2020年05月08日

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2019年決算数値等に基づく現状分析-

文字サイズ

3|Generali
(1)地域別の業績-2019年の結果-
Generaliは、欧州を中心に世界の50カ国以上で事業展開をしている。

各種の指標において、自国のイタリアに加えて、ドイツとフランスで高い構成比を有しているが、さらにその他の欧州における構成比も高いものとなっている。

生命保険と損害保険の市場シェア及びポジションについては、以下の通りとなっている。

・イタリア   : 生保17.3%(第2位)、損保14.1(第2位)、生損保合算では第1位
・ドイツ    : 生保9.1%、損保5.3%、合算で第2位
・フランス   : 生保5.1%(第8位)、損保4.4%、傷害&医療7.4%(第5位)
・ハンガリー  : 生保9.6%、損保18.9%、合算で第2位
・チェコ    : 生保23.8%、損保31.3%、合算で第2位
・スロバキア  : 生保8.2%、損保11.9%、合算で第3位
・オーストリア : 生保14.8%、損保15.5%、合算で第3位
・ポーランド  : 生保4.3%、損保3.6%、合算で第8位

一方で、他の欧州大手保険グループとは異なり、欧州域外でのプレゼンスは現時点では高くない。
保険事業の地域別内訳(2019年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2018年との比較-
2018年との比較では、生命保険全体では、増収増益となっている。

保険料(生保)は、イタリア、フランス、ドイツ等の主要国での好調な結果として、保障が7.6%、貯蓄が5.5%増加したことにより、全体でも5%増加した。営業利益(生保)は、技術的マージンと投資結果が好調だったことにより、2%増加した。

新契約価値は、2017年の53%という大幅進展に続いて、2018年にも3%の着実な進展を果たしていたこともあり、不利な経済環境による影響を金融保証のさらなる削減や商品構成の改善で賄いきれずに、5%のマイナス進展となった。
保険事業の地域別内訳(2018年から2019年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2018年から2019年に向けての増加額と進展率)
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Generaliは、2016年11月26日に開催した「投資家の日(Investor Day)」において、現在事業展開している市場を、1) 既に一定のプレゼンスを有して、規模があり魅力的な市場(6~9市場)、2) プレゼンスが十分でないが魅力的な市場(16~18市場)、③魅力的な市場でもなくプレゼンスも無い市場(13~15市場)、の3つに分類して、3) については合理化を進めることを計画している、と述べていた。

具体的には、保険事業に関して、2019年において、以下の取引が行われている。

・2019年1月 2日に、ベルギーの事業の Athora Holding への売却の完了

・2019年2月13日に、 Adriatic Slovenica とその子会社の取得完了(生保、損保、医療、年金商品を提供)

・2019年3月1日に、 Generali Worldwide 及び Generali Link の LCCG への売却完了

・2019年4月11日 ハンガリーとスロバキアにおける ERGO International AGの3つの会社の保険ポートフォリ オの取得に合意(監督及び独占禁止法上の認可を条件)

・2019年4月30日に、Generali Leben9の株式の 89.9%を Viridium Group に売却完了

・2019年5月24日に、英国支店の約 680 百万ユーロ(2018 年末)の負債を有する生命保険ランオフポート フォリオをRGA の子会社に売却する契約を締結

・2019年6月18日に、ポーランドでのUNION INVESTMENT TFI SAの買収を完了したことを公表

・2019年7月18日に、Apollo Wealth Management から、5億 1000万ユーロ(570 万ドル)で、サービス 会社の AdvanceCare と、一般的に Tranquilidade として知られる Seguradoras Unidas を買収することを表明していたが、2020 年 1 月 8 日にこの買収は完了(この買収により、ポルトガルで18.7%の市場シェアを有する2番目に大きい損害保険会社になる見込み)
 
9 Generali Lebenは、Generali Deutschlandの約4百万の保険契約の責任準備金の約36%を占めている。Generali Deutschlandは、2017年において、ドイツで9.6%の市場シェアを有し、160億ユーロの保険料収入があった。
4Aviva
(1)地域別の業績-2019年の結果-
Avivaは、世界の十数カ国で事業展開している。英国での生命及び貯蓄市場の市場シェアは、個人年金で第1位、個人とグループの保障で第2位となっており、カナダの損害保険は10%のシェアで第2位となっている。

Avivaの保険料、営業利益の9割程度は欧州からのものである。それ以外は、主としてアジアが占めている。欧州では、英国(生保&医療)が保険料では28%だが、営業利益では約6割を占めている。それ以外は英国(損保)、フランス及びポーランドの構成比が高く、これらにアイルランド、スペイン、イタリアの国々が有意な水準で続いている。

Avivaは、英国、フランス、ポーランド、アイルランド、イタリア、カナダ、シンガポール、Aviva  Investorsを8つの主要市場(Major markets)として位置付けている。なお、英国以外では、カナダが全て損害保険であるが、それ以外の国では生命保険が中心となっている。
保険事業の地域別内訳(2019年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2018年との比較-
2018年との比較では、各地域で保険料を順調に進展させており、営業利益も全体では6%増加した。

生命保険事業に関して、欧州では、フランスの保障事業の支払率上昇にも関わらず、フランスとイタリアの貯蓄契約の高利益が貢献し、アジアではシンガポールと中国が好調だった。

新契約価値は全体では2%増加したが、アジアでの進展率が高く、その構成比は17%に上昇した。
保険事業の地域別内訳(2018年から2019年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2018年から2019年に向けての増加額と進展率)
(参考)地域別ROEの状況
Avivaは、地域別のROEを開示しているが、各地域で10%を超える高いROEを計上し、全体でも13.4%で2018年の12.8%から増加させた。
保険事業のROE(資本収益率)の地域別状況
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Avivaは、保険事業に関して、ここ数年で事業展開を行う市場の集中化を図ってきており、市場の数を半減させてきていた。会社によれば、2017年までの取組みでこのプロセスは完了しており、これ以上事業展開地域を積極的に削減する方針はない、としていた。

ところが、2019年3 月に新しく Aviva のグループ CEO に就任した Maurice Tulloch 氏は、複雑な事業体構成を見直し、より強い説明責任と経営の焦点化を図る観点から、英国の生命保険と損害保険事業を分割し、またアジア事業の戦略的選択肢を検討していると述べていた。

これを受けて、2019 年11 月には、Aviva Investors と英国の貯蓄事業で、Investments Savings&Retirement(IS&R)と呼ばれる複合事業セグメントを形成する計画を発表している。

さらに、Avivaは、これまで、中国、香港、インド、トルコ、ベトナム、インドネシアの6つを戦略的投資市場として、成長特性を持つ人口の多い国として、主要な現地パートナーと協力して、長期的な成長を目指していく方針を示していたが、2019年11月18日に、新たなアジアにおける戦略的レビューに関する声明を公表し、その中で、香港、ベトナム、インドネシアでの事業の戦略的オプションを模索し続けていると述べた。

これを受けて、2019年11月には香港のJVの売却を公表し、また2020 年 3 月6日には、インドネシアのジョイントベンチャーPT Astra Aviva Life の持分をPT Astra International Tbkに売却することでインドネシア市場から撤退することを公表した。
5Aegon
(1)地域別の業績-2019年の結果-
Aegonは、世界の20カ国以上で事業展開している。

営業利益では、自国のオランダの構成比が32%、英国を中心としたその他の欧州が11%で、米国及び中南米からなる米州の構成比が56%と極めて高くなっている。

Transamericaのブランドを中心とする米国子会社グループは、2019年末の認容資産で、生命保険・健康保険グループで第11位(2018年末は第11位)となっている。ブラジルとメキシコで事業展開しているが、カナダの生命保険事業や資産管理事業は2015年7月に売却している。

また、損害保険事業は、欧州でのみ展開しているが、その全体における位置付けは高くない。
保険事業の地域別内訳(2019年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2018年との比較-
2018年との比較では、全体では、保険料及び営業利益とも数%減少した。

地域毎に見た場合も、保険料は、英国で大きく減少した。

営業利益については、欧州ではオランダにおいて支払率が低下したこと等から4%増加したが、米州では金利低下や信用スプレッドの縮小、さらには定期保険の継続率悪化等の影響により8%減少した。アジアでは良好な支払率の状況等から13%増加した。

新契約価値については、米州での減少の影響で、全体でも14%減少した。
保険事業の地域別内訳(2018年から2019年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2018年から2019年に向けての増加額と進展率)
(参考)地域別のROE
なお、Aegonは、地域別のROEを開示しているが、その状況は次ページの以下の通りである。

これによれば、アジアのROEは相対的に低いが、徐々に改善してきている。
保険事業のROE(資本収益率)の状況
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Aegonは、現在、自国のオランダや英国を中心とする欧州と、米国、ブラジル、メキシコを中心とする米州が2大地域となっているが、今後はアジア各国に事業展開を行って、その位置付けを高めていくことを目指していく、としている。

2010年から2017年までに、コアでない事業で50億ユーロを売却し、4カ国の保険事業から撤退している。さらに、ランオフポートフォリオの規模を大きく縮小してきている。一方で手数料ビジネスの規模を拡大してきている。

Aegonが主導的なポジションを得ることができる市場に焦点を当てるという観点から、2018年にはAegon Ireland の売却、米国の生命保険再保険事業の最後のブロックの売却、チェコとスロバキアの事業売却(2019 年 1 月 8 日に完了)を行う一方で、オランダのRobidusを取得(2018年9月10 日に完了)した。また、スペインと ポルトガルの収益性の改善を目指して、経営行動を起こしてきた。

これに対して、2019年に入ってからは、2019 年 5 月に、日本における変額年金ジョイントベンチャーの 50%持分をそのパートナーであるSony Lifeに売却することを公表していたが、 2020 年 1 月 29 日に完了している。

なお、2019年には重要な買収は行われていない。
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2019年決算数値等に基づく現状分析-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2019年決算数値等に基づく現状分析-のレポート Topへ