2019年08月19日

【タイGDP】4-6月期は前年同期比+2.3%増~輸出低迷が内需に波及して2014年以来の低成長を記録

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2019年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比2.3%増1と、前期の同2.8%増から低下し、Bloomberg調査の市場予想(同2.3%増)と一致した(図表1)。
実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の減速と輸出の低迷が成長率低下に繋がった。

民間消費は前年同期比4.4%増と、前期の同4.9%増から低下した。財別に見ると、2017年の酒税・たばこ税増税の影響が和らぐ非耐久財(4.7%増)が回復したほか、半耐久財(3.0%増)が持ち直した一方、自動車販売の好調が終息しつつある耐久財(5.5%増)とサービス(4.4%増)が減速した。

政府消費は同1.1%増と、前期の同3.4%増から低下した。

投資は同2.0%増と、前期の同3.2%増から低下した。投資の内訳を見ると、まず民間投資は同2.2%増(前期:同4.4%増)となり、民間設備投資(同2.5%増)と民間建設投資(同0.9%増)がそれぞれ鈍化した。一方で公共投資は同1.4%増(前期:同0.1%減)と3期ぶりのプラスとなった。公共設備投資(同8.5%減)が低迷したものの、公共建設投資(同5.8%増)が2期連続で持ち直した。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲2.9%ポイントと、前期の▲4.6%ポイントからマイナス幅が縮小した。まず財・サービス輸出は同6.1%減(前期:同6.1%減)と低迷した。うち財貨輸出が同5.8%減(前期:同5.9%減)、サービス輸出が同7.0%減(前期:同7.2%減)となり、それぞれ前期から横ばいとなった。また財・サービス輸入も同2.7%減(前期:同0.1%減)とマイナス幅が拡大した。うちサービス輸入が同0.1%増(前期:同10.6%増)と大きく鈍化したほか、財貨輸入が同3.4%減(前期:同2.6%増)とマイナスに転じた。
(図表1)タイの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)タイ実質GDP成長率(供給側)

供給項目別に見ると、農業とサービス業の悪化が成長率低下に繋がった(図表2)。

農林水産業は前年同期比1.6%減(前期:同1.8%増)と低下し、1年半ぶりのマイナスとなった。米やサトウキビ、パインアップルなどの主要農作物の収穫が干ばつの影響により低調だったほか、水産業の減少が響いた。

鉱工業は同1.2%増(前期:同1.0%増)と小幅に上昇した。まず主力の製造業は同0.1%減(前期:同0.7%増)と、内外需の悪化を受けて約5年ぶりのマイナスとなった。製造業の内訳を見ると、自動車やコンピューター・部品などの資本・技術関連産業(同1.3%減)と石油化学製品、ゴム・プラスチック製品などの素材関連(同0.4%減)がそれぞれ低迷したほか、食料・飲料や繊維、家具などの軽工業(同1.0%増)が鈍化した。一方、鉱業は同6.9%増(前期:同0.8%減)と急上昇し、電気・ガス業は同7.3%増(前期:同5.6%増)と堅調に拡大した。

全体の6割弱を占めるサービス業は同3.5%増(前期:同4.0%増)と低下した。内訳を見ると、前期から伸び率の低下した業種が多かった。情報・通信業が同9.3%増(前期:同6.5%増)、教育が同1.6%増(前期:同1.1%増)、建設業は同2.4%増(前期:同4.0%増)と上昇した一方、小売・卸売業が同5.9%増(前期:同6.9%増)、ホテル・レストラン業が同3.7%増(前期:同4.7%増)、不動産業が同3.1%増(前期:同4.8%増)、金融・保険業が同1.6%増(前期:同2.2%増)となり、それぞれ低下した。
 
1 8月19日、タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は2019年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。

4-6月期GDPの評価と先行きのポイント

タイ経済は昨年後半から輸出が減速するなかでも内需を中心に+3%台の成長が続いたが、今年に入ると輸出が大幅に落ち込むなかで成長率は3%を下回り、4-6月期は2014年以来の低水準を記録した。4-6月期の景気減速は輸出低迷に加え、これまで成長を支えた民間部門が2期連続で減速した影響が大きい。

財貨輸出は4-6月期が前年比▲5.8%まで落ち込み、2期連続のマイナスとなった。経済が堅調なベトナムや米国向けにはエアコンの輸出が拡大しているものの、世界経済の減速や米中貿易戦争を背景に中国向けの電子製品をはじめとする中間財の輸出が落ち込んだほか、バーツ高に伴い価格競争力が低下したコメの輸出低迷や国際価格の下支えを目的に実施した天然ゴムの輸出削減の影響が重なった。最近では米中貿易戦争が一段と悪化するなど世界貿易を巡る環境に改善の兆しはみられない。

またサービス輸出は政府による到着ビザ無料化の観光刺激策により昨年10-12月期に持ち直しの動きがみられたが、年明けには中国経済の減速を受けて再び落ち込んだ。4-6月期の訪タイ外客数は前年比1.1%増と、昨年7-9月期に発生したタイ南部プーケットにおけるボート転覆事故や通貨上昇の影響を引きずり、景気の牽引力は失われている(図表3)。

内需は、これまで景気の下支え役として機能していた民間消費と民間投資がそれぞれ2期連続で鈍化した。民間消費は雇用・所得環境の安定や低インフレ・低金利環境の継続、福祉カードのような政府の低所得者支援策が追い風となって+4%台半ばの高めの伸びを維持しているが、買い替え需要がピークアウトした自動車の販売台数は足元で減少に転じており(図表4)、以前ほど消費の力強さは見られなくなっている。また民間投資は好調な自動車販売や低金利環境などを背景に堅調に推移していたが、輸出低迷と自動車販売の減少、そして4月に導入した住宅ローン規制により成長ペースが半減した。一方、公共投資は政府主導の交通インフラ整備や農村部の公共事業が拡大するなど建設投資を中心に3期ぶりのプラスに転じたが、新規に開始した大型インフラプロジェクトは乏しく、公営企業の投資は低調なままとなっている。
(図表3)タイの外国人観光客数/(図表3)タイの自動車販売台数
先行きのタイ経済は輸出関連企業の業績悪化が投資マインドや家計の所得環境に悪影響を及ぼすため、景気を支える民間部門の更なる減速が懸念される。既に製造業生産の落ち込みを受けて製造業の雇用者数が5月から減少傾向に転じているほか、総選挙後の新政権発足の遅れによって来年度予算の予算執行が年度開始の今年10月から来年1月に遅れる見通しであるなど、国内経済の先行きには不透明感が残る。

政府は2019年通年の成長率予測を+2.7~3.2%とし、年前半の+2.6%を上回る成長を見通しており、先週16日には今年の+3%の経済成長を達成すべく、総額3,160億バーツ(約1兆1,000億円)の景気刺激策を決定した。低所得者や農家、中小企業向けの支援策に加え、観光業振興策を実施し、今月から予算執行が始める計画となっている。4月に実施した消費刺激策(総額218億バーツ)に続く景気対策となる。他方、タイ中銀は8月7日の金融政策決定会合で政策金利の引き下げを決定している。輸出の減速によって内需に悪影響が波及し始めているとして、国内経済を刺激することを目的に4年ぶりの金融緩和を実施した。バーツ高が続いていることも一因となったとみられる。経済の3%成長達成に向けては、こうした政府の財政政策と中銀の金融政策にどれだけ景気下支え効果があるかが鍵となりそうだ。こうした政策効果が力不足とみられれば、年内の追加利下げも予想される。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2019年08月19日「経済・金融フラッシュ」)

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