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EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(5)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
中村 亮一
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国別の影響の問題は別として、これらの数字の因果関係の問題を解決することは難しい。LTG措置が特定の投資配分の原因であるというよりも、特定の措置を適用することを選択した会社は、そもそも保険会社の完全な代表例ではないかもしれない。
(3-1)債券の信用度
以下の図表は、MA、VA、TRFR又はTTPを適用した会社の債券ポートフォリオの信用度を示している。信用度は、0から6まで変化する信用度ステップ(CQS)で測定される。0は最も高い信用度を示し、6は最も低い信用度を示す。「投資適格」とみなされる社債は、通常、0と3の間のCQSを有する。
LTGを適用している会社と、自主的な措置を講じていない会社との間には、信用格付の格差が存在する。この違いはMA利用者のサブセットにおいて特に顕著である。しかしながら、 MAがスペインでのみ適用されるので、 MA利用者に対する投資の違いは国の要因によって説明される。VAを利用している企業では、その差は依然として大きく、CQS 0格付けの政府債が15%、CQS 0格付けの社債が16%である。全体的に、保有資産の大部分はCQS 0とCQS 3の間に格付けされており、LTG措置の使用にかかわらず投資適格である。
全体として、ここに示した2019年の結果は、過去数年の数字とよく似ている。国別に見ると、どちらの方向へのシフトも見られるが、明確な傾向は見られない。また、特に国債の場合、平均CQSの最も大きな変化は、異なるポートフォリオ構成ではなく、調整された格付けによるものと思われる。
LTG措置及び株式リスクに対する措置が会社の投資行動に与える影響についての情報を収集するために、EIOPAはNSAsに対して、長期投資家としての会社の行動の傾向に関する観察、それらの動向に関連する要因及び措置と観察された傾向との間の関連についての見解を尋ねた。
全体として、NSAsからの反応は前年の観察と同様であった。殆どのNSAsは、監督する保険会社の投資行動に関連性のある重要な傾向を確認していない。確認された傾向の殆どは、低金利が続いている状況下での利回り追求行動に関連している。いずれの観察も、ともかく達成が困難な、事実の証拠に基づいたLTG措置の適用と明確に関連するものではなかった。
2019年のNSAによる主な傾向は昨年と同様であった。5つのNSAsが、インフラ、住宅ローン、ローン、その他の不動産投資などのオルタナティブ投資への転換について明確に言及した、利回り追求型の調査を行った。あるNSAは、投資決定におけるESG基準の認識が高まっているとコメントした。NSAsは2020年上半期にこの傾向に有意な変化を観察しなかった。
7つのNSAsは、株式保有に関する具体的な動向について言及している。このうち、4つが微増、3つが微減を確認した。2020年上半期、NSAsはこの傾向に大きな変化は観察しなかったが、あるNSAは株式投資の増加を観測し、別のNSAはより活発な売買行動を観測した。資産配分の項で示したグラフを考慮すると、2018年から2019年にかけて、株式全体の保有がわずかに増加していることがわかる。
3つのNSAsは債券デュレーションの増加傾向を確認した。デュレーションが増加傾向を確認した2つのNSAsは、これが利回り追求型の行動に関連しているとした。
2つのNSAsは、投資の動向をLTG措置の適用と関連付けた。1つのNSAは、VAは、承認プロセスの要件により、市場における債券ポートフォリオの構成に影響を及ぼすことに言及した。他のNSAは、LTG措置が長寿再保険の増加の動機であると観察した。彼らは、長寿リスクの減少は保険会社がより多くの投資リスクを引き受けることを可能にすると観察した。
4―まとめ
次回の6回目のレポートでは、LTG措置や株式リスク措置が直接的に会社の財務状況に与える影響以外の項目のうち、消費者及び商品、EU保険市場における競争と公平な競争の場、金融安定性に与える影響について報告する。
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(2021年01月12日「保険・年金フォーカス」)
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