2020年02月19日

貿易統計20年1月-欧米向けを中心に輸出の低迷が継続、2月以降は新型肺炎の影響で落ち込み幅が拡大する公算

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字(季節調整値)が拡大

財務省が2月19日に公表した貿易統計によると、20年1月の貿易収支は▲13,126億円の赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲16,819億円、当社予想は▲16,690億円)を上回る結果となった。輸出が前年比▲2.6%(12月:同▲6.3%)と減少幅が縮小し、輸入の減少幅(12月:前年比▲4.9%→1月:同▲3.6%)を下回ったため、貿易収支は前年に比べ1,051億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.6%(12月:同▲1.9%)、輸出価格が前年比▲1.0%(12月:同▲4.6%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲1.3%(12月:同1.2%)、輸入価格が前年比▲2.3%(12月:同▲6.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 原数値の貿易収支が大幅な赤字となったのは、1月が正月休みの影響で輸出が少なく貿易赤字になりやすいという季節性による部分もあるが、季節調整済の貿易収支も▲2,241億円と11ヵ月連続の赤字となり、12月の▲1,072億円から赤字幅が拡大した。輸出の減少幅(前月比▲3.7%)が輸入の減少幅(同▲1.8%)を上回った。

1月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=70.4ドル(当研究所による試算値)となり、12月の67.2ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は50ドル台半ばとなっており、通関ベースの原油価格は2月以降、大きく低下することが見込まれる。

2.2月以降は新型肺炎の影響で輸出が大きく落ち込む公算

20年1月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲8.9%(12月:同▲11.4%)、EU向けが前年比▲5.5%(12月:同▲6.8%)、アジア向けが前年比▲1.5%(12月:同0.5%)となった。

20年1月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比5.2%(12月:同▲1.0%)、EU向けが前月比▲2.0%(12月:同1.3%)、アジア向けが前月比▲1.0%(12月:同▲0.8%)、全体では前月比▲3.8%(12月:同2.9%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移
1月は米国向けが前月比で高い伸びとなったが、19年後半の急速な落ち込みの反動による部分が大きい。自動車は引き続き前年比で二桁のマイナスとなっており、持ち直しの判断は尚早だ。

一方、アジア向けは前月比でマイナスとなったが、中華圏の春節が1月下旬(昨年は2月初旬)だったことを考慮すれば、それほど弱い動きとは言えない。グローバルなITサイクルの底打ちを受けて半導体電子部品などのIT関連品目が持ち直しを続けている。ただし、2月以降は、新型肺炎の感染拡大による中国現地工場の操業停止を受けて、中国向けの輸出が大きく落ち込むことが避けられないだろう。なお、1月の中国向け輸出数量は前年比▲4.8%(12月:同5.7%)、前月比▲8.1%(12月:同2.0%)であった(前月比は当研究所の季節調整値による)。

20年1-3月期のGDP統計では、欧米向けを中心とした輸出の低迷が続く中で、新型肺炎の影響で中国向けの輸出が減少すること、訪日客の急減でサービスの輸出も落ち込むことから、外需寄与度が大幅なマイナスとなる可能性が高い。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年02月19日「経済・金融フラッシュ」)

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