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- 豪州経済の重石となる気候変動問題~注目されるエネルギー政策の行方~
1――オーストラリアを巡る気候変動問題
1 オーストラリア気象局によると、2019年の平均気温は過去平均より約1.5度高く、降水量は史上最低水準であった。
2 19年12月の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)では、米国、ブラジル、日本などとともに、「化石賞(気候変動対策に積極的でない国に対して授与される賞)」を受賞した。
3 石炭は、用途によって、製鉄の原料として使用される原料炭と、発電用燃料として使用される一般炭に分類される。
4 オーストラリアは、石炭の生産量が世界第4位で、原料炭の多くは国内で消費せず、輸出している。輸出量世界第1位はインドネシア。
2――オーストラリアのエネルギー政策
また、CO2排出量が削減できなかった背景として、連邦政策のエネルギー政策を巡る政争がある。現与党の保守連合が産業重視、野党の労働党が環境重視と、エネルギー政策へのスタンスが対極的であるため、政権が変わる度に政策が見直され、継続性を欠いてきた(図表3)。例えば、労働党のラッド政権は、保守連合のハワード政権が拒否した京都議定書を批准した一方で、保守連合のアボット政権は、労働党のギラード政権が導入した炭素税を廃止した。他にも保守連合政権でありながら、気候変動対策に熱心であったターンブル政権は、電力供給の信頼性確保を目的に、国家エネルギー保証制度5の導入を目指したが、党内の反対で骨抜きとなった。そして、ターンブル氏の後任となった現モリソン首相は気候変動に懐疑的で、連邦政府のエネルギー政策は停滞している。
さらに、2019年5月の総選挙では、保守連合の2回の首相交代による支持率低下で、労働党が優勢と予想されたが、大胆な再生可能エネルギー目標8を公約として掲げた労働党は、石炭産業の盛んなクイーンズランド州で惨敗を喫し、選挙に敗北した。その結果、選挙後に就任したアルバニージ労働党党首は石炭の輸出に対する姿勢を軟化させている。
5 オーストラリアでは、1990年代から電力の小売自由化が開始され、すべての発電事業者と小売業者が全国電力市場を通じて卸電力を取引している。当制度は、後述する電力料金の高騰や大規模停電の発生を背景に、小売業者に対して電力供給の信頼性と安定性の確保、さらにCO2排出量の削減の双方を義務付ける制度。
6 現時点では、ニューサウスウェールズ州、南オーストラリア州、タスマニア州が保守連合政権であるのに対して、ビクトリア州、クイーンズランド州、西オーストラリア州が労働党政権となっている。
7 豪州シンクタンクのローウィー研究所が2019年に実施した調査によると、今後10年間の国家の脅威として、気候変動が1位となった。また、回答者の61%が「大きなコストを伴ってでも、すぐに地球温暖化対策を取るべき」と回答している。
8 CO2排出量を2030年までに2005年比で45%削減するという目標を掲げた(現行は26%~28%)。
3――大規模森林火災によるオーストラリア経済への影響
9 1991年7-9月期から19年7-9月期にかけて、113四半期連続でリセッション(2四半期以上連続のマイナス成長)を回避しての景気拡大となった。
10 災害時における連邦政府の法的権限の強化や森林火災の原因や対策を調査する委員会の設置を打ち出した。
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神戸 雄堂
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(2020年02月12日「基礎研レター」)
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