2021年05月26日

欧州大手保険Gの2020年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

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1―はじめに

欧州大手保険グループの2020年決算数値が、2月から4月にかけて、投資家向けのプレゼンテーション資料やAnnual Reportの形で公表された。

前回のレポート1では、生命保険事業を中心とした地域別の事業展開の状況について報告した。

新たな規制・低金利環境下で、各社とも貯蓄・年金商品等の伝統的な利率保証付商品から、ユニットリンク型商品や保障・医療商品へのシフトを志向している。こうした状況は、グループ全体として基本的には同じ方向に向かっているが、その実態は地域毎に若干異なっている。これらは、各地域の保険市場や運用市場の状況やそれらを反映した保険商品の収益性等に関係している。

今回のレポートでは、2020年の生命保険事業の新契約業績について、商品タイプ別、地域別の販売動向及び新契約マージン等の数値を通じて、欧州大手保険グループの商品シフトの現状及び収益性の状況を報告する。

なお、2020年は、COVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大等が、地域・商品・販売チャネル等によっては、新契約業績に少なからぬ影響を与えている。このレポートではその詳細については触れていないが、各社の説明の概要の中で述べられているものを簡単に報告している。また、COVID-19が会社全体の財務状況や収益状況に与えた影響については、保険年金フォーカス「新型コロナウイルスの感染拡大が保険会社に与える影響(2)-欧州大手保険Gの2020年決算発表による-」(2021.4.30)で報告しているので、こちらも参考にしていただきたい。  

2―欧州大手保険グループ各社の新契約業績動向等

2―欧州大手保険グループ各社の新契約業績動向等

この章では、欧州大手保険グループ各社の生命保険事業について、新契約の年換算保険料(Annual Premium Equivalent APE新契約保険料現在価値(Present Value of New Business PremiumPVNBP及び新契約価値(New Business ValueNBV新契約マージン(New Business Margin)の状況等について、商品タイプ別、地域別に報告する。

なお、新契約マージン等の定義は、その分母及び分子の考え方等について各社各様であるが、ここでは各社の公表数値に基づいて報告する2。また、以下の図表は、会社が公表している数値に基づいて、筆者が作成したものである。
 
2 新契約価値(NBV)について、Allianz、Generali、Aviva、Aegon、ZurichはMCEV、AXA、PrudentialはEEVベースである。なお、新契約価値の地域別状況等については、前回のレポートを適宜参照していただきたい。
1|AXA
(1)全体の状況3
2020年の新契約価値(NBVは、2019年に比べて2.4%減少(為替レートや範囲等を同一とした「比較ベース」では、4%増加、以下同様)して、24.80億ユーロとなった。主としてEquitable Holdings Inc.や中東欧の会社の売却に伴う影響が1.75億ユーロあった。

新契約マージン(NBV Margin4(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2019年に比べて横ばい(0.4%ポイント低下)で、3.7%となった。

新契約マージン(NBV Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2019年に比べて4.3%ポイント(1.1%ポイント)増加して、46.5%となった。Equitable Holdings Inc.の非連結化の修正等を行った比較ベースでの1.1%ポイントの増加は、主に、(i)アジアでの良好な商品構成を反映した貯蓄付保障におけるプラスの影響が、 (ii)主にフランスのグループ契約の売上高の増加による商品構成の不利な変化によって引き起こされたG/A貯蓄における悪影響によって、一部相殺されたことによる。

また、2019年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBPは、1.3%減少(15%増加)して、677.15億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APEは、11.4%減少(1.4%増加)して、53.36億ユーロとなった。これは、主に(i)国際契約の増加を反映したフランスの純保障、(ii)特にスイスにおけるG/A貯蓄付保障、及び(iii)フランスにおけるユニットリンク、の好調な売上が、(iv)G/A貯蓄へのエクスポージャーを減らすための戦略に沿って、COVID-19危機に関連して、特にフランス、中国、イタリアでのG/A貯蓄の売上減少により一部相殺された結果による。比較ウベースでのPVNBPの15%の増加は、主として割引率の低下による。

なお、新契約IRR(内部収益率)は、(4)で述べるような地域別の状況を反映して、0.7%ポイント増加して、16.5%となった。
生命保険事業の新契約の状況
 
3 ここでの具体的な数値は、(2)以下の図表等も参照していただきたい(以下、同様)。
4 これをそのまま翻訳すると「新契約価値マージン」となるが、ここでは他社に合わせて「新契約マージン」と翻訳している。
(2)新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、地域別内訳
新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、地域別内訳は、次ページの図表の通りとなっている。

商品タイプ別の内訳は、グループ全体では、保障が46%、医療が18%、一般勘定貯蓄が20%、ユニットリンクが14%、ミューチュアルファンド等が1%であった。

これらの商品タイプ別の構成比は、地域別に大きく異なっており、欧州では保障が4割を占め、医療、一般勘定貯蓄、ユニットリンクがそれぞれ2割程度となっているが、アジアではユニットリンクの構成比は低く、保障、医療及び一般勘定貯蓄が中心になっている。

これをさらに各国別で見てみると、欧州やアジア諸国間でも状況は一律ではなく、それぞれの国の保険市場の特徴が反映された形になっている。
2020年の新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、地域別内訳/2020年の新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、各国・地域別内訳(欧州)/2020年の新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、各国・地域別内訳(アジア)
(3)新契約マージン(対APE)の商品タイプ別状況
新契約マージン(対APE)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約年換算保険料について、2010年から2020年にかけては、保障・医療の構成比が31%から64%へと33%ポイントと大きく上昇したが、一般勘定貯蓄の構成比は25%から20%へ5%ポイント低下し、ユニットリンクの構成比は31% から14%へと17%ポイント低下した。

このような商品シフトを反映して、現在のような低金利下においても、販売や収益への影響を相対的に軽減できる対策を講じてきた結果として、全体の新契約マージン(対APE)は2010年の22%から、2020年の46.5%へと大きく上昇している。
新契約マージン(対APE)の商品タイプ別j状況
(4)新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の地域別状況
新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りである。

これによれば、新契約マージン(対APE)について、欧州では、ドイツとスイスが高い水準となっているが、フランスの水準はグループ全体の水準を下回っている。アジアでは日本の水準が高いものとなっているが、2019年との比較では、日本の水準がさらに高くなっている。

なお、IRRについては、フランスは、グループ保障に関する国際協定の強力な貢献により、+2.1%ポイント、欧州(フランス以外)は、主にイタリアでIRRが低いG/A貯蓄の売上が減少したことにより、+4.6%ポイントとなったが、アジアは、主に(i)日本における税制の変更に伴う保障のシェア減少が、(ii)香港における法定準備金の減少によって、一部相殺されて、▲0.7%ポイント、国際は、主にシンガポールとポーランドでの販売量の減少により、▲2.8%ポイントとなった。
新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の地域別状況
新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の各国・地域別状況(欧州)/新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の各国・地域別状況(アジア)
Allianz
(1)全体の状況
2020年の新契約価値(NBVは、2019年に比べて19.6%減少して、17,43億ユーロとなった。2019年との差額▲4.24億ユーロの内訳について、為替の変化▲0.33億ユーロ、スペイン事業の売却▲14億ユーロ、ドイツの高効率資本商品の販売低迷等の規模による影響▲1.99億ユーロ、米国における保証を引き下げた商品変更や高効率商品への商品シフト等の商品構成の改善+4.07億ユーロ、低金利下での経済環境の悪化が米国と欧州のポートフォリオに与えた影響▲5.85億ユーロ、としている。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、商品構成の改善、商品の価格見直しや継続的な優先商品へのシフトによる相殺はあったものの、金利の強力な低下により、2019年に比べて0.4%ポイント低下して、2.8%となった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2019年に比べて2.5%ポイント低下して、20.2%となった。

また、新契約保険料現在価値(PVNBPは、COVID-19による制限の影響を受けて、ドイツと米国において大きく減少したため、全体でも8.2%減少して614.97億ユーロとなった。新契約年換算保険料(APEは、一時払保険料が主として米国における固定インデックス年金の減少により、また継続保険料がイタリアにおける2019年の良好な一時的影響の反動によって減少したことにより、9.9%減少して、86.16億ユーロとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

なお、Allianzは、超低金利環境下で、商品面等で以下の調整を行ってきたと述べている。

・高資本効率商品へのシフト
・新契約保証利率を0.6%に引き下げることで、平均保証利率を2019年の1.93%から2020年に1.85%に引き下げ
・市場金利依存度の低い商品の導入により、金利感応度を低水準に
・価格機動性の向上
・ALMの改善

新契約保険料現在価値(PVNBP)の構成比は、保証付貯蓄&年金が13.6%(2019年は18.9%、以下同様)、高資本効率商品が44.6%(45.5%)、ユニットリンクが24.4%(20.2%)、保障&医療が17.4%(15.4%)、となっている。これにより、(保証付貯蓄・年金以外の)高資本効率商品等の会社の優先商品のシェアは、2015年の64%から2020年の86%に上昇した。

一方で、2020年の新契約マージン(対PVNBP)は、2019年と同様に、ほぼ横ばいだった保障・医療を除く他の商品タイプで低下した。
新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
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保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

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