- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- REIT(リート) >
- J-REITのパフォーマンス要因分析~J-REIT市場の上昇・下落要因を調べる~
2019年10月03日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
図表16は日本と海外REIT(米国、香港、豪州)の分配金利回りと10年国債利回りのスプレッド(以下、イールドスプレッド)の推移を示している。これによると、現在、日本のイールドスプレッドは+3.9%と海外(米国 +2.1%、香港 +1.7%、豪州 +3.1%)と比較して相対的に高い水準にある。
これまでのイールドスプレッドの推移をみても、J-REITは高い水準で推移しており、これは日本の10年国債利回りの低下が大きく影響している(図表17)。
米国などでは、2016年から10年国債利回りが上昇に転じ、イールドスプレッドは縮小傾向にあった。このため、外国人投資家は相対的に高いイールドスプレッドを確保できるJ-REITに注目し、J-REITを積極的に買い越してきた可能性が考えられよう。
しかし、足もとでは海外の10年国債利回りは低下し、イールドスプレッドスプレッドも拡大の傾向にある。J-REITとのイールドスプレッド格差も縮小しており、外国人投資家は売り越しに転じている。
これまでのイールドスプレッドの推移をみても、J-REITは高い水準で推移しており、これは日本の10年国債利回りの低下が大きく影響している(図表17)。
米国などでは、2016年から10年国債利回りが上昇に転じ、イールドスプレッドは縮小傾向にあった。このため、外国人投資家は相対的に高いイールドスプレッドを確保できるJ-REITに注目し、J-REITを積極的に買い越してきた可能性が考えられよう。
しかし、足もとでは海外の10年国債利回りは低下し、イールドスプレッドスプレッドも拡大の傾向にある。J-REITとのイールドスプレッド格差も縮小しており、外国人投資家は売り越しに転じている。
2 外国人売買動向の代理変数として、東京証券取引所が発表する主体別売買動向の海外投資家の売買金額(ネット)を用いた。
4――まとめ
本稿では、東証REIT指数のパフォーマンスを要因分解した。東証REIT指数のリターンの要因を推計した結果、事前の想定通り、株式市場、債券市場、不動産市場要因が東証REIT指数のリターンに影響を与えていた。
但し、J-REIT黎明期(2003年4月~2007年5月)は賃料の上昇が影響していたものの、銘柄数も少なく株式市場、債券市場要因について統計的に有意な結果は出なかった。
金融危機・下落期(2007年6月~2012年11月)はJ-REIT市場は株式市場の下落とともに下落した。アベノミクス上昇期(2012年12月~2019年6月)は、10年国債利回りの低下により、J-REIT市場は株式市場とともに上昇した。
2016年2月のマイナス金利導入後も、株式市場、債券市場、不動産市場要因は東証REIT指数のリターンにプラス寄与していた。しかしながら、マイナス金利導入前と比較して、これらの要因の説明力は低下した。この期間の東証REIT指数の上昇には、外国人投資家によるJ-REIT買い越しが大きく影響していた。その背景としては、J-REITと10年国債利回りのスプレッドが海外よりも大きかったことが考えられる。
しかしながら、足元では海外の10年国債利回りの低下により、日本と海外のイールドスプレッドの差は縮小している。また、外国人投資家はJ-REITを売り越しに転じている。株式市場、債券市場、不動産市場に加え、外国人投資家の動向や各国の金融政策に注目したい。
但し、J-REIT黎明期(2003年4月~2007年5月)は賃料の上昇が影響していたものの、銘柄数も少なく株式市場、債券市場要因について統計的に有意な結果は出なかった。
金融危機・下落期(2007年6月~2012年11月)はJ-REIT市場は株式市場の下落とともに下落した。アベノミクス上昇期(2012年12月~2019年6月)は、10年国債利回りの低下により、J-REIT市場は株式市場とともに上昇した。
2016年2月のマイナス金利導入後も、株式市場、債券市場、不動産市場要因は東証REIT指数のリターンにプラス寄与していた。しかしながら、マイナス金利導入前と比較して、これらの要因の説明力は低下した。この期間の東証REIT指数の上昇には、外国人投資家によるJ-REIT買い越しが大きく影響していた。その背景としては、J-REITと10年国債利回りのスプレッドが海外よりも大きかったことが考えられる。
しかしながら、足元では海外の10年国債利回りの低下により、日本と海外のイールドスプレッドの差は縮小している。また、外国人投資家はJ-REITを売り越しに転じている。株式市場、債券市場、不動産市場に加え、外国人投資家の動向や各国の金融政策に注目したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年10月03日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1860
経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
原田 哲志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/08 | グローバル株式市場動向(2025年3月)-トランプ米大統領の関税政策によるアップダウンが続く | 原田 哲志 | 基礎研レター |
2025/03/10 | グローバル株式市場動向(2025年2月)-国・地域によりまちまちな展開 | 原田 哲志 | 基礎研レター |
2025/02/14 | グローバル株式市場動向(2025年1月)-DeepSeekショックにより半導体関連銘柄は下落 | 原田 哲志 | 基礎研レター |
2025/01/23 | グローバル株式市場動向(2024年12月)-米国金利上昇や欧州の政治的混乱により下落 | 原田 哲志 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【J-REITのパフォーマンス要因分析~J-REIT市場の上昇・下落要因を調べる~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
J-REITのパフォーマンス要因分析~J-REIT市場の上昇・下落要因を調べる~のレポート Topへ