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2020年02月19日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(6)-EIOPAの2019年報告書の概要報告-
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1―はじめに
これまでの5回のレポートでは、EIOPA(欧州保険年金監督局)が2019年12月17日に公表した「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2019(Report on long-term guarantees measures and measures on equity risk 2019)」1に基づいて、EU(欧州連合)のソルベンシーIIにおける長期保証(Long-Term Guarantees:LTG)措置及び株式リスク措置に関しての保険会社の適用状況やその財務状況に及ぼす影響について、全体的な状況及び措置毎、国別、会社毎の状況の概要を報告した。さらに、EIOPAの報告書の第2のセクションに記載されているLTG措置や株式リスク措置が直接的に会社の財務状況に与える影響以外の項目のうちの保険契約者保護、保険会社の投資に与える影響について報告した。
今回のレポートでは、EIOPAの報告書の第2のセクションに記載されているLTG措置や株式リスク措置が直接的に会社の財務状況に与える影響以外の項目のうちの、「消費者及び商品に与える影響」、「EU保険市場における競争と公平な競争の場」及び「金融安定性に与える影響」について報告する2,3。
以下の章では、UFR(Ultimate Forward Rate:終局フォワードレート)の使用、MA(マッチング調整)、VA(ボラティリティ調整)、TRFR(リスクフリー金利に関する移行措置)、TTP(技術的準備金に関する移行措置)、ERP(ソルベンシー資本要件に準拠しない場合の回復期間の延長)、ED(又はSA)(株式リスクチャージの対称調整メカニズム)、DBER(デュレーションベースの株式リスクサブモジュール)といった8つのLTG措置及び株式リスク措置の中から、MA、VA、TRFR、TTPの4つの措置を中心に、これらが先に掲げたそれぞれの項目に与える影響についての分析結果を報告している。
1 News
https://eiopa.europa.eu/Pages/News/EIOPA-publishes-its-fourth-annual-analysis-on-the-use-and-impact-of-long-term-guarantees-measures-and-measures-on-eq-ri.aspx
報告書
https://eiopa.europa.eu/Publications/Reports/LTG%20Report%202019.pdf
2 前回のレポートで述べたように、以下の図表及び図表の数値は、特に断りが無い限り、EIOPAの「長期保証措置と株式リスクに対する措置に関する報告書2019」からの抜粋によるものであり、必要に応じて、筆者による分析数値を加えたり、表の項目の順番を変更する等の修正を行っている。
3 LTG措置や株式リスク措置の具体的説明については、「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2019年報告書の概要報告-」を参照していただきたい。
今回のレポートでは、EIOPAの報告書の第2のセクションに記載されているLTG措置や株式リスク措置が直接的に会社の財務状況に与える影響以外の項目のうちの、「消費者及び商品に与える影響」、「EU保険市場における競争と公平な競争の場」及び「金融安定性に与える影響」について報告する2,3。
以下の章では、UFR(Ultimate Forward Rate:終局フォワードレート)の使用、MA(マッチング調整)、VA(ボラティリティ調整)、TRFR(リスクフリー金利に関する移行措置)、TTP(技術的準備金に関する移行措置)、ERP(ソルベンシー資本要件に準拠しない場合の回復期間の延長)、ED(又はSA)(株式リスクチャージの対称調整メカニズム)、DBER(デュレーションベースの株式リスクサブモジュール)といった8つのLTG措置及び株式リスク措置の中から、MA、VA、TRFR、TTPの4つの措置を中心に、これらが先に掲げたそれぞれの項目に与える影響についての分析結果を報告している。
1 News
https://eiopa.europa.eu/Pages/News/EIOPA-publishes-its-fourth-annual-analysis-on-the-use-and-impact-of-long-term-guarantees-measures-and-measures-on-eq-ri.aspx
報告書
https://eiopa.europa.eu/Publications/Reports/LTG%20Report%202019.pdf
2 前回のレポートで述べたように、以下の図表及び図表の数値は、特に断りが無い限り、EIOPAの「長期保証措置と株式リスクに対する措置に関する報告書2019」からの抜粋によるものであり、必要に応じて、筆者による分析数値を加えたり、表の項目の順番を変更する等の修正を行っている。
3 LTG措置や株式リスク措置の具体的説明については、「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2019年報告書の概要報告-」を参照していただきたい。
2―LTG措置等による消費者及び商品への影響
1|長期保証商品の入手可能性の推移
2018年のLTG報告書には、商品環境の詳細な分析が含まれている。この分析は、欧州保険市場と長期保証付き商品の入手可能性の全体像を示すための一時的なものであったため、2019年のLTG報告書では繰り返していない。今年の報告書のために、NSAs(National Supervisory Authorities:各国監督当局)は前回の報告書以降に市場で観察した新しい傾向についてコメントするよう求められている。
2018年の報告書では、約半数の国・地域で、長期保証付きの伝統的な生命保険商品の利用可能性が減少及びユニットリンク契約の利用可能性の増加を観測した。昨年この傾向を観察した全ての管轄区域は、この傾向は今年も続いていると回答した。
新たに観察された唯一の傾向は、特定の種類の商品の入手可能性との関係である。あるNSA(イタリア)は、個人支払保障保険(PPI)の量の回復を観察した。別のNSA(リトアニア)は、会社が投資と保険関連の部分を二つの異なる商品に分離することによって、より洗練されていない商品に向かっていることを観察した。
2018年のLTG報告書には、商品環境の詳細な分析が含まれている。この分析は、欧州保険市場と長期保証付き商品の入手可能性の全体像を示すための一時的なものであったため、2019年のLTG報告書では繰り返していない。今年の報告書のために、NSAs(National Supervisory Authorities:各国監督当局)は前回の報告書以降に市場で観察した新しい傾向についてコメントするよう求められている。
2018年の報告書では、約半数の国・地域で、長期保証付きの伝統的な生命保険商品の利用可能性が減少及びユニットリンク契約の利用可能性の増加を観測した。昨年この傾向を観察した全ての管轄区域は、この傾向は今年も続いていると回答した。
新たに観察された唯一の傾向は、特定の種類の商品の入手可能性との関係である。あるNSA(イタリア)は、個人支払保障保険(PPI)の量の回復を観察した。別のNSA(リトアニア)は、会社が投資と保険関連の部分を二つの異なる商品に分離することによって、より洗練されていない商品に向かっていることを観察した。
2|保証規模の推移
保証規模に関しては、昨年に引き続き、大半の国・地域で保証規模・期間の縮小が見られた。この主な要因としては、低金利環境、特に技術的準備金やSCR(ソルベンシー資本要件)の算定における、ソルベンシーIIにおける低金利環境下での保証コストに起因する保証コストの上昇が挙げられる。
保証規模に関しては、昨年に引き続き、大半の国・地域で保証規模・期間の縮小が見られた。この主な要因としては、低金利環境、特に技術的準備金やSCR(ソルベンシー資本要件)の算定における、ソルベンシーIIにおける低金利環境下での保証コストに起因する保証コストの上昇が挙げられる。
3|消費者の不利益
昨年と同様に、大多数のNSAsは、長期保証付き商品の入手可能性の現在の傾向が消費者保護の問題を引き起こしていないことを認めた。しかしながら、消費者被害の具体的な事例として、NSAsが観察している2つの事例はいずれも、保険契約者に高金利保証付きの伝統的な商品からの転換を奨励する会社に関連している。
一例を挙げると、あるNSA(フィンランド)は、将来利回りが楽観的すぎるユニットリンク商品を保険契約者に示し、高い保証付き商品からの転換を促す会社が観察された。同じNSAは、よりリスクの高い商品をより高い費用構造で保険契約者に提供している会社も観察した。別のNSA(チェコ)は、保険契約者は不利な解約価額を与えられたり、高保証の商品から低保証の商品への転換を強制されたりしたと述べている。
消費者の不利益の特定の症例を特定した2つのNSAを含む多くのNSAsは、彼らが年間を通して活動や対策を行っていることを示した。これには次のものが含まれる。
・消費者側面に焦点を当てた、特定の商品のテーマ別レビュー
・保険ブローカー、仲介業者、ファイナンシャル・アドバイザーの行動へのフォーカス
・市場調査により、トレンドをより迅速に特定
・消費者保護リスクに基づく早期警戒システムの実施
昨年と同様に、大多数のNSAsは、長期保証付き商品の入手可能性の現在の傾向が消費者保護の問題を引き起こしていないことを認めた。しかしながら、消費者被害の具体的な事例として、NSAsが観察している2つの事例はいずれも、保険契約者に高金利保証付きの伝統的な商品からの転換を奨励する会社に関連している。
一例を挙げると、あるNSA(フィンランド)は、将来利回りが楽観的すぎるユニットリンク商品を保険契約者に示し、高い保証付き商品からの転換を促す会社が観察された。同じNSAは、よりリスクの高い商品をより高い費用構造で保険契約者に提供している会社も観察した。別のNSA(チェコ)は、保険契約者は不利な解約価額を与えられたり、高保証の商品から低保証の商品への転換を強制されたりしたと述べている。
消費者の不利益の特定の症例を特定した2つのNSAを含む多くのNSAsは、彼らが年間を通して活動や対策を行っていることを示した。これには次のものが含まれる。
・消費者側面に焦点を当てた、特定の商品のテーマ別レビュー
・保険ブローカー、仲介業者、ファイナンシャル・アドバイザーの行動へのフォーカス
・市場調査により、トレンドをより迅速に特定
・消費者保護リスクに基づく早期警戒システムの実施
3―LTG措置等のEU保険市場における競争と公平な競争の場への影響
1|調査概要
競争及び公平な競争の場に関するトピックは、ソルベンシーII指令の第77f条第3項(c)のLTG措置及び株式リスク措置の見直しのための関連項目のリストに含まれている。これは、2017年の報告以降に取り上げられている(当時のデータ不足とトピックに関する限られた経験のため、最初の報告には含まれていなかった)。
LTG措置及び株式リスク措置の競争に対する影響を観察したかどうかという質問に答えて、NSAsの大多数はそのような観察を報告しなかった。
ただし、以下の項目が観察されたと報告している。
・あるNSAは、VAがユーロ圏諸国に適用したオーバーシュート効果が競争に影響を与えていると指摘した。これは、それらが技術的準備金、自己資本及びSCR比率に関して、特に、ポートフォリオが経験するスプレッド・ボラティリティよりもはるかに高いレベルのスプレッド・ボラティリティを表現するVAを適用する会社に対して、メリットを生み出すからである。逆に、VA式のアンダーシュート効果は競争に負の影響を与えるが、これは2018年に経験したように、VAの国別構成要素の実施の困難さのために重要である。
・別のNSAは、LTG措置はSCR比率の比較可能性を歪めているとコメントしている。なぜなら、文脈や出版物によっては、LTG措置がある場合とない場合のSCRの区別が十分に明らかにされておらず、措置を適用する会社はその重要性や影響を強調することに関心がないからである。
競争及び公平な競争の場に関するトピックは、ソルベンシーII指令の第77f条第3項(c)のLTG措置及び株式リスク措置の見直しのための関連項目のリストに含まれている。これは、2017年の報告以降に取り上げられている(当時のデータ不足とトピックに関する限られた経験のため、最初の報告には含まれていなかった)。
LTG措置及び株式リスク措置の競争に対する影響を観察したかどうかという質問に答えて、NSAsの大多数はそのような観察を報告しなかった。
ただし、以下の項目が観察されたと報告している。
・あるNSAは、VAがユーロ圏諸国に適用したオーバーシュート効果が競争に影響を与えていると指摘した。これは、それらが技術的準備金、自己資本及びSCR比率に関して、特に、ポートフォリオが経験するスプレッド・ボラティリティよりもはるかに高いレベルのスプレッド・ボラティリティを表現するVAを適用する会社に対して、メリットを生み出すからである。逆に、VA式のアンダーシュート効果は競争に負の影響を与えるが、これは2018年に経験したように、VAの国別構成要素の実施の困難さのために重要である。
・別のNSAは、LTG措置はSCR比率の比較可能性を歪めているとコメントしている。なぜなら、文脈や出版物によっては、LTG措置がある場合とない場合のSCRの区別が十分に明らかにされておらず、措置を適用する会社はその重要性や影響を強調することに関心がないからである。
VAに関して、アンケートでは、規制によって既に予測されているものに加えて、VAを適用した結果として、NSAsが自国市場での会社に(定期的な)特定の追加分析を行うことを要求するかどうかを調査した。3つのNSAsのみが、要求された追加分析のコメントを提供した。
あるケースでは、NSAは、特定の条件下での資産の強制売却の影響も評価するために、VAの適用により重大な影響を受ける会社に要請する際に、適用されるアプローチの詳細な説明(VAが0のシナリオ)を提供した。2つのシナリオのいずれかが、SCR/MCR(最低資本要件)を遵守しない結果となる場合には、投資方針の影響、資産と負債の平均デュレーションの整合性と、EIOPAがVAを計算するために検討した代表ポートフォリオのデュレーションとの整合性を考慮することが求められる。会社は、結果を評価するための基準及び、適切な場合には、採用すべき措置を確立すべきである。会社はまた、代表ポートフォリオとの実質的な相違の可能性と、 「信用リスクを引き受けることなく」 VAを獲得する具体的な可能性を考慮することが推奨される。
NSAsの大部分は、VAの基礎となる前提から、要素が観察された限られた個々のケースに言及された行動の下に、リスク・プロファイルが著しく逸脱している会社を特定していない。ある国では、会社はORSAプロセスの一部としてその個別の会社に関連するリスクを分析するよう要求され、NSAは動的VAモデルの変更につながる逸脱に言及し、別のNSAは、措置無しのSCRが100%を超えているので、資本アドオンは要求されていないとコメントした。
これまでのところ、NSAsによる資本アドオンは検討されていない。
あるケースでは、NSAは、特定の条件下での資産の強制売却の影響も評価するために、VAの適用により重大な影響を受ける会社に要請する際に、適用されるアプローチの詳細な説明(VAが0のシナリオ)を提供した。2つのシナリオのいずれかが、SCR/MCR(最低資本要件)を遵守しない結果となる場合には、投資方針の影響、資産と負債の平均デュレーションの整合性と、EIOPAがVAを計算するために検討した代表ポートフォリオのデュレーションとの整合性を考慮することが求められる。会社は、結果を評価するための基準及び、適切な場合には、採用すべき措置を確立すべきである。会社はまた、代表ポートフォリオとの実質的な相違の可能性と、 「信用リスクを引き受けることなく」 VAを獲得する具体的な可能性を考慮することが推奨される。
NSAsの大部分は、VAの基礎となる前提から、要素が観察された限られた個々のケースに言及された行動の下に、リスク・プロファイルが著しく逸脱している会社を特定していない。ある国では、会社はORSAプロセスの一部としてその個別の会社に関連するリスクを分析するよう要求され、NSAは動的VAモデルの変更につながる逸脱に言及し、別のNSAは、措置無しのSCRが100%を超えているので、資本アドオンは要求されていないとコメントした。
これまでのところ、NSAsによる資本アドオンは検討されていない。
(2)MAの取扱
MAは、現在スペインと英国の2カ国のみに適用されている。
両国は、割り当てられた資産ポートフォリオが、会社の他の活動から生じる損失をカバーするために適用できないようにするためのガバナンス規則を設定している。ある国では、投資ブックでMAに割り当てられた資産を特定することが会社に求められている。
さらに、MAポートフォリオの資産負債管理方針に責任を負う人物を任命することが求められる。 MAポートフォリオの資産の全ての変更は、責任者(保険数理機能及びリスク管理機能者)によって承認され、取締役会に提出される報告書に文書化されなければならない。
他の国では、会社の申請には、MAポートフォリオからの資産の抽出のためのフレームワークを含めることが求められ、これを可能にするためのタイミング、理由及びガバナンスが含まれる。さらに、会社は、MA資産がMA以外の契約の担保として差し入れられないように保証する担保管理プロセスの詳細を含めることが求められている。
どちらの国でも、投資は資産毎に評価される。これらの資産は、債券資産でなければならず、負債通貨で指定されなければならない。これらの機能は、資産に固有のものでも、他の資産から取得することもできる(例えば、資産のキャッシュフローを固定キャッシュフローに変換する適切なデリバティブ)。両国において、会社は、各資産について、発行者又は第三者がキャッシュフローを変更することを認められているかどうかを決定することが期待されている。発行者による自由な裁量でキャッシュフローが変更される可能性がある場合は、再投資によってキャッシュフローを再現することができるように、十分な代償が支払われる必要がある。
1つの管轄区域で、ミスマッチを特定するための評価はキャッシュフローを参照し、毎月実行することが求められる。他の管轄区域では、会社はマッチングテストを採用し、採用されたマッチングテストの違反を監督者に報告することが義務付けられている。これには、テスト臨界値の違反を是正するための行動計画が伴わなければならない。
いずれのNSAsも、会社のリスク・プロファイルがMAの根底にある前提から大きく逸脱している事例を報告していない。
MAは、現在スペインと英国の2カ国のみに適用されている。
両国は、割り当てられた資産ポートフォリオが、会社の他の活動から生じる損失をカバーするために適用できないようにするためのガバナンス規則を設定している。ある国では、投資ブックでMAに割り当てられた資産を特定することが会社に求められている。
さらに、MAポートフォリオの資産負債管理方針に責任を負う人物を任命することが求められる。 MAポートフォリオの資産の全ての変更は、責任者(保険数理機能及びリスク管理機能者)によって承認され、取締役会に提出される報告書に文書化されなければならない。
他の国では、会社の申請には、MAポートフォリオからの資産の抽出のためのフレームワークを含めることが求められ、これを可能にするためのタイミング、理由及びガバナンスが含まれる。さらに、会社は、MA資産がMA以外の契約の担保として差し入れられないように保証する担保管理プロセスの詳細を含めることが求められている。
どちらの国でも、投資は資産毎に評価される。これらの資産は、債券資産でなければならず、負債通貨で指定されなければならない。これらの機能は、資産に固有のものでも、他の資産から取得することもできる(例えば、資産のキャッシュフローを固定キャッシュフローに変換する適切なデリバティブ)。両国において、会社は、各資産について、発行者又は第三者がキャッシュフローを変更することを認められているかどうかを決定することが期待されている。発行者による自由な裁量でキャッシュフローが変更される可能性がある場合は、再投資によってキャッシュフローを再現することができるように、十分な代償が支払われる必要がある。
1つの管轄区域で、ミスマッチを特定するための評価はキャッシュフローを参照し、毎月実行することが求められる。他の管轄区域では、会社はマッチングテストを採用し、採用されたマッチングテストの違反を監督者に報告することが義務付けられている。これには、テスト臨界値の違反を是正するための行動計画が伴わなければならない。
いずれのNSAsも、会社のリスク・プロファイルがMAの根底にある前提から大きく逸脱している事例を報告していない。
(3)TTPの取扱
(3-1 ) 控除額の再計算
TTPが適用される11カ国のうち4カ国の18の会社で、2018年に「技術的準備金に関する移行措置(TTP)」の控除の再計算が行われた。
再計算を適用するための基準は均一ではない。
・5つの市場では、再計算は会社の決定に基づいて行われる。しかしながら、いくつかのケースでは再計算はリスク・プロファイルが変化した場合にのみ行われ、1つの市場では、会社はTTPの再計算を四半期ごとに適用し、別のNSAsでは何らの具体的な規定はなかったというように、実務は異なっているように思われる。
・16の市場では、再計算はNSAsの要求から派生しているが、これらの場合も、実務は異なっている。殆どのNSAsは、要求は会社のリスク・プロファイルの大幅な変更の場合に発生し、少数のケースでは、それも会社決定によって派生することができる、と述べた。5つのNSAsは、自国の市場では強制再計算の期間も定義されており、この期間は5カ国では2年、他の国では4年である。
殆どのNSAsは、リスク・プロファイルの重大な変化のケースをどのように定義するかについて、正式なプロセスを定義していない。しかし、2つのNSAsは、ポートフォリオの移管やランオフへの移行の際にこの可能性を考慮していると述べており、他のNSAsは、四半期又は年間ベースで控除をモニターすることを約束することを求めている。どのような事象がリスク・プロファイルの変化を構成するかについて会社に指針を提供したNSAsは1つのみであった。6つのNSAsは、市場環境の著しい変化は、会社のリスク・プロファイルの最終的な変化の分析を要求するTTPを用いた会社へのアプローチに関連していると考えられると述べ、そのうちの1つは、どの程度の市場の動きがリスク・プロファイルの変化を誘発するかに関するガイドラインを設定した。
(3-1 ) 控除額の再計算
TTPが適用される11カ国のうち4カ国の18の会社で、2018年に「技術的準備金に関する移行措置(TTP)」の控除の再計算が行われた。
再計算を適用するための基準は均一ではない。
・5つの市場では、再計算は会社の決定に基づいて行われる。しかしながら、いくつかのケースでは再計算はリスク・プロファイルが変化した場合にのみ行われ、1つの市場では、会社はTTPの再計算を四半期ごとに適用し、別のNSAsでは何らの具体的な規定はなかったというように、実務は異なっているように思われる。
・16の市場では、再計算はNSAsの要求から派生しているが、これらの場合も、実務は異なっている。殆どのNSAsは、要求は会社のリスク・プロファイルの大幅な変更の場合に発生し、少数のケースでは、それも会社決定によって派生することができる、と述べた。5つのNSAsは、自国の市場では強制再計算の期間も定義されており、この期間は5カ国では2年、他の国では4年である。
殆どのNSAsは、リスク・プロファイルの重大な変化のケースをどのように定義するかについて、正式なプロセスを定義していない。しかし、2つのNSAsは、ポートフォリオの移管やランオフへの移行の際にこの可能性を考慮していると述べており、他のNSAsは、四半期又は年間ベースで控除をモニターすることを約束することを求めている。どのような事象がリスク・プロファイルの変化を構成するかについて会社に指針を提供したNSAsは1つのみであった。6つのNSAsは、市場環境の著しい変化は、会社のリスク・プロファイルの最終的な変化の分析を要求するTTPを用いた会社へのアプローチに関連していると考えられると述べ、そのうちの1つは、どの程度の市場の動きがリスク・プロファイルの変化を誘発するかに関するガイドラインを設定した。
(3-2 ) NSAsによって承認された最大額よりも低い金額での技術的準備金への段階的控除額の適用の可能性
以下の異なる監督実務が観察された。ここでも、回答は複雑な様相を呈している。
・16のNSAsは、管轄区域内の会社は常に最大額を適用しなければならないと指摘した。
・9つのNSAsはより低い金額の適用を認めているが、実際に削減が適用されたのは1カ国の4つの会社のみである。2カ国では、削減はNSAsの承認が必要となる。一般的には、削減の具体的な限度は設定されていないが、削減の中止は発生していない。あるNSAは、会社が後の段階で削減を取り消すことは許されないと明示的に述べ、別のNSAは、削減が控除の100%までであれば、TTPの適用の許可は取り消されると明記した。
· 13のNSAsは、会社が早期に措置を終了することを可能にし、実際に1つの事例が発生した。殆どの場合、NSAsは、取消しの理由と、当該措置がとられていない場合の会社のソルベンシーの状況について報告を求めている。
以下の異なる監督実務が観察された。ここでも、回答は複雑な様相を呈している。
・16のNSAsは、管轄区域内の会社は常に最大額を適用しなければならないと指摘した。
・9つのNSAsはより低い金額の適用を認めているが、実際に削減が適用されたのは1カ国の4つの会社のみである。2カ国では、削減はNSAsの承認が必要となる。一般的には、削減の具体的な限度は設定されていないが、削減の中止は発生していない。あるNSAは、会社が後の段階で削減を取り消すことは許されないと明示的に述べ、別のNSAは、削減が控除の100%までであれば、TTPの適用の許可は取り消されると明記した。
· 13のNSAsは、会社が早期に措置を終了することを可能にし、実際に1つの事例が発生した。殆どの場合、NSAsは、取消しの理由と、当該措置がとられていない場合の会社のソルベンシーの状況について報告を求めている。
(2020年02月19日「保険・年金フォーカス」)
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