2021年07月08日

IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(3)-情報が更新され、49グループのうちの46グループが明らかに-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

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1―はじめに

各国・地域の保険監督当局等によるIAIGs(国際的に活動する保険グループ)の措定を巡る状況については、2021年に入ってから、これまで2つの保険年金フォーカス「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況-48グループのうちの45グループが明らかに-」(2021.4.1)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(2)-48グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.4.7)(以下、「前回のレポート」という)で報告した。

その後、IAIS(保険監督者国際機構)が7月2日に、IAIGsの指定に関する新たな登録簿を公表1したので、その内容を報告する。  

2―IAIGsとは

2―IAIGsとは

まずは、繰り返しになるが、IAIGsについて説明しておく。

IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAIS(保険監督者国際機構)が定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
1|IAIGs の選定基準
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
 

(1) 国際的活動
・3つ以上の管轄区域において、保険料が計上されていること、及び
・本店所在管轄区域外のGWP(収入保険料)のグループ全体のGWPに対する割合が10%以上

(2) 規模(3 年移動平均)
・総資産が500 億米ドル以上、又は
・全体のGWPが100 億米ドル以上

ただし、これらの定量的基準に関わらず、グループ全体ベースでIAIGs の監督に対して責任を有しているGWSが、限定された状況において、グループがIAIGs とみなされるかどうかを判断するための裁量権を有している。例えば、(a)自国の保険事業活動が重大である場合、(b)合併及び買収あるいは売却等により、近い将来に基準を満たすあるいは満たさなくなる場合、等が想定されている。
2|今回のIAIGs の指定に関する情報の公表
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。

IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
3|IAIGsに対する監督・規制
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。

このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。それぞれの項目の具体的な内容については、今回のレポートの趣旨ではないので触れないが、例えば、「(2)資本規制」について、IAISはComFrameの一環としてICS(保険資本基準)を策定中である。
 

3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報

3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報

IAISは、IAIGsの指定に関して、以下の情報を公表している。
1|直近のIAISによる情報開示
前回のレポートで報告したように、IAISの2021年4月6日の公表2によれば、2020年7月1日の時点で確認されていた16の管轄区域からの48 のIAIGsのうち、16の管轄区域からの 47のIAIGsが関連GWS(group-wide supervisors:グループ監督者)により公開されていた。

直近では、2021年7月2日において、情報の更新を行っている。今回のレポートはこの内容を報告する。
2|今回の情報更新に基づくIAIGsに指定された保険グループの状況
今回の情報更新により、全体で18の管轄区域からの 49のIAIGsのうち、16の管轄区域からの46のIAIGs が公開されていることとなった。

前回のレポートからは、新たに2つの管轄区域が加わり、IAIGsの数は1つ増加している。

新たに加わった管轄区域は明らかにされていない。新たに2つの管轄区域が加わったのに、IAIGsの数が1つしか増加していないのは、これまでのIAIGsの1つが対象外となったためである。

具体的には、英国のRSA Insurance Group plcが、2021年6月1日に、カナダの保険グループIntact Financial Corporation とデンマークの保険会社Tryg A/S で構成されるコンソーシアムによって買収されたことによる3

また、新たな管轄区域からは、それぞれ1つのIAIGが指定されたことになる。

結局、今回公開された46のIAIGsの管轄区域別の内訳は、以下の通りとなっている。
今回公開された46 のIAIGs の管轄区域別の内訳
3|RSAの買収の影響
IntactとTrygのコンソーシアムによるRSAの買収によって、IntactはRSAの英国、カナダ及び国際的な事業を維持し、Trygはスウェーデン及びノルウェーの事業を引き継いだ。また、RSAのデンマークの事業は50/50ベースで共同所有されている。

この取引によっても、Trygの保険料及び資産規模はIAIGs指定のための臨界値を下回っているので、IAIGsに指定されることはないとのことである。

一方で、Intactは、RSAの買収により、カナダ、米国、英国、アイルランド、欧州大陸等、3つ以上の管轄区域で保険事業を行うことになる。また、英国とアイルランドの保険料は、グループの保険料の10%以上となっている。このため、IAIGs の選定基準のうちの「①国際的活動」についての要件は満たしているようだ。

さらに、グループ全体のGWPも200億加ドル(約160億米ドル)となり、IAIGs指定のための保険料の臨界値を超えることが想定されている。ただし、カナダの保険監督当局であるOSFIによれば、Intactは、「(2)規模(3年移動平均)」の3年移動平均による規模の基準は満たしていないとのことであり、現在IAIGsとして指定する必要があるかどうかを検討しているようである。
 

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報について報告してきた。

これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定状況は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況等を反映して、国・地域毎にその指定グループ数がかなり異なっている。

また、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。

今回のRSAの買収のようなケースも含めて、新たな買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略により、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。

今後、カナダのOSFIのIntactへの対応だけでなく、その他の管轄区域においても、過去1年間の各種動向や2020年決算の数値等も踏まえた上で、IAIGsの指定の見直し等が公表されていくことが想定されることになる。

IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
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保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

(2021年07月08日「保険・年金フォーカス」)

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