報告している。また、「E.4.4.標準式と内部モデルの差異」のリスクカテゴリ毎の具体的な内容については、次回のレポートで報告する。

以下の章では、「E.4.1.内部モデルの使用・目的」と「E.4.5.内部モデルで使用されたデータ」及び「E.4.3.内部モデルの計算」のうちの方法論・アプローチの記述内容について、それぞれの項目に関する記述が充実している等の特色のある2から3の保険グループを選択して、報告する。
|内部モデルの使用・目的
ここでは、Aviva、Allianz及びAegonの説明について報告する。

(1) Aviva
Avivaは、内部モデルの使用に関して、以下のように記述しており、「内部モデルは、Aviva全体の日々のリスク管理及びビジネス上の意思決定に使用される。」として、「上級管理職、取締役会、株主及び格付機関へのリスクベースの業績報告、リスクと財務力の報告において、内部及び外部で使用される。」と述べている。

E.4.1 Avivaの事業における内部モデルの使用
内部モデルは、グループ全体及び法人レベルで、重要なビジネスプロセス及び活動への情報提供を通じて、Aviva全体の日々のリスク管理及びビジネス上の意思決定に使用される。

「使用」とは、モデルが直接的にビジネスを実行するために使用されることを意味するのではなく、その限界を認識し、リスク管理フレームワークの他の要素とバランスをとりつつ、内部モデルの出力とモデル自体が、意思決定を支援するために使用されることを意味している。

内部モデルの主な目的は、内部モデル法人及びグループ全体のソルベンシーⅡに基づく規制上の報告に必要な資本メトリクスを計算することにある。モデルのアウトプットは、上級管理職、取締役会、株主及び格付機関へのリスクベースの業績報告、リスクと財務力の報告において、内部及び外部で使用される。

内部モデルによって生成される詳細なメトリックは、グループ全体の戦略を設定し、以下を含む一 連のその他の活動をサポートするためにも使用される。

・戦略と事業計画:法人間で資本を配分し、リスク調整後収益を測定し、リスク選好度を事業計画サイクルの一部に設定する。

・価格設定:内部モデルで計算された様々なタイプの商品をサポートするために必要な資本水準を評価することによって、価格設定と商品設計を改善する。

・取引:余剰資本への影響による潜在的買収や事業投資の妥当性を評価する。

・再保険:潜在的に不利なシナリオをモデル化することにより、望ましくないリスク・エクスポージャーを緩和するための目標とされる再保険契約の必要性を特定する。

・資産及び負債管理:投資戦略を推進するための市場変動の資産及び負債への影響を測定する。

内部モデルがAvivaのリスク管理システムに完全に統合されている方法の詳細は、B.3.3項に記載されている。

(2) Allianz
Allianzは、内部モデルと経営でのリスク管理プロセス等との関係について、以下のように記述しており、「Allianzの配当政策の中心的要素は、内部モデルに基づくソルベンシーIIの資本化と関連している。これにより、我々はソルベンシーIIの枠組みに基づくリスクステアリングや資本化に関する整合的な考え方が可能になる。」として、「内部モデルはAllianzのビジネスステアリングに完全に統合されており、その適用はソルベンシーIIの下でのいわゆる『使用テスト(Use Test)』を満たしている。」と述べている。

B.3.4 リスク管理プロセス
B.3.4.1.リスクベースのステアリング及びリスク管理(抜粋)
2016年1月1日以降、ソルベンシーIIが当グループに関連する規制制度であるため、当社のリスクプロファイルは当社の承認済みソルベンシーII内部モデルに基づいて測定及び管理されている。 当グループは、ソルベンシーIIに従って、当グループ及び関連会社の両方のレベルで、アドホックシナリオ、ヒストリカル及びリバースストレステストならびに感応度分析により補完された、事前定義されたストレスシナリオに基づいて、目標ソルベンシー比率の範囲を導入した。

さらに、Allianzの配当政策の中心的要素は、内部モデルに基づくソルベンシーIIの資本化と関連している。これにより、我々はソルベンシーIIの枠組みに基づくリスクステアリングや資本化に関する整合的な考え方を確保できる。

Allianzは、シナリオ分析で補完された内部モデルに基づいたリスクとリターンの包括的な考え方を使用して、ポートフォリオをステアリングしている。リスクと集中は我々の内部モデルに基づく限度によって積極的に制限され、リスク資本リターン(RoRC)の包括的な分析を行っている。RoRCは、商品の全期間にわたる資本コミットメントを反映して、持続可能なベースでの収益性の高い新契約と商品ラインを識別することを可能にする新契約指標であり、資本配分決定の重要な基準である。

結果として、内部モデルはAllianzのビジネスステアリングに完全に統合されており、その適用は ソルベンシーIIの下でのいわゆる「使用テスト(Use Test)」要件を満たしている。

B.3.4.2.リスク資本計算の範囲(抜粋)
リスク・エクスポージャー
以下のセクションで我々のリスク管理プロセスを構成する3つの大きく定義された要素に関するさらなる詳細を提供しているが、これらは我々がさらされている重要な全てのリスクカテゴリを統合的に取り扱っている。

(3) Aegon
Aegon は、内部モデルの目的に関して、以下のように記載している。
 

内部モデルの目的は、SCRにAegon の実際のリスクプロファイルをよりよく反映させることである。そのため、Aegon の最も重要なリスクタイプは、ソルベンシーII PIM(部分内部モデル)の一部として内部モデルでカバーされているが、あまり重要でないリスクタイプ及び事業単位はソルベンシーII PIMの一部として標準式でカバーされている。

さらに、以下のように追加の目的を述べている。
 

AegonがソルベンシーII PIMを使用するその他の目的は次の通りである。

・適切な資本バッファーを設定するためのリスク・エクスポージャーの定量化
・記載されたリスク選好度及びリスク許容度に対するこれらのエクスポージャーの監視
・資本コストが全体的なコストに大きな影響を与える場合の商品の価格設定
・販売された新契約の価値、特にそこに含まれるオプション及び保証の価値の評価
・資本要件、配当方針及び危機管理計画の予算作成

|内部モデルで使用されたデータ
内部モデルで使用されたデータについては、各社とも説明を行っているが、ここでは、Generali、Aviva及びAegonの説明について報告する。

(1) Generali
Generaliは、内部モデルで使用されたデータについて「PIM(部分内部モデル)で使用されたデータの品質は、『グループデータ品質ポリシー』で定義されたプロセスに基づいて認められる。」として、「この方針の中で、グループは比例性及び重要性の原則に基づいて範囲内のデータを定義し、正確性、完全性及び妥当性を検証することを目的とした統制を通じてデータの品質を評価する。」と述べている。
 

E.4.3.内部モデルで使用された方法
PIMで使用されたデータ
SCR計算の目的で、PIMは、市場の証拠とビジネスドライバーの両方を共同で検討するために、市場のデータ(主に資産の特徴に関係するもの)、会計データ、統計ポートフォリオのデータに依存している。この情報は、グループの自己資本のPIM確率モデルの包括的なデータセットを提供する。

PIMで使用されたデータの品質は、「グループデータ品質ポリシー」で定義されたプロセスに基づいて認められる。この方針の中で、グループは比例性及び重要性原則に基づいて範囲内のデータを定義し、正確性、完全性及び妥当性を検証することを目的とした統制を通じてデータの品質を評価する。

PIMのSCR計算は、グループ内部モデル検証ポリシーで定義された原則に基づいて、セクションBに記述されているように、独立した検証プロセスの対象となる。

(2) Aviva
Avivaは、内部モデルで使用されたデータについて、他社に比べて詳しく説明しており、「会計データ(IFRS)」、「契約データ」、「オペレーショナルリスク・データ」、「金融市場データ」、「内部資産データ」、「その他のデータ」といったデータの種類毎に説明を行っている。

さらに、「AvivaのソルベンシーIIデータガバナンスビジネス基準は、データをSCR計算に使用する前に、適切性、完全性、正確性及び一貫性の観点から、データの質を評価するために使用される管理環境及び基準を設定している。」と述べている。
 

E.4.3.2内部モデルで使用されたデータ
グループの内部モデルで使用された重要なデータは次の通り。

・会計データ(IFRS)-資産と負債のソルベンシーII評価は、IFRS測定が非経済的なベースであることを除けば、IFRSと整合的であることが求められる。ソルベンシーII貸借対照表においては、殆どの金融投資や一定の非技術的負債はIFRSベースで計上される。

・契約データ - これには、保有契約や過去の契約の請求を含む。

・オペレーショナルリスク・データ- グループは、(Aviva固有の)内部の損失経験データと、ORIC(オペレーショナルリスク保険コンソーシアム)によって提供される業界のオペレーショナルリス クの損失に関する外部データベースで保有されるデータの組み合わせを使用する。

・金融市場データ - グループの市場リスクと信用リスクの較正プロセスは、外部金融市場資産データ(FTSEインデックスリターン等)をしばしば使用する。

・内部資産データ - 基礎となるソルベンシーII貸借対照表の評価は、資産の時価評価及び一定の非取引資産のモデル評価に依存している。使用されるデータは会計処理から取られるため、殆どのデータは「会計データ」の要素の下に含まれる。

・その他のデータ - 上記の5つのカテゴリに該当しないデータ。これには、ソルベンシーII制度の下での数的、国勢調査又は分類情報を含むが質的情報は含まない、必要経済資本と技術的準備金の計算に使用される全てのデータ(資産データを含む)が含まれる可能性がある。

AvivaのソルベンシーIIデータガバナンスビジネス基準は、データをSCR計算に使用する前に、適切性、完全性、正確性及び一貫性の観点から、データの質を評価するために使用される管理環境及び基準を設定している。

(3) Aegon
Aegon は、データの品質に関して、「ソルベンシーII報告プロセスのために、必要なデータディレクトリと、それぞれのデータの完全性、正確性、妥当性に関する基準の説明を含む、グループ全体のデータ品質ポリシーを実施している。」と述べている。
 

データ品質
Aegonは、ソルベンシーII報告プロセスのために、必要なデータディレクトリと、それぞれのデータの完全性、正確性、妥当性に関する基準の説明を含む、グループ全体のデータ品質ポリシーを実施している。内部モデルで使用されるデータは、以下のように、内部及び外部の情報源に由来している。

・個々の保険契約の特性及び補償範囲を詳述した契約データ
・資産のポートフォリオを指定するデータ。例えば、資産の種類、金額及び満期日
・国民死亡率表や取引されている有価証券の価格などの外部情報源からのデータ

内部モデル設計は、モデル設計と実行の段階で、利用可能な全てのデータを最適に活用することを目的としている。データ使用の適切性の評価は、モデル検証プロセスの一部を構成する。

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

アクセスランキング

レポート紹介

【欧州保険会社が2020年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(5)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その4)-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州保険会社が2020年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(5)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その4)-のレポート Topへ