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EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(4)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
中村 亮一
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3―DBER及びEDの国別の適用状況(適用会社及びSCR比率への影響等)
1|DBER(デュレーションベースの株式リスクサブモジュール)
2019年12月31日時点においては、フランスの会社1社のみが適用しており、これは2018年と同様である。
当該会社のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)によれば、DBERを非適用にすることでSCR比率はDBER有り(ただし、TTP及びVA適用無し)の156%から132%へ24%ポイント低下する。
なお、2017年の報告書によれば、11カ国(チェコ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、リトアニア、ラトビア、オランダ、ポーランド、スロバキア、ブルガリア)で、DBERは国内法で規定されておらず、残りの国々では、以下の理由からDBERが適用されていない、としていた。
(1) 国内市場の商品がソルベンシーII指令第304条の基準を満たしていない。
(2) 会社が年金市場であまりアクティブでない。
(3) このサブモジュールへの必要性や関心が無い。
(4) ソルベンシーII指令第308条b(13)の株式移行措置4のため、DBERを適用するインセンティブが今のところない。ただし、移行措置の段階的消滅の過程でより多くの適用があるかもしれない。
4 2016年1月1日以前に購入した株式についての移行措置
2|ED(又はSA)(株式リスクチャージの対称調整メカニズム)
2020年の報告書においては、SAが会社の財務状況に与える影響に関する会社への情報要求はなかった。代わりに、SCRに対するSAの財務的影響はQRT(定量的報告テンプレート)データを使用して決定された。具体的には、株式の種類別エクスポジャー(タイプ1株式、タイプ2株式等)を用いて算出している。そして、SCR全体は基礎となる前提に基づいて集約されている。例えば、SAを削除する際に、リスク軽減手法の影響は考慮されていない。
2019年12月31日のSAは▲0.08%であったため、SAをゼロに設定しても、SCRの計算に適用される株式エクスポジャーに与える影響は無視できる程度であり、EEA及び各国レベルでも、SCRには殆ど影響しない。
4―ERPの国別の適用状況(適用会社及びSCR比率への影響等)
回復期間の延長は、NSAsからの要請に基づいて、EIOPAが「例外的に不利な状況(an exceptional adverse situation)」を宣言した時に適用されるが、これまでのところEIOPAはそのような要請を受けていない。
以下の図表は、2019年12月31日にSCRに違反した(適用された全てのLTG措置及び株式リスク措置を考慮した)会社数の推移及びその国別の内訳を示している。図表に記載されていない国では、全ての会社がSCRを満たしている。
これによれば、SCRに違反した会社の総数は、2018年12月31日の9社から2019年12月31日の12社に3社増加した。12社の内訳は、損害保険会社が5社、生命保険会社が1社、生損保兼営会社が2社、再保険会社が4社となっている。
(参考)英国における措置の適用とその影響
5―まとめ
Brexitにより、EEAの中でのMAの適用はスペインの会社だけに限定されることとなっている。なお、MAは英国において、引き続き極めて重要な位置付けを有する措置となっている。
また、2019年のSAは▲0.08%という水準であったため、その影響は限定的なものとなっている。
次回のこのテーマに関する5回目のレポートでは、EIOPAの報告書の第2のセクションに記載されているLTG措置や株式リスク措置が直接的に会社の財務状況に与える影響以外の項目のうち、保険契約者保護、保険会社の投資に与える影響について報告する。
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(2021年01月07日「保険・年金フォーカス」)
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