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コラム
2021年06月17日
1――民主主義国の結束
6月13日、英国コーンウォールで開催された主要7カ国首脳会議(サミット)が閉幕した。サミット開催は、2019年8月以来2年ぶり。昨年は、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、米国での開催が見送られた。この間、米国、日本、イタリア、欧州連合(EU)の首脳が交代し、国際社会も英国のEU離脱や米中対立の激化などで大きく変化して来た。
今回のサミットでは、トランプ前米大統領のもとで不協和音が目立ったG7が、バイデン米大統領のもとで再び結束できるかが問われた。特に注目を集めたのは、専制主義的な動きを強める中国への対応だ。
今回のサミットでは、トランプ前米大統領のもとで不協和音が目立ったG7が、バイデン米大統領のもとで再び結束できるかが問われた。特に注目を集めたのは、専制主義的な動きを強める中国への対応だ。
閉幕後に発表された共同宣言には、台湾海峡の平和と安定の重要性が初めて明記され、東シナ海および南シナ海の状況に触れたうえで、自由で開かれたインド太平洋の維持の重要性が改めて強調された。また、人権問題では新疆や香港に言及し、経済問題では中国の一帯一路を念頭に新構想を打ち出し、自由、民主主義、法の支配、市場経済といった、G7共通の価値観のもとに結束していくことを確認した。さらに、民主主義陣営の範囲を広げるため今回のサミットには、中国と対立するインドや豪州、韓国、南アフリカの4ヵ国も招待された[図表1]。招待国も署名した「開かれた社会声明」には、中国を名指しての具体的な言及はなかったが、民主主義や多国間主義などを擁護していくという、各国のコミットメントが盛り込まれた。
2――問われる日本の覚悟
日本にとって、価値観や理念を共有する欧米諸国と認識を共有し、足並みを揃えることが出来た意義は大きいと言える。ただ、日本は地理的に中国との距離が近く、2国間の経済関係も深い。中国は、日本にとって最大の貿易相手国であり、日本企業は、中国を含むアジア地域に複雑なサプライチェーンを構築している。コロナ禍を機に、製造業の中国依存度の高さが世界的にクローズアップされたが、レアメタルや医薬品などの分野で中国依存脱却を図ることは容易ではない。今後、欧米(特に米国)が中国への締め付けを強めたとき、日本企業が股裂きに合うリスクもある。すでに欧米各国は、新疆ウイグル自治区の少数民族に対する人権弾圧を巡って中国に制裁を課している。日本は、ミャンマー問題と同じく、対話による政策変更を働きかけているが、民主主義の理念を同じくする国として、より強い対応を求められることもあるかもしれない。今後日本は、米中対立(専制主義と民主主義の対立)の最前線に位置する国として、政策の難しいかじ取りを迫られることになるだろう。
なお、今回の共同宣言には、低所得国への10億回分のワクチン供与、財政出動による景気支援継続、地球温暖化対策の2050年ネットゼロ目標および2030年目標へのコミットなども盛り込まれている。しかし、これらの点で日本の状況は芳しくない。感染拡大当初の抑え込みはうまく行ったものの、経済正常化に向かうワクチン接種は遅れている。財政支出は大規模に実施されたものの、政府債務残高は国内総生産(GDP)の250%を超え、追加的な政策余地は限られている。また、今年4月に上積みされた2030年度のCO2削減目標(2013年度比46%削減)も、その前提となる第6次エネルギー基本計画が決まっていない。米国とEUは、炭素国境調整措置 (炭素規制の緩い地域からの輸入品に対して炭素排出量に応じた追加の負担を課す制度)についての協議をはじめ、コロナ後の産業政策の主導権を握ろうと走り始めている。日本も国際競争で後れを取らないためには、早急に政策を動かして行く必要がある。今年は、7月の東京都議会選挙、8月から9月にかけての東京オリンピック・パラリンピック開催、10月の衆議院任期満了までに実施される総選挙と重要日程が相次ぐが、政策をどれだけスピードアップできるか注目される。
なお、今回の共同宣言には、低所得国への10億回分のワクチン供与、財政出動による景気支援継続、地球温暖化対策の2050年ネットゼロ目標および2030年目標へのコミットなども盛り込まれている。しかし、これらの点で日本の状況は芳しくない。感染拡大当初の抑え込みはうまく行ったものの、経済正常化に向かうワクチン接種は遅れている。財政支出は大規模に実施されたものの、政府債務残高は国内総生産(GDP)の250%を超え、追加的な政策余地は限られている。また、今年4月に上積みされた2030年度のCO2削減目標(2013年度比46%削減)も、その前提となる第6次エネルギー基本計画が決まっていない。米国とEUは、炭素国境調整措置 (炭素規制の緩い地域からの輸入品に対して炭素排出量に応じた追加の負担を課す制度)についての協議をはじめ、コロナ後の産業政策の主導権を握ろうと走り始めている。日本も国際競争で後れを取らないためには、早急に政策を動かして行く必要がある。今年は、7月の東京都議会選挙、8月から9月にかけての東京オリンピック・パラリンピック開催、10月の衆議院任期満了までに実施される総選挙と重要日程が相次ぐが、政策をどれだけスピードアップできるか注目される。
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(2021年06月17日「研究員の眼」)
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