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 - 公私年金改正案の要点と課題
 
2020年03月06日
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                                            2019年12月の社会保障審議会年金部会と同企業年金・個人年金部会で「議論の整理」という形で改正案が取りまとめられ、2020年3月にこれらを基にした改正法案が国会へ提出される見込みである*1。本稿では、取りまとめられた改正案の要点と将来的な課題を確認する。
1│改正案の要点:加入対象者が公私年金で連動する形へ
            1│改正案の要点:加入対象者が公私年金で連動する形へ
                                                        大きな改正点は、公的年金では厚生年金の適用拡大、私的年金(企業年金・個人年金)では確定拠出年金の加入可能要件の拡大であり、これらが連動しているのが今回の要点と言えよう。厚生年金の適用拡大では、短時間(パート)労働者の場合、対象となる企業規模が正社員*2 501人以上から51人以上へと拡大され、勤務期間要件が1年超の雇用見込みから正社員と同じ2か月超の雇用見込みへと拡大される。さらに、正社員も含めて、2か月超の雇用見込みがある場合は、雇用契約の当初から厚生年金の適用対象となる*3。
確定拠出年金の加入可能要件は、企業型は厚生年金加入者、個人型(iDeCo)は国民年金加入者へと改められる。拡大規模は大きくないが*4、公的年金の適用対象との自動連動化がポイントである。加えて、個々の企業年金での加入資格について、「同一労働同一賃金ガイドライン」の基本的な考え方の踏襲が法令解釈通知に明記される見込みであり、非正規労働者に対する企業年金の拡大が期待されている。
                                            2│将来的な課題:公私年金の役割分担の再整理
今回の改正では、公的年金給付の今後の目減りを考慮して、厚生年金と私的年金の対象者が拡大され、繰下げ受給による毎年の年金額の増額も促進される。しかし、今後の公的年金の目減りは基礎年金が中心であるため、現役時代に賃金が少ないほど年金額全体の目減りが大きくなる*5。
 
私的年金への加入や公的年金の繰下げ受給には企業や個人の経済的な余力が必要であることを考えれば、公私年金の役割分担を総合的に再整理しながら、各制度の将来的な見直しを検討していく必要があるだろう*6。
 
※本稿は2020年1月7日に弊社ホームページへ掲載したショートレポートを再構成している。
[*1]公的年金の改正と企業年金・個人年金(iDeCo)の改正とが一体になった1つの改正法案になる予定。
[*2]厳密には、短時間労働者ではない通常の厚生年金の加入者。
[*3]例えば2か月の雇用契約を更新する場合、現行では更新後のみ(=3か月目から)が厚生年金の適用対象となる。
[*4]企業型の拡大対象は、60歳前と異なる事業所で働く60代前半の厚生年金加入者と、65歳以上の厚生年金加入者である。個人型の拡大対象は、60歳以上で任意加入している国民年金加入者と、60代前半の厚生年金加入者である。
[*5]例えば、拙稿「年金改革ウォッチ 2018年7月号~ポイント解説:基礎年金の水準低下」を参照。
[*6]例えば英国では、日本の厚生年金(2階部分)に当たる制度を定額給付に変更し、私的年金の優遇枠を青天井に近い形とし、低~中所得者には企業拠出を伴う私的年金への加入を半強制化し、私的年金の受給方法の制約を緩和した。ただし英国等の諸外国を参照する際は、制度改正が成功したか否かや日本との環境の違いに十分留意する必要がある。
 
                                    
            今回の改正では、公的年金給付の今後の目減りを考慮して、厚生年金と私的年金の対象者が拡大され、繰下げ受給による毎年の年金額の増額も促進される。しかし、今後の公的年金の目減りは基礎年金が中心であるため、現役時代に賃金が少ないほど年金額全体の目減りが大きくなる*5。
私的年金への加入や公的年金の繰下げ受給には企業や個人の経済的な余力が必要であることを考えれば、公私年金の役割分担を総合的に再整理しながら、各制度の将来的な見直しを検討していく必要があるだろう*6。
※本稿は2020年1月7日に弊社ホームページへ掲載したショートレポートを再構成している。
[*1]公的年金の改正と企業年金・個人年金(iDeCo)の改正とが一体になった1つの改正法案になる予定。
[*2]厳密には、短時間労働者ではない通常の厚生年金の加入者。
[*3]例えば2か月の雇用契約を更新する場合、現行では更新後のみ(=3か月目から)が厚生年金の適用対象となる。
[*4]企業型の拡大対象は、60歳前と異なる事業所で働く60代前半の厚生年金加入者と、65歳以上の厚生年金加入者である。個人型の拡大対象は、60歳以上で任意加入している国民年金加入者と、60代前半の厚生年金加入者である。
[*5]例えば、拙稿「年金改革ウォッチ 2018年7月号~ポイント解説:基礎年金の水準低下」を参照。
[*6]例えば英国では、日本の厚生年金(2階部分)に当たる制度を定額給付に変更し、私的年金の優遇枠を青天井に近い形とし、低~中所得者には企業拠出を伴う私的年金への加入を半強制化し、私的年金の受給方法の制約を緩和した。ただし英国等の諸外国を参照する際は、制度改正が成功したか否かや日本との環境の違いに十分留意する必要がある。
(2020年03月06日「基礎研マンスリー」)
                                        03-3512-1859
経歴
                            - 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学) 
中嶋 邦夫のレポート
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【公私年金改正案の要点と課題】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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