- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融市場・外国為替(通貨・相場) >
- 金融緩和競争は激化へ、日銀の緩和負け感が円高圧力に~マーケット・カルテ9月号
2019年08月21日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大

当面、米中摩擦の大幅な緩和が見込めないばかりか、対中関税の一部発動などさらなる激化が予想される。FRBは7月に続いて9月にも利下げを実施し、さらなる利下げも排除しないだろう。日銀もフォワードガイダンスの延長や長期金利変動許容幅の拡大などで対抗すると見込まれるが、力不足感は否めない。日銀の緩和負け感や世界的な景気後退懸念から、ドル円は秋に一時105円を割り込む可能性が高い。
ただし、FRBが「予防的な利下げ」に留まる姿勢を維持するならば、市場でも大方織り込み済みであるため、大幅な円高進行は避けられるはずだ。ドル円のメインシナリオとしては、米経済が底堅さを維持することでFRBが同姿勢を維持するとともに、景気後退懸念の緩和が円高圧力の減退に繋がる形で、3カ月後には現状程度に戻ると見ている。ただし、米経済が明らかに減速し、FRBの長期・段階的な利下げ観測が強まる場合には、1ドル100円割れも有り得る。
ユーロ円は、今月、ドイツ経済の減速やECBの緩和観測などから下落し、足元では118円台前半にある。ECBは今後FRBに追随する形で金融緩和に踏み切ると予想される。加えて、イタリアの政情不安や英国の合意無き離脱懸念もユーロの重荷になるだろう。ただし、ECBの緩和は市場で織り込みが進んでいるうえ、FRBほどの緩和余地はない。従って、ドル円同様、3カ月後には現状水準に戻ると見ているが、米経済の失速や英国の合意無き離脱が現実化する場合には115円割れも。
長期金利は、今月、欧米金利急低下の影響を受けて低下し、足元は▲0.24%台にある。欧米が金融緩和に向うことから今後も低迷が予想されるものの、既に織り込みが進んでいるため、追加的な低下圧力は限られる。また、今後日銀が長期金利変動許容幅を拡大する可能性があるが、現状の追認に過ぎない。従って、3カ月後も現状並みと予想している。
(執筆時点:2019/8/21)
(2019年08月21日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/21 | 資金循環統計(24年10-12月期)~個人金融資産は2230兆円と前年比86兆円増加も実質では前年割れ、定期預金が純流入に | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
2025/03/21 | 円相場に漂う不気味な気配~マーケット・カルテ4月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
2025/03/19 | 日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/07 | 長期金利の上昇は続くのか?~16年ぶり1.5%到達後の金利見通し | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年03月25日
今週のレポート・コラムまとめ【3/18-3/24発行分】 -
2025年03月24日
なぜ「ひとり焼肉」と言うのに、「ひとりコンビニ」とは言わないのだろうか-「おひとりさま」消費に関する一考察 -
2025年03月24日
若い世代が求めている「出会い方」とは?-20代人口集中が強まる東京都の若者の声を知る -
2025年03月24日
中国:25年1~3月期の成長率予測-前期から減速。目標達成に向け、政策効果でまずまずの出だしに -
2025年03月24日
パワーカップル世帯の動向-2024年で45万世帯に増加、うち7割は子のいるパワーファミリー
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【金融緩和競争は激化へ、日銀の緩和負け感が円高圧力に~マーケット・カルテ9月号】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
金融緩和競争は激化へ、日銀の緩和負け感が円高圧力に~マーケット・カルテ9月号のレポート Topへ