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2020年06月09日
1――はじめに
EIOPA(欧州保険・年金監督局)は毎年、保険・年金分野における監督の統一に向けて方針を定めており、2020年はそれを既に2月に公表している。その方針の主な事項として、今回新規に追加されたのは、監督へのIOT技術の活用(SupTech)、年金基金分野の監督への対応、サイバー保険の開発の3つの領域である。それらに加えて、ソルベンシーIIのレビューに端を発して追加された、内部モデルの活用、責任準備金規定の整備、グループ監督の手法検討も挙げられている。
新型コロナウィルスの感染拡大とその対応に隠れている感はあるが、改めて監督の統一の方針をみておく。
新型コロナウィルスの感染拡大とその対応に隠れている感はあるが、改めて監督の統一の方針をみておく。
2――EIOPA監督統一方針の内容
1|基本的な考え方
改めてこれまでの大きな流れを確認しておく。
欧州各国における保険・年金の監督については、国毎にやり方が異なっている。各国の監督全体を束ねる役割を持っているEIOPAは、管轄地域の保険契約者や年金受給者の保護を行うことを最大の目的として、保険会社等の本社がどこの国かによらない統一された、効果的な監督を実施することを目指している。
ただし、監督の統一をどの国でも完全に同じものにするという意味ではなく、各国の市場特性を考慮して、重点的に取り組むべき分野を認識し、それを踏まえて適宜調整されることが想定されている。
監督が統一され、高い品質となった際には、以下の5項目の特徴が満たされるべきであるとされている。(まずはかなり抽象的な表現であるが、より具体的な項目はあとでみる。)
・リスクベースで評価されること
・規模や特性に応じたものであり、将来を見据えた予防の役割を果たすものであること
・積極的、挑戦的であり、現状に対し常に懐疑的であること
・実施を約束できるものであること、包括的な内容であること
・断固たる意志をもって実施するものであること
監督に使われるツールとしては、監督のガイドライン共通のベンチマークの構築 ガイドラインの作成、推奨事項の公表、意見表明、監督に関するハンドブックの作成、、監督者同士の意見交換や相互訪問、など多くのものが挙げられている。また、実践状況のレビューや、テーマ別の市場のレビューなども予定されている。
監督統一の優先事項の決定はリスクを考慮したものになる。その意味は、監督手法の統一は、各国が直面している問題の優先順位や、人・予算などの対応力に留意し、それぞれの抱える問題の程度をひとつひとつ評価しながら行われる、ということである。その結果、以下のような事項が優先して取り上げられることになった。
・保険契約者の保護および金融システムの安定に与える影響が大きい分野
ここでいう影響というのは、ただ単に、何らかのリスクが顕在化した際に影響を受ける保険契約者の数や損失金額だけのことだけを指すのではなく、潜在的な風評やビジネスモデルそのものに対する不安なども含まれる。
・EUの内外に関わらず、国ごとの監督の違いを利用する行動によって、公平公正な競争条件が脅かされやすい分野
・監督手法の統一が、実質的に未だ全くなされていない分野
改めてこれまでの大きな流れを確認しておく。
欧州各国における保険・年金の監督については、国毎にやり方が異なっている。各国の監督全体を束ねる役割を持っているEIOPAは、管轄地域の保険契約者や年金受給者の保護を行うことを最大の目的として、保険会社等の本社がどこの国かによらない統一された、効果的な監督を実施することを目指している。
ただし、監督の統一をどの国でも完全に同じものにするという意味ではなく、各国の市場特性を考慮して、重点的に取り組むべき分野を認識し、それを踏まえて適宜調整されることが想定されている。
監督が統一され、高い品質となった際には、以下の5項目の特徴が満たされるべきであるとされている。(まずはかなり抽象的な表現であるが、より具体的な項目はあとでみる。)
・リスクベースで評価されること
・規模や特性に応じたものであり、将来を見据えた予防の役割を果たすものであること
・積極的、挑戦的であり、現状に対し常に懐疑的であること
・実施を約束できるものであること、包括的な内容であること
・断固たる意志をもって実施するものであること
監督に使われるツールとしては、監督のガイドライン共通のベンチマークの構築 ガイドラインの作成、推奨事項の公表、意見表明、監督に関するハンドブックの作成、、監督者同士の意見交換や相互訪問、など多くのものが挙げられている。また、実践状況のレビューや、テーマ別の市場のレビューなども予定されている。
監督統一の優先事項の決定はリスクを考慮したものになる。その意味は、監督手法の統一は、各国が直面している問題の優先順位や、人・予算などの対応力に留意し、それぞれの抱える問題の程度をひとつひとつ評価しながら行われる、ということである。その結果、以下のような事項が優先して取り上げられることになった。
・保険契約者の保護および金融システムの安定に与える影響が大きい分野
ここでいう影響というのは、ただ単に、何らかのリスクが顕在化した際に影響を受ける保険契約者の数や損失金額だけのことだけを指すのではなく、潜在的な風評やビジネスモデルそのものに対する不安なども含まれる。
・EUの内外に関わらず、国ごとの監督の違いを利用する行動によって、公平公正な競争条件が脅かされやすい分野
・監督手法の統一が、実質的に未だ全くなされていない分野
2|具体的な項目
EIOPAは、2019年においても監督の統一は順調に進歩したと自己評価しているが、例えばソルバンシーIIのレビューなどを通じて、通常の規制と監督統一方針双方の観点から、さらに検討すべき課題が多いことがわかってきた。
そうした点を踏まえて、より具体的な項目が設定されているが、その優先順位は2019年のもの((1).共通の監督文化を実践する規定化 (2)監督の裁定を排除した公平な競争や国内市場に対するリスクへの対応 (3)エマージングリスクの監督)に加え、全く新しい3項目、すなわち
・監督へのIOT技術の利用 (いわゆるインシュアテックの監督版に相当し、SupTechと表現されている。)
・年金基金の監督に関する分野
・サイバーリスクに対応する保険の開発と管理
を追加し、ソルベンシーIIに関するレビューに端を発する項目として、内部モデルの検証、準備金の算出方法、、グループ監督の統一などの事項にも触れている。以下具体的に挙げられている項目である。
1.共通の監督文化を創造し実践するための、規定づくりへの取り組み
a.リスク評価の枠組みと、各国の実情に応じた適用
b.国内市場の共通のベンチマークの作成
c.コンダクトリスク監督の評価
d.グループレベルの監督
e.キャプティブの監督
f.各国間で共通項目を設定した情報交換を行い、規制適用の可否を検討すること
g.監督へのIOT技術の利用(新規)
より柔軟で素早い監督のために、EIOPAと各国監督者による、情報システム活用の確立
2.監督の裁定を排除した公平な競争や国内市場に対するリスクへの対応
a.責任準備金の算定
b.国境をまたぐ取引
c.内部モデルからの結果の評価
d.各国との情報交換による、各国における規制適用の可否の検討
e.リスク軽減手法と新しい財務エンジニアリングの利用
f.年金基金の監督に関する問題(新規)
年金基金に対する適切な監督を行うため、監督上のリスクを特定し、そのモニターを行っていく。また年金基金の監督の基準書の適用を、プルーデントパーソンルールの監督の実践から開始する。
3.エマージングリスクの監督
a.サイバーリスクを含むデータ管理、ITセキュリティ、経営リスク管理に関するもの
特に、サイバー攻撃に対応するサイバーセキュリティ対策が追加された。
b.インシュアテック
特に情報システム内の個人情報の保護の方針の策定については、新規ビジネスでの取り扱いや、競争の公平性・倫理的な配慮も含めて検討されるべきこととされている。
c.ブレグジットへの対応
d.ランオフ契約の監督
e.銀行間調達金利指標(IBOR)の改革への対応
f.サイバーリスクの保険引受け (新規)
どういったときにサイバーリスクが顕在化するか、システム面の脆弱性の評価の研究などを含むサイバーリスク管理を進展させることと、一方で、サイバーリスクに関わる保険引受けを促進すること。またそれに対する監督手法の検討。
EIOPAは、2019年においても監督の統一は順調に進歩したと自己評価しているが、例えばソルバンシーIIのレビューなどを通じて、通常の規制と監督統一方針双方の観点から、さらに検討すべき課題が多いことがわかってきた。
そうした点を踏まえて、より具体的な項目が設定されているが、その優先順位は2019年のもの((1).共通の監督文化を実践する規定化 (2)監督の裁定を排除した公平な競争や国内市場に対するリスクへの対応 (3)エマージングリスクの監督)に加え、全く新しい3項目、すなわち
・監督へのIOT技術の利用 (いわゆるインシュアテックの監督版に相当し、SupTechと表現されている。)
・年金基金の監督に関する分野
・サイバーリスクに対応する保険の開発と管理
を追加し、ソルベンシーIIに関するレビューに端を発する項目として、内部モデルの検証、準備金の算出方法、、グループ監督の統一などの事項にも触れている。以下具体的に挙げられている項目である。
1.共通の監督文化を創造し実践するための、規定づくりへの取り組み
a.リスク評価の枠組みと、各国の実情に応じた適用
b.国内市場の共通のベンチマークの作成
c.コンダクトリスク監督の評価
d.グループレベルの監督
e.キャプティブの監督
f.各国間で共通項目を設定した情報交換を行い、規制適用の可否を検討すること
g.監督へのIOT技術の利用(新規)
より柔軟で素早い監督のために、EIOPAと各国監督者による、情報システム活用の確立
2.監督の裁定を排除した公平な競争や国内市場に対するリスクへの対応
a.責任準備金の算定
b.国境をまたぐ取引
c.内部モデルからの結果の評価
d.各国との情報交換による、各国における規制適用の可否の検討
e.リスク軽減手法と新しい財務エンジニアリングの利用
f.年金基金の監督に関する問題(新規)
年金基金に対する適切な監督を行うため、監督上のリスクを特定し、そのモニターを行っていく。また年金基金の監督の基準書の適用を、プルーデントパーソンルールの監督の実践から開始する。
3.エマージングリスクの監督
a.サイバーリスクを含むデータ管理、ITセキュリティ、経営リスク管理に関するもの
特に、サイバー攻撃に対応するサイバーセキュリティ対策が追加された。
b.インシュアテック
特に情報システム内の個人情報の保護の方針の策定については、新規ビジネスでの取り扱いや、競争の公平性・倫理的な配慮も含めて検討されるべきこととされている。
c.ブレグジットへの対応
d.ランオフ契約の監督
e.銀行間調達金利指標(IBOR)の改革への対応
f.サイバーリスクの保険引受け (新規)
どういったときにサイバーリスクが顕在化するか、システム面の脆弱性の評価の研究などを含むサイバーリスク管理を進展させることと、一方で、サイバーリスクに関わる保険引受けを促進すること。またそれに対する監督手法の検討。
3――おわりに
監督の統一は、今直面している深刻な問題ばかりではないが、例えばサイバー保険などのように、あるいはインシュアテックとその監督版とも言えるSupTechなどのように、世の中全体の流れに対してキャッチアップしていく意味で、常に考えていくべきテーマであり、引き続き定期的にみていくことにより、保険・年金分野におけるタイムリーな問題の把握や理解につながるものと感じられる。
(2020年06月09日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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