2020年09月03日

企業型DC限度額の見直し案と論点

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任   中嶋 邦夫

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今年(2020年)5月末に改正法が成立した直後にもかかわらず、6月中旬からは社会保障審議会の企業年金・個人年金部会で追加的な制度改正に向けた議論が進められている。この中で本誌読者の関心が高いものの1つが、企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額であろう。

現在の企業型DCの拠出限度額は、確定給付型の企業年金(確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、私学共済など。以下、DB等)に加入しているか否かと、企業型DCの規約で個人型への加入を認めているか否かによって細かく分かれている(図表1)。

今年5月末に成立した法改正では、2022年10月から個人型への加入に際して企業型DCの規約での規定が不要になり、個人型の拠出限度額は企業型の拠出額を勘案して決まることになった。具体的な拠出限度額は政令事項で法改正には含まれていないが、企業型と個人型を併用する場合は、現在のように企業型と個人型の拠出額を独立に管理する方式から、企業型と個人型の拠出額を合算して管理(ただし個人型の限度額は存置)する方式へと整理する方針が示された。

さらに7月の見直し案では、2022年10月の上記改正の施行に合わせて、企業型DCの拠出限度額を「5.5万円-DB等の仮想掛金額」に統一する方針が示された。DB等に加入していない場合は、仮想掛金額がゼロのため現行制度や法改正後の制度と変わりがない。しかし、DB等の仮想掛金額が2.75万円未満の場合は、企業型DCの拠出限度額が現行の2.75万円よりも増える。加入者1人あたりの標準掛金が月額2.75万円以下のDB制度は全体の91.7%占めており、見直し案は影響を受けるDBの大半にメリットをもたらすと見られている。
図表1:確定拠出年金の拠出限度額
しかし、この見直し案には2つの懸念がある。1点目は、DB等の仮想掛金額が2.75万円超の場合は、企業型DCの掛金を現在より引き下げる必要がある点である。前述のとおり、該当するDBは全体の1割未満に過ぎない。だが、これらの企業では、DBの運用面や会計上のリスクを減らすためにDB等の一部をDCに移換した企業が多いと考えられるため、DCの減額分をDBに戻すかや前払いなど他の方策をとるかなど、対応に苦慮することになるだろう。

6月の企業年金・個人年金部会では、DB等の仮想掛金額が2.75万円超でも現行の企業型DCの限度額(2.75万円)を経過措置として続ける意見が出たが、7月の同部会ではその意見が出なかった。限度額の5.5万円を引き上げる意見は出たが、厚生労働省は税制改正での交渉が困難という見方を示している。
図表2:見直し案に沿った確定拠出年金の拠出限度額のイメージ
懸念の2点目は、キャッシュ・バランス・プラン(CBP)では各加入者の持分付与額と仮想掛金額が一致しない点である。7月に示された案では、DB等の、将来の給付水準に向かって集団(加入者全体)で掛金と運用益を積み上げていく性質や、運用不振等で積立不足が生じた場合は企業が追加拠出する点を踏まえて、仮想掛金額を集団単位で計算し、集団内の各加入者の仮想掛金額は同一とする方針が示された。同部会では、年功賃金を仮定すれば年齢が高い人が有利だ(個人単位で計算する仮想掛金額が集団単位で計算したものを上回る)が、年齢が高い人は個人型への拠出余力が高いと考えられるのでこの方式でも妥当とする意見などが出た。

いわゆる伝統的なDBでは、個人単位の仮想掛金額が分かりにくいため、混乱は起こりにくいかも知れない。他方、CBPでは各加入者の持分付与額が通知されるため、仮想掛金額と持分付与額の違いを気にする加入者が現れる可能性がある。CBPでは持分付与額を仮想掛金額とするという特例も考えられるが、仮想掛金額の仕組みが複雑になるのが課題となるだろう。

いずれの点も、制度の分かりやすさときめ細かさをどう整理するか、今後の議論に注目したい。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

(2020年09月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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