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2020年04月07日
欧州大手保険グループの2019年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
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4|自己資本の内訳
ソルベンシーIIの資本要件に算入可能な各種自己資本は、劣後性や損失吸収性、期間といった資本適格性からTier1~Tier3 に分類2され、 それぞれについて算入制限が設定されている。具体的には、SCRのための適格自己資本については、「Tier1(無制限)は無制限、Tier1(制限付)はTier1全体の20%未満、Tier3 はSCRの15%未満、Tier2とTier3の合計でSCRの50%未満」となっている。
各社とも、着実にTier1の割合を高めてきており、自己資本のうち、Tier1の自己資本が8割から9割程度、さらに、Tier1(無制限)がそのうちの8割から9割程度を占めている。
各社とも、既存のTier1 やTier2の劣後債務について、グランド・ファザーリング・ルール(既得権認容ルール)を適用しているが、こうした債務については、早期償還等を行い、段階的にソルベンシーII適格なものに変更してきている。
2019年末における自己資本の内訳については、基本的には、各社とも2018年末から大きく変化しているわけではないが、Tier1(無制限)を中心に残高を増加させている。
ソルベンシーIIの資本要件に算入可能な各種自己資本は、劣後性や損失吸収性、期間といった資本適格性からTier1~Tier3 に分類2され、 それぞれについて算入制限が設定されている。具体的には、SCRのための適格自己資本については、「Tier1(無制限)は無制限、Tier1(制限付)はTier1全体の20%未満、Tier3 はSCRの15%未満、Tier2とTier3の合計でSCRの50%未満」となっている。
各社とも、着実にTier1の割合を高めてきており、自己資本のうち、Tier1の自己資本が8割から9割程度、さらに、Tier1(無制限)がそのうちの8割から9割程度を占めている。
各社とも、既存のTier1 やTier2の劣後債務について、グランド・ファザーリング・ルール(既得権認容ルール)を適用しているが、こうした債務については、早期償還等を行い、段階的にソルベンシーII適格なものに変更してきている。
2019年末における自己資本の内訳については、基本的には、各社とも2018年末から大きく変化しているわけではないが、Tier1(無制限)を中心に残高を増加させている。
2 Tier1(無制限)は払込資本や剰余金等、Tier1(制限付)はグランド・ファザーリング・ルールに基づく劣後債務、Tier2は、劣後債務、Tier3は繰延税金資産等である。
5|SCRのリスク別及び地域別内訳
SCRのリスク別及び地域別内訳の開示については、以下の図表が示すように、各社の事業構成等を反映する形で、リスクの分類の方式等が異なっている。
リスク別では、各社とも市場リスクや信用リスクのウェイトが高くなっている。ここで、図表の「信用」に、(1)デフォールト、スプレッド拡大、格付変更のリスクを全て含めている会社と、(2)これらを一部区分して開示している会社、がある点には注意が必要である。
生命保険と損害保険のウェイトが共に高い会社を中心に、保険引受けリスクの構成比も高いものとなっている。オペレーショナル・リスクについては、ほぼ各社とも数%から1割程度の構成比となっている。
また、地域別内訳は、各社の地域別事業展開を反映したものとなっている。
SCRのリスク別及び地域別内訳の開示については、以下の図表が示すように、各社の事業構成等を反映する形で、リスクの分類の方式等が異なっている。
リスク別では、各社とも市場リスクや信用リスクのウェイトが高くなっている。ここで、図表の「信用」に、(1)デフォールト、スプレッド拡大、格付変更のリスクを全て含めている会社と、(2)これらを一部区分して開示している会社、がある点には注意が必要である。
生命保険と損害保険のウェイトが共に高い会社を中心に、保険引受けリスクの構成比も高いものとなっている。オペレーショナル・リスクについては、ほぼ各社とも数%から1割程度の構成比となっている。
また、地域別内訳は、各社の地域別事業展開を反映したものとなっている。
4―まとめ
以上、各社のプレス・リリース資料等に基づいて、欧州大手保険グループの2019年末のSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告してきた。
決算公表時点でのソルベンシーに関する情報提供は、必ずしも十分なものではない面もある。AXA、Allianz及びGeneraliは、「OWN FUNDS REPORT」(Allianzの例)等の名称のレポートを作成しているが、さらに詳しい内容については、今後公表されてくるSFCRで報告されていくことになる。
次回のレポートでは、各社のSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告する。
決算公表時点でのソルベンシーに関する情報提供は、必ずしも十分なものではない面もある。AXA、Allianz及びGeneraliは、「OWN FUNDS REPORT」(Allianzの例)等の名称のレポートを作成しているが、さらに詳しい内容については、今後公表されてくるSFCRで報告されていくことになる。
次回のレポートでは、各社のSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告する。
(2020年04月07日「保険・年金フォーカス」)
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