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- 業績の見通しを未定とする企業が増加
2020年04月24日
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■多くの企業が業績の見通しを未定に
年明け以降の株式市場は、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により大きく動揺した。日経平均は1月中旬には24,000円を超えていたが、2月に大きく下落し、3月には一時16,000円台をつけた。
現在は、3月の16,000円台と比較すると株価の水準は上がったが、各国がロックダウンを解除した場合に再び感染が拡大することへの懸念をはじめ、新型コロナウイルスの終息時期はいまだ見えず、予断を許さない状況が続いている。
通常であれば決算発表と合わせて今期の業績見通しが各企業から発表され、株式市場でも注目を集める。しかし、新型コロナウイルスの終息時期や経済に与える影響が見極めきれない状況で、業績の見通しを未定とする企業は増えている。
図表は、2020年1月以降に本決算を発表した東証1部上場企業のうち、本決算発表時に業績の見通しが未発表だった企業数をまとめたものである。
1月及び2月に決算発表をおこなった企業のほぼすべてが、業績見通しを発表していた。しかし3月には15%、4月に入ってからは過半数の企業が業績見通しを発表しなかった。新型コロナウイルスの世界中での感染拡大や、ロックダウンによる経済活動の低下により、急遽、業績見通しの見直しが必要となり、多くの企業が業績見通しを「未定」とせざるを得なかったのだろう。
現在は、3月の16,000円台と比較すると株価の水準は上がったが、各国がロックダウンを解除した場合に再び感染が拡大することへの懸念をはじめ、新型コロナウイルスの終息時期はいまだ見えず、予断を許さない状況が続いている。
通常であれば決算発表と合わせて今期の業績見通しが各企業から発表され、株式市場でも注目を集める。しかし、新型コロナウイルスの終息時期や経済に与える影響が見極めきれない状況で、業績の見通しを未定とする企業は増えている。
図表は、2020年1月以降に本決算を発表した東証1部上場企業のうち、本決算発表時に業績の見通しが未発表だった企業数をまとめたものである。
1月及び2月に決算発表をおこなった企業のほぼすべてが、業績見通しを発表していた。しかし3月には15%、4月に入ってからは過半数の企業が業績見通しを発表しなかった。新型コロナウイルスの世界中での感染拡大や、ロックダウンによる経済活動の低下により、急遽、業績見通しの見直しが必要となり、多くの企業が業績見通しを「未定」とせざるを得なかったのだろう。
しかし、従来どおりに業績の見通しを発表した企業についても、新型コロナウイルスの影響を完全には織り込めていないところがほとんどであろう。特に1月及び2月は、新型コロナウイルスが現在ほど深刻な状況になるとは想定されていなかったこともある。1月及び2月に業績の見通しを発表した企業であっても今となっては実態を十分に反映しているとは言いがたく、新型コロナウイルスの影響を含めた見通しを算出することは非常に困難な状況にあると思われる。
まもなく本格化する3月本決算企業の決算発表においても、決算発表延期や業績の見通しを未定とする企業は多いだろう。
まもなく本格化する3月本決算企業の決算発表においても、決算発表延期や業績の見通しを未定とする企業は多いだろう。
■緊急事態にこそ、積極的な情報発信が望まれる
近年、広がりをみせてきたコーポレート・ガバナンスや企業と株主の対話重視の姿勢も、現在の状況では当面、維持することは難しいであろう。しかし、このような状況だからこそ、各企業が株主に対してどういう情報発信をするか等を含め、どのような姿勢をみせるのかが重要だ。
業績の見通しを例年通りに発表することが難しかったとしても、例えば、新型コロナウイルスが2020年夏までに終息した場合、1年後の2021年までに終息した場合などいくつかのシナリオに沿った見通しを提示することは可能ではないだろうか。
単に「新型コロナだから未定」だけでは投資家は判断材料が無く、業績に対する不透明感が高まるばかりだ。その場合、無用な株式売却に繋がる可能性もある。一方、複数のシナリオと業績見通しが提供されれば、あとは投資家が選択するなり複数シナリオを組み合わせて活用することなどが可能になる。
新型コロナ後の話をするのは時期尚早ではあるが、危機対応時にも工夫して情報提供する企業に対する投資家からの評価は、結果的に向上していくのではないだろうか。不特定多数の投資家から資金調達している上場企業として、企業には時間がかかったとしても可能な範囲での情報や見通しを提供していただけることを願いたい。
一方、投資家サイドも企業にあまり無理な情報提供等の要求をしないなど、非常事態であることに配慮した冷静な行動が求められるのではないだろうか。
業績の見通しを例年通りに発表することが難しかったとしても、例えば、新型コロナウイルスが2020年夏までに終息した場合、1年後の2021年までに終息した場合などいくつかのシナリオに沿った見通しを提示することは可能ではないだろうか。
単に「新型コロナだから未定」だけでは投資家は判断材料が無く、業績に対する不透明感が高まるばかりだ。その場合、無用な株式売却に繋がる可能性もある。一方、複数のシナリオと業績見通しが提供されれば、あとは投資家が選択するなり複数シナリオを組み合わせて活用することなどが可能になる。
新型コロナ後の話をするのは時期尚早ではあるが、危機対応時にも工夫して情報提供する企業に対する投資家からの評価は、結果的に向上していくのではないだろうか。不特定多数の投資家から資金調達している上場企業として、企業には時間がかかったとしても可能な範囲での情報や見通しを提供していただけることを願いたい。
一方、投資家サイドも企業にあまり無理な情報提供等の要求をしないなど、非常事態であることに配慮した冷静な行動が求められるのではないだろうか。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年04月24日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
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