2019年08月20日

どうする?2035年、年金積立金枯渇の衝撃(中国)【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(38)

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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■要旨
  • 6月に日本を騒然とさせた「老後2000万円」問題。国は違うが、中国においても老後の生活資金や年金問題は国民の大きな関心事である。会社員の公的年金について、「このままだと2035年に年金積立金を使い果たしてしまう」と政府系シンクタンクが推計を発表すると、30代を中心に将来年金がもらなくなるのではとの憶測が広がる事態となった

  • 中国政府は、景気下支え策の一環として、2019年5月以降、企業の年金保険料の負担割合をそれまでの19%から16%まで引き下げてもよいとした。急速な少子高齢化、経済成長の鈍化の中で、保険料収入の減少が続けば収支はすぐ苦しくなる。これまで解決すべき問題を放置したツケが将来推計に示された形だ。

  • とは言え、まず、保険料算出基準を見直し、企業が負担可能な割合まで一端引き下げることで、保険料を正しく確実に徴収する体制を整える。中央・地方政府からの財政投入を増やす(縦の対策)、各地域間の財源移転を増やす(横の対策)、年金積立金そのものの運用収益を強化する。遅ればせながら、このような対策が本格的に動き始めている。

■目次

1-景気下支えのための年金保険料率の軽減。
 ただし、現行のままでは16年後には年金積立金を使い果たしてしまう可能性も。
2-定年退職者が多い地域により多くの財源を。
 2018年・2019年で7地域から22地域の基本年金基金に1831億元を移転。
3-年金積立金の運用収益の強化―高まる全国社会保障基金のプレゼンス
4-年金保険料の軽減としつつ、保険料をきちんと徴収するための楔を打つ。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

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